「櫻イノベーション」

生徒たちの10年後を笑顔にする学校改革
日本大学櫻丘高等学校 大木治久 校長

付属校
2020年10月01日

本学文理学部に隣接する日本大学櫻丘高校(以下、櫻丘高校)は、2018年、「グローバル教育」「クリティカルシンキング」「アクティブラーニング×ICT教育」「体験型高大連携教育」の四つの柱を軸に「櫻イノベーション」という学校改革プランを立ち上げた。

以降、入学志願者数を着実に伸ばしているほか、本学への進学率は付属校の中でトップクラスを誇り、難関大学への進学でも実績を上げている。

「「自主創造」を「櫻イノベーション」でわかりやすく具体化した成果」と大木治久校長は手応えを語る。

「自主創造」を具体化した「櫻イノベーション」

全国に26校ある付属高校は、それぞれに本学の教育理念である「自主創造」を指針として教育活動を行っているが、どのような施策を打ち出すかは各校の独自性が発揮されるところだ。

大木校長は2018年に着任すると同時に、生徒が「自主創造」をより理解しやすくするために、4つの柱を軸とした新たな改革を打ち出した。それが「櫻イノベーション」だ。

「「自ら学ぶ」「自ら考える」「自ら道をひらく」という3つの要素からなる日本大学の教育理念「自主創造」を、より具体的にしたのが「櫻イノベーション」です。「自主創造」は、文部科学省が示す新しい学力観「学力の3要素」(「知識・技能」「思考力・判断力・表現力」「主体性・多様性・協働性)ともぴったり一致する理念ですから、「櫻イノベーション」は文科省が提唱する「21世紀型教育」のための施策でもあります」

学校全体でイノベーションする

「学力の3要素」を育成するために2022年度から実施される新しい学習指導要領には、「アクティブ・ラーニング」や「主体的・対話的で深い学び」「探究型学習」といった21世紀型教育が示されている。

大木校長は「櫻イノベーション」を立ち上げることで、国が示す教育改革にもいち早く対応していたということだ。

「着任早々、いきなり「櫻イノベーション」を打ち出したので、先生方はだいぶ驚いたんじゃないかと思います」と笑うが、大木校長の熱く真摯な思いはすぐに伝わり、教員が一丸となってイノベーションを推し進める気風が生まれた。

「「櫻イノベーション」が目指すのは、生徒のセルフイノベーションだけでなく、教員のセルフイノベーションでもあるのです。それが、スクールイノベーションという大きな結果につながると考えています」

英語運用力を磨く「グローバル教育」

一つめの柱となるイノベーションは「グローバル教育」だ。

「これは、単に英語を話す、書くというスキルを身につけるだけでなく、英語を用いたコミュニケーション力を高め、グローバル化に対応することを目標としています」

英会話の授業ではネイティブの教員による少人数制を採用し、1クラスを3分割した効果的な授業を展開するほか、ネイティブスピーカーとの会話で話す力を磨く「オンライン英会話」や、英会話サロン「SAKURA Cafe」、世界16カ国の高校生との交流プログラム「グローバルリーダー事業」、長・中期の留学制度の充実、台湾からの留学生の受け入れなど多彩な学びの場を用意している。

探究的に学ぶ「クリティカルシンキング」

二つめの柱となる「クリティカルシンキング」は、物事を多様な観点から考察する力のことで、「探究」がキーワードになるという。

「個々の教科にとどまるのではなく、多様な教科の横断的学びを通して様々な分野で「もっと深く学びたい」という気持ちを起こさせることが狙いです。副教材やICT機器を使って、考えを深めたり意見を発表し合ったりする学習を行っています」

自ら学び自ら考えて答えを出す(=道を切りひらく)ことは、まさに「自主創造」の学びだ。

また、「クリティカルシンキング」は、三つめの柱である「アクティブラーニング」の基本になるものでもある。

「四つの柱がすべてクロスオーバーしていることも『櫻イノベーション』の大きな特徴」と大木校長は言う。

新時代を生き抜く力を養う「アクティブラーニング×ICT教育」

三つめの柱は、「学力の3要素」をアクティブラーニング型の授業を通して身につける取り組みだ。現在、全教室に電子黒板が導入されているほか、1人1台のタブレット端末が支給され、パワーポイントを使ったプレゼンテーションやグループワーキングなど、よりアクティブな授業参加が実現している。

地の利を活かした「体験型高大連携教育」

一般的に高大連携と聞くと、大学の講師が高校で講演を行ったり、高校生が大学で講義を受けたりする光景が思い浮かぶ。もちろん、櫻丘高校でも単位認定制の講義の受講や学部訪問などを積極的に行っているが、本学文理学部に隣接するという地の利を活かした連携こそが、他校とは一線を画す櫻丘高校ならではのものだ。

「生徒たちは、文理学部の図書館やカフェテリアなどの施設を自由に利用することができます。また、定期試験前には教職志望の学生に放課後チューターをお願いし、生徒が文理学部内「ラーニングコモンズ」へ出向くことで、大学生に勉強を教えてもらうこともできます」

大学生の姿を近い未来の自分に重ねることは、進路についての考えを深めるきっかけにもなるため、「大学の雰囲気を肌で感じて学べるのは、とても有意義なこと」と大木校長は言う。

目指すのは「日本一の学校」

大木校長には、最終的に目指す目標が二つあるという。

「一つは、今いる生徒たちが10年後、20年後に笑顔でいることです。大半は社会の中で仕事を持っていると思いますが、自分から何かに積極的に取り組んで、日々を楽しく前向きに過ごしていてほしいと思います。

そして二つめは、職員会議でも常々言っていることなのですが、「日本一の学校」をつくりたいと思っています。生徒の満足度が高く、卒業生、保護者にも「櫻丘高校に入って良かった」と思ってもらえる学校にしたい。そのための「櫻イノベーション」であり、今後もできることは何でもやっていきたいと考えています」

現在は、学習到達状況を明確にする「ルーブリック評価」の導入や、探究型学習の充実に注力し、さらに数年後を見据えたアイディアも構想中だという。

「日本一の学校」を目指す大木校長のイノベーションは、今後ますます充実したものになりそうだ。