日本大学明誠高等学校サッカー部
11月9日、全国高校サッカー選手権山梨県大会決勝が山梨中銀スタジアムで行われ、明誠高が日本航空高を延長戦の末に1-0で破り初優勝を果たし、創部59年目で悲願の全国高校サッカー選手権大会初出場を決めた。
決勝戦は日本航空高に終始ペースを握られる苦しい展開だったが、明誠高の持ち味である“泥臭く粘り強いサッカー”が発揮された会心の勝利だった。
この勝利を「想定通り」と語る後藤聡志監督に山梨県大会の勝利のカギ、そして12月31日に初戦を迎える全国高校サッカー選手権大会についてうかがった。
後藤聡志 監督
―山梨県大会を振り返っていただけますか?
大会初戦は10月22日に行われたのですが、その10日前に台風19号が山梨県にも直撃し、学校は10日間休校になりました。その期間は最寄り駅の上野原がある中央本線の高尾駅から大月駅までが運休、高尾駅から相模湖駅の間は土砂崩れが起きてしまい、選手たちは学校に通うことができませんでした。
―大会前に練習ができなかったということですか?
東京と神奈川に住む選手は大学のアスレティックパーク稲城内のグラウンドや豊山高のグラウンドをお借りして練習することができました。私が日大サッカー部出身なので、川津博一日大サッカー部監督と大学本部の競技スポーツ部に相談をさせていただいたのです。同様に山梨県に住む選手は大月のグラウンドで練習を行いました。全員が学校に集まって練習ができたのは大会初戦の2日前です。
―初戦はいかがでしたか?
4-0で勝利しましたが、内容は良くありませんでした。それでも気持ちを1つにして戦うことはできたと思います。
―揃って練習ができなかったことで逆に団結したということでしょうか?
はい。逆境しかないこの状況を、団結してプラスにしようと伝えましたし、選手もよく理解してくれました。学校のグラウンドでサッカーができることが当たり前じゃないということを大会直前に思い知らされ、みんなでサッカーができる喜びを噛みしめながら、とにかく悔いのないようにしようと、いい意味で開き直ってくれました。それはレギュラーだけでなく、サブやベンチ外の選手も同じです。
―その気持ちが悲願の初優勝につながりましたか?
そうだと思います。決勝の対戦相手だった日本航空高には2年連続選手権予選で敗れていますし、今年のチームも新人戦、インターハイ予選という大きな大会で2度ともPK戦で負けていたので、選手の勝ちたいという気持ちもかなり強かったです。
ゴール前の攻防のトレーニング
―決勝戦を振り返ってください。
うちの持ち味である“泥臭く粘り強いサッカー”でチャンスを待つというゲームプランで試合に臨みました。前半はシュートを打てなかったのですが、日本航空高の守備が非常に堅いことはわかっていましたし、ピンチも多いだろうと試合前から思っていて、実際に終始試合のペースも握られていました。観戦された方々はハラハラしたかもしれませんが、PK戦まで視野に入れていたので、0-0で延長戦に入ったのは想定通りのゲーム展開でしたね。
―そして延長後半4分に先制ゴールが生まれました。
ロングボールを2年生MFの五十嵐圭暉が相手DF2人と競り合ってゴールラインギリギリのペナルティエリア内でキープし、五十嵐のグラウンダーのパスをゴール前に走りこんだFW子安魁が冷静にゴール右上に決めてくれました。
―そのまま1-0で勝利。まさに「してやったり」という決勝戦でしたか?
はい。GK二上彰太のビッグセーブもありましたし、ディフェンス陣は本当に頑張ってくれました。それとキャプテンのFW鶴見來紀はムードメーカーでありながら、130人という大所帯をしっかりとまとめることができるという、なかなかいないタイプの選手で、彼の力は大きかったですね。
フルコートでの紅白戦
―冬の選手権に向けて、現在のチームコンディションはいかがでしょうか?
山梨県のリーグ戦で実践を積みながら、いい調整ができています。選手のモチベーションも高く、日に日にうまくなっていて、県予選からのいい流れが継続できていると思います。
―初戦の相手は四日市中央工業(12月31日/フクダ電子アリーナ/12時5分キックオフ)に決まりましたね。
四日市中央工業の伊室陽介監督は日大サッカー部の先輩で、大学時代一緒にプレーをしたことはありませんが、大変よくしていただいていますし、明誠高サッカー部が最後に全国大会に出場したのが28年前のインターハイなのですが、そのときの相手が四日市中央工業ということで、縁を感じる対戦相手になりました。是非いい試合をして、勝ちたいですね。
―目標をお聞かせください。
一戦一戦、大事に戦いたいと思います。参加する48校中48番目の実力だと選手にも言っていますし、しっかりと足元を見て、まずは初戦の勝利だけを考えています。大みそかが初戦になるので、勝ってみんなで年越しをして、みんなで初詣に行くという目標をまずは達成したいです。
―明誠高サッカー部を応援する方々にメッセージをお願いします。
予選前には日大サッカー部にも豊山高にも快くグラウンドをお貸しいただきましたし、温かいお言葉もかけていただきました。学校の教職員やOB、保護者の皆様にも、少しでもサッカー部のためになるようにとバックアップしていただいております。もちろん高校サッカーファンの方々にも応援をいただいております。そういった方たちの思いに応える試合をお見せできるよう、チーム一丸となって戦いますので、引き続き応援をお願いいたします。
―サポートしてくださる気持ちを忘れずに戦うということでしょうか。
はい。サポートという意味では、試合に出ることができない選手の支えがあって今があります。出場する選手には、仲間や応援してくださる方々のサポートに対する感謝の気持ちを忘れずに試合に臨んでもらいたいです。
鶴見來紀キャプテン(FW・3年)
鶴見選手
―チームのストロングポイントをおしえてください。
1人1人がチームのために走れますし、苦しい時間帯でも守備を頑張れるところです。
―ご自身のストロングポイントをおしえてください。
ハードワークが持ち味です。FWですが、前線からのプレスなどに注目してもらいたいです。
―目標とする選手はいらっしゃいますか?
川崎フロンターレの小林悠選手です。オフ・ザ・ボールの動きはとても参考になります。
―選手権へ向けて、意気込みをお願いします。
一戦一戦を大事に戦うということが前提ですが、やはり出場するからには優勝を目指します。韮崎高や日本航空高という強豪を倒しての代表ですので、山梨県に恥じないプレーをしたいです。明誠の“泥臭く粘り強いサッカー”を貫き通します。
―チームメイトにメッセージをいただけますか。
試合に出る選手も出ない選手も全員で勝ちにいくぞ!
二上彰太選手(GK・3年)
二上選手
―ご自身のストロングポイントをおしえてください。
シュートストップです。シュートを打たれるのではなく、打たせることを意識したポジショニングの良さに注目してもらいたいです。
―目標とする選手はいらっしゃいますか?
パリ・サンジェルマンFCのケイロル・ナバス選手です。派手なプレーをする選手ではありませんが、ポジショニングが絶妙なGKです。
―選手権へ向けて、意気込みをお願いします。
両親をはじめとしたいろいろな方々に支えていただいて、夢見た舞台に立つことができるので、恩返しができるように初めての全国大会に臨みたいです。まずは1勝を目標に頑張ります。
―チームメイトにメッセージをいただけますか。
つらいこともあったけど、この代は元気があって全員で乗り越えることができました。少しでも長く一緒にプレーできるように全国でも頑張ろう!
五十嵐圭暉選手(MF・2年)
五十嵐選手
―ご自身のストロングポイントをおしえてください。
相手MFとDFの間でボールを受け、ゴール方向にターンしてからのドリブルやラストパスです。
―目標とする選手はいらっしゃいますか?
アーセナルFCのメスト・エジル選手です。エジルのような華麗なラストパスを出せるようになりたいです。
―選手権へ向けて、意気込みをお願いします。
山梨代表としてピッチに立てることを誇りに、明誠らしくまずは守備から入り、カウンターで点を取るサッカーをしたいです。
―共に戦う先輩へメッセージをいただけますか。
素晴らしい先輩たちとサッカーができてうれしいです。出場できない先輩のためにも結果を出すことが義務だと思っているので、選手権でも結果を求めて頑張ります!