大どんでん返しを期待してください

棒高跳 江島雅紀 選手(2021年スポーツ科学部競技スポーツ学科卒)

卒業生
2021年07月21日

日本陸上競技選手権大会の男子棒高跳を2位で終えた本学卒業生の江島雅紀選手は、7月2日に発表された第2次内定でオリンピック出場を決めた。今年3月には踏み切り足に肉離れを起こしてしまうなど、不運に見舞われたが、最後の最後に五輪切符を手にした。そんな江島選手に彼を支えた人々への思い、オリンピックを直前に控えた現在の心境などを語ってもらった。

ファイナルに進出し、世界を驚かせたいと語る江島選手

ファイナルに進出し、世界を驚かせたいと語る江島選手

―代表内定おめでとうございます。まずは決定したときのお気持ちを聞かせてください。

参加標準記録の5m80を突破できなかったので、日本選手権終了から少し経った7月2日の2次内定で決まりました。世界陸連のワールドランキングでは32位までがオリンピックに選ばれるのですが、僕は現在32位なので、ギリギリで代表権を獲得できました。内定をもらうまでは緊張から眠れない夜を過ごしていましたが、今はいい精神状態でやる気がみなぎっています。32位からの大どんでん返しを期待してください。

―周囲の方々の反応はいかがでしたか?

幼馴染、中学時代の先生など、本当に多くの方が喜んでくれました。2年前に世界陸上に出場しましたが、そのときとは周囲のリアクションも違っていて、オリンピックというのは本当にすごい大会なのだと実感しました。

―ご両親はいかがでしたか?

両親含め、家族全員、本当に喜んでくれました。僕には特別な才能はないと思っていますし、ごく普通な家庭で育ったのですが、家族の支えがあったからオリンピックに出場できるのだと考えています。

―江島選手のコーチでもある澤野大地さん(スポーツ科学部専任講師)とは、共に日本選手権に出場されました。

澤野さんはご自身の試技を終えると、僕のコーチとして支えてくれました。澤野さんが近くにいてくれたから今回の日本選手権で2年ぶりに5m60を跳ぶことができました。澤野さんからいただいた「おめでとう」という言葉は本当にうれしかったですね。

―コロナの影響でオリンピックが延期になりましたが、江島選手にとってどんな1年でしたか?

僕は試合を重ねることで記録を伸ばすことができるので、単純にオリンピックまでの試合数が増えたことが個人的にはラッキーでした。冬季練習もできるので、さらに体を強化できるとも思いました。ただ今年の3月に踏み切り足に肉離れを起こしてしまったので、そのときは気持ちが途切れてしまいましたね。

―オリンピックを諦めそうになったということでしょうか?

オリンピックというより東京大会は厳しいかなと感じました。報道などで東京大会の中止論が叫ばれていましたし、本当に中止になってもいいかなと思ってしまいました。さらに社会人生活とともに慣れない1人暮らしも始まって、いろいろなことが重なって気分が落ち込んでしまいました。

―そんな精神状態から東京への気持ちをつなぐことができたのはなぜでしょう?

やっぱり家族ですね。さまざまな場面で声を掛けてくれて、もう1度頑張ろうという気持ちに、少しずつ変化していきました。あとは友人や恩師の存在も重要でした。オリンピックが東京で開催されることが決まった日からずっと目標にしていましたし、周囲の人には出場すると約束をしていたので、それを果たすことができてうれしかったですね。

―1人暮らしを始めたとのことですが、富士通での社会人生活はいかがですか?

大学時代よりも陸上競技に集中できる環境があります。体づくりのための自炊はいい意味で気分転換になりますし、生活が変わったことで競技への取り組み方にもいい影響がありますね。

―それは食事面での好影響ということでしょうか?

はい、食事はバランスを考えて、しっかりと体重を維持できる物を食べています。あとはコンディショニングですね。体のケアを家でもやるようになりました。

―少し前の話になりますが、昨年からYouTubeチャンネル「まさきの日常」も配信されていますね?

はい。陸上のことや大好きな趣味について配信しています。これもコロナ禍での新しい挑戦の一つで、棒高跳を多くの方に知ってもらう取り組みです。

―趣味というのはディズニーのことですね?

はい。ただオリンピック出場に向けて今年はまだ一度もディズニーランドへ行っていないんです。僕が1カ月以上行かないことは初めてですが、それほどオリンピックに集中しているということですし、今はまだ封印し、終わったら全力で弾けたいと考えています(笑)。

―また楽しい動画も配信してください。では改めて東京オリンピックをどんな大会にしたいとお考えですか?

記録としては5m83、順位は7位以上を目標にしています。どちらも澤野さんが持つ日本記録なので、自国開催で更新できれば多くの方に注目してもらえて、棒高跳を広く知っていただけるきっかけになると考えています。

―最後に何か言い残したことはありますか?

もしこの記事を若い選手が読んでいたら、多くの指導者からいろいろな意見を聞いてもらいたいですね。自己流にならず、いろいろな方の意見を試して、自分の物にすることがいかに大事かということをここ数年で僕は痛感しています。これは可能なら競技を始めたばかりの頃の自分に伝えたいと思っていることです(笑)。周囲の支えがあって初めて成長ができるということを、声を大にして伝えたいですね。

<プロフィール>

棒高跳
江島雅紀(えじま・まさき)選手

1999年3月6日生まれ。神奈川県出身。荏田高卒。
2021年スポーツ科学部競技スポーツ学科卒。富士通所属。
17年ユニバーシアード競技会4位
17年U20世界選手権4位
19年日本陸上競技選手権大会優勝
21年日本陸上競技選手権大会2位
自己ベストは19年上総走高跳・棒高跳記録会の5m71