自分を信じて、思い切って泳いでほしい。
それがベストパフォーマンスにつながる。

岩崎恭子氏(2001年文理学部心理学科卒)
1992年バルセロナオリンピック 平泳ぎ200m金メダリスト

卒業生
2021年07月12日

いよいよ、7月23日に東京オリンピックが開会式を迎える。本学水泳部学生からは6人、卒業生からは2人の選手が夢の舞台に立つこととなった。開会にあたり、本学卒業生であるオリンピックメダリストから自身の経験を通して学んだこと、そして東京オリンピックで注目したい点などを教えてもらった。
今回は、バルセロナオリンピックの女子200m平泳ぎで金メダルを獲得した岩崎恭子氏だ。

東京オリンピックの競泳では、世界とのメダル争いに期待

今は多方面で活躍する岩崎氏

今は多方面で活躍する岩崎氏は競泳に注目してほしいと話す

岩崎恭子氏は、14歳で出場した1992年のバルセロナオリンピック女子200m平泳ぎで金メダリストに輝いた。1996年のアトランタオリンピックにも出場し、その後引退。本学文理学部では、以前から学びたかった心理学を専攻し、卒業後はスポーツキャスターなど多方面で活躍している。

選手として、また取材する側としてもオリンピックに関わった岩崎氏は、東京オリンピックの競泳に注目していると話す。
「昔と違って、金メダルを狙える選手たちがたくさんいる、というのはとてもうれしいですよね。ほかの選手たちも、世界一を狙えるチームにいる、という誇りを持って臨んでもらいたいな、と思っています」

岩崎氏が出場した1992年のバルセロナオリンピック、1996年のアトランタオリンピックが開催された時代は、日本はまだまだ世界から水を開けられてしまっていた。選手たちの主な目標は『決勝進出』。世界と肩を並べ、メダル争いをするという気持ちを持つには、その差が大きすぎた。

だが、2000年のシドニーオリンピックで四つのメダルを獲得したことで日本も大きく前進。一気に世界との差を詰めていき、今では日本人選手同士で世界一を争うまでになった。

東京オリンピックでは池江璃花子選手(スポーツ科学部3年)の泳ぎもそうだが、本学水泳部女子キャプテンを務める長谷川涼香選手(同4年)に注目する。中学生のときから長谷川選手を見てきたという岩崎氏は、「メダルを狙える実力を持っている選手。ぜひ自己ベストを更新して、世界だけじゃなく、日本もあっと驚かせてほしい」と期待を寄せる。

多くの人の世界を広げてくれる、
それが地元開催のオリンピック

岩崎氏は「地元で聖火をつなげたいという気持ちがあったので、とてもうれしかった」と6月24日に地元の静岡県沼津市で聖火ランナーを務めた。

そこで目にしたのは、子どもたちがオリンピックの歴史と接する姿だ。興味を持って、楽しそうにオリンピックの話を聞く子どもたち。オリンピックの意味や意義、なぜ平和の祭典と言われているのか。歴史を学び、継承されていくことはとても大切なことで、日本での開催は、スポーツに関わる以外の人たちにもオリンピックを通してスポーツに接することから多くの学びを提供できるのだ。

「東京開催が決まった2013年から、多くの方々がオリンピックに接することがあったと思います。なかには今まで取り上げられなかった問題も、地元開催のオリンピックだからこそ、スポーツで起こっていることを自分事として捉え、考えるきっかけになったんじゃないかと思っています。

ただ、そのすべてを解決する必要はないと思います。正解を見つけるのではなく、オリンピックを契機にして、みんなで一緒に考え、取り組んで行く。自分たちが良い方向に変わっていける良いチャンスなんだ、というふうに捉えていってほしいと思います」

岩崎氏の友人に、オリンピックを見てアナウンサーになりたい、という夢を持ち、それを叶えた人もいるという。視野を広げてみると、オリンピックというものは、新たな経験や目標が見つかる可能性を秘めている。アスリートだけではなく、見る人の世界も広げてくれるもの。それがオリンピックなのだ。

自分に自信を持って、
気持ちを吹っ切って臨んでほしい

1992年バルセロナオリンピックの金メダル

1992年バルセロナオリンピックの金メダル

中学2年生で金メダルを獲得し、一気に世間の注目を集めた岩崎氏。良いこともあったが、辛い思いも、イヤな思いもたくさん経験した。自分の気持ちを整理する方法が見つけられずイライラすることもあった。そんな経験が岩崎氏を文理学部心理学科に向かわせた。心理学を学ぶことで自分の心と向き合い、考えを整えることができた。

「やはり私自身悩むことが多かったんですが、心理学を学ぶことで世界が一気に広がりました。私にとって大学4年間というのは、自分と向き合い、気持ちの整理をつけるうえでとても大切な時間でした」

自身の経験を多くの人に伝え、同じように、悩んでいる人たちの助けになりたい。それも岩崎氏がこれから取り組んでいきたいことの一つだ。

そして、選手たちにも岩崎氏からアドバイス。

「選手たちは、やるべきことをやり尽くしてきたと思います。それでも、オリンピックという大きな舞台を前にすると不安が広がってしまうこともある。そんなときは、自分に『大丈夫、自分はやれる!』と言い聞かせることも大事。私自身、アトランタオリンピックのとき、いくら練習をしても不安しかありませんでした。そして、私はそのままレースを泳いでしまったんです。『気持ちを割り切って、ここまできたら泳ぐだけ!』と泳げていたら……と今でも思うこともあります。私がそういう経験をしたからこそ、選手たちには同じ経験をしてほしくない。もうここまできたら自分を信じて、思い切って泳ぎ切ってほしい。それがベストパフォーマンスにつながると思います。選手たちには、自信を持ってスタート台にたってほしい。そう願います」

<プロフィール>
岩崎恭子(いわさき・きょうこ)

1978年7月21日生まれ。静岡県沼津市出身。2001年文理学部心理学科卒。
中学2年生でバルセロナオリンピックに出場し、女子200m平泳ぎで当時のオリンピック記録を塗り替えるタイムで、競泳史上最年少で金メダルに輝いた。過剰な注目にも苦悩しつつ自分と向き合い、その後アトランタオリンピックにも出場を果たす。
引退後は水泳レッスンや、本学で学んだ心理学を生かし、自分と同じ悩みを持つ選手や、スポーツ選手を子どもに持つ親への教育、アドバイスなどを行っている。