コラム 日本大学を学ぶ

教育年限の改訂と徴兵制度

 国民皆兵を目的とした徴兵制度は、明治6年1月10日の「徴兵令」が始まりで、これにより満20歳の健康な国民は、3年間の兵役義務を負うことになった。ただし、検査の合格者全員が兵役に就くわけではなく、常備兵として必要な数を確保できれば良いのであって、明治〜大正の平時にあっては、現役兵として徴兵されるのは、合格者の2割程度であった。
 また明治前期には、官吏や戸主・嫡子といった各種の免役条件があったが、時代が下るに従って、そうした特権は廃止された。ただし、官公立学校の学生生徒には、在学中は猶予(学籍がある期間は受検を延期)の権利があり、文部大臣の認定を受ければ、私立学校にも適用された。
 「徴兵令」は昭和2年4月1日に廃止され、代わって、徴兵期間を2年(海軍は4年から3年)に短縮する等、大幅な改正がなされた「兵役法」が公布された。
中高等教育機関在学生の徴集延期は、在学生なら無条件な訳ではなく、この時には、

27歳 大学学部・高等師範学校専攻科・修業年限5年以上の専門学校
25歳 師範学校・高等学校・大学予科・専門学校・高等師範学校・教員養成所
22歳 中学校・高等学校尋常科・実業学校

と規定され、上記の教育機関卒業者で、軍事教練の検定合格者は、陸軍幹部候補生を志願できた。
昭和12年7月に「日中戦争」が開始されると、少尉・中尉級の初級士官の不足を補うため、予備役将校を増員する必要性が高まった。14年3月9日の改正では、「在学徴集延期」期間を短縮し、大学生等26歳・高校生等23歳・中学生等21歳に引き下げ、幹部候補生志願者の低年齢下を図った。
 昭和16年10月16日に公布された「大学学部等ノ在学年限又ハ修業年限ノ臨時短縮ニ関スル件」(勅令924号)により、大学学
部・予科、高等学校、専門学校等の修業年限が6ヵ月以内短縮できることになり、同日公布の文部省令79号により、各高等教育機関では3ヵ月修業年限を短縮し、同年12月に卒業式が行われた。
昭和17年度・18年度には6ヵ月短縮され、卒業式は9月となった。18年10月2日の「在学徴集延期臨時特例」(勅令第755号)により、文系(一部理系も含む)の学徒は、徴兵猶予が停止され、適齢者は、徴兵検査を受けることになった。
 また、昭和17年2月18日の「兵役法」改正(法律16号)には、徴兵適齢の変更も盛り込まれており、19年度から19歳に引き下げられた。



日本大学通信教育部