「5G」で私たちの生活はどう変わる?

理工学部 電子工学科 大谷 昭仁 教授

研究
2020年08月03日

「5G *」を導入すると、身の回りのあらゆる機器をインターネットに接続し、大容量の情報を、低遅延で送受信させることが可能になります。このことが、日常生活にはどのように影響するのでしょうか。

Q 身の回りではどのような変化がありますか?

理工学部 電子工学科 大谷 昭仁 教授

理工学部 電子工学科 大谷 昭仁 教授

「5G」により安全性が上がると言われています。例えば、車側からは見えない死角から歩行者が飛び出してきそうなとき、車に装備されたセンサーだけでは歩行者を察知できません。ところが、双方が「5G」対応の装備をすることで事故が防げるかもしれません。歩行者が持っている「5G」対応のスマホから発信された歩行者の移動情報と、車側から発信された車の進行情報をネットワークがキャッチし、瞬時に車に「止まりなさい」と指示を送ることができます。

人対人の通信なら「4G」までで十分ですが、「5G」はどちらかというとモノとモノとの通信を意識したものなんです。たくさんの情報を吸い上げてコンピューターが分析し、指示を出すというようなことです。

Q 他にはどんな業界で活用が期待されていますか?

農業も面白いです。例えばセンサーが付いたドローンを飛ばして、温度、湿度、作物の育成状態などの情報を集め解析し、散水や薬剤噴霧まで一通りできると、一人の人が椅子に座りながらより多角的に農作業ができます。今の農業就業人口は、65歳以上が全体の6割、75歳以上が3割を占めていて、今後も農業離れが心配されます。でも「5G」を活用することで農業界に若い人たちが増えたり、自給率を上げられたりするかもしれませんね。

いろいろな可能性がありますから、どのようなビジネスが生まれるかによって、皆さんの生活が変わると思っておくと良いかもしれません。経済活動とリンクして進化していくものです。

Q 先生が思い描く「5G」のある世界

まさにこれから鉄腕アトムの世界が来ようとしています。作品に出てくる2足歩行のロボット、空飛ぶ車、スマートウォッチのような物は既に開発されていますよね。スターウォーズで見た、実際にはそこにいない人が映像で現れ会話をするシーンは、実現したらすごいと想像したものですが、それも現実になりそうです。
「人間が空想したものは必ず実現される」とよく言われています。ですから学生にはいつも、どんどん夢を持て!と話しています。今夢を持たなかったら、どういう世界に生きたいかが分からないだろうと。「5G」ができたから世の中がどう変わっていく、ではなく「これだけ可能性が広がるけど、どう変えていきますか」という世界なのではないかなと思うのです。

*5Gとは?
 5G(ファイブジー=5th Generation の略)は「第5世代移動通信システム」と呼ばれる。
 1980年代に商品化された、いわゆる最初の携帯電話に使用されているのが第1世代移動通信システムで、
 現在LTE(Long Term Evolution)通信方式を使用する携帯電話は3.9世代とされる。

大谷 昭仁(おおたに・あきひと)教授
アンリツに入社後、2000年から主幹研究員として超高速光波形観測基盤技術の研究に従事。15年から現職。研究分野は光通信工学、無線通信工学、光応用計測から、ミリ波・テラヘルツ波応用計測、計測工学。20年電気学会から「フェロー」の称号を授与。