小学生向け薬の適正使用啓発教材を制作
茨城県薬剤師会と共同で

薬学部薬剤師教育センター

取り組み・活動
2021年10月20日

本学薬学部薬剤師教育センターと茨城県薬剤師会学校薬剤師部会は、薬の使い方を啓発する小学生向け教材を共同で制作した。一般社団法人「くすりの適正使用協議会」のホームページで9月15日から無料で公開している。

若年層による薬物の不適正な服用が急増しており、10代でも咳止めや風邪薬を乱用して薬物依存に苦しむ例が見られるという。こうした傾向に歯止めかけるためには幼少時からの「くすり教育」の普及が不可欠だが、一方で学校薬剤師には教育のノウハウが乏しく、授業に自信がないなどの声も寄せられていた。

くすり教育の普及に向けて「学校薬剤師の手助けが必要」と感じていた薬学部薬剤師教育センターの安部恵准教授が中心となり、本学側が近隣で薬学部のない茨城県に働き掛け、今回の共同制作が実現した。制作には薬学部の学生も協力した。

つくばビジネスカレッジ専門学校の生徒がイラストをデザイン。候補作の中から茨城県の小学校教職員らが投票して決めた。

教材は「勇者ジョーザの冒険」「魔法学校のお話」の2本。勇者ジョーザの冒険は、姫を救出するためにジョーザと一緒にいろいろなミッションに挑戦していくストーリー。クイズと実験を通して、薬の飲み方や服用量、副作用などの知識が身に付くようになっている。

「魔法学校のお話」

「魔法学校のお話」

魔法学校のお話は、魔法の書物を集めて一人前の魔法使いを目指す内容。設定やキャラクターは違うが、学ぶ内容は勇者ジョーザの冒険と同じで、どちらもスライドショーを見ながら児童が楽しんで参加できる。時間は35分程度で、授業の中で使いやすい長さになっている。学校薬剤師が手引きとして使えるシナリオも用意した。

小学生に伝わりやすい内容に仕上げ、行動の変化につながるようにするため、制作の過程で「演出家的発想」に着目。NHKテレビ「ためしてガッテン」の演出担当デスクだった北折一氏にアドバイスしてもらった。

薬学部の安部恵准教授

薬学部の安部恵准教授

主導した安部准教授は「くすり教育の推進は薬剤師全体で取り組んでいかなければならない課題」と話す。これら教材は茨城県内に限らず、全国から誰でもダウンロードできるようにしている。

すでに中学校と高校ではくすり教育が行われている。小学校では新学習指導要領(2020年度施行)に入っていないが、関連情報として教科書で薬が取り上げられているという。学校薬剤師が利用しやすい教材ができたことで、各地の小学校でくすり教育の取り組みが広がりそうだ。