【研究者紹介】
企業活動を主軸とした幅広い経営研究

大学院総合社会情報研究科 加藤 孝治 教授

研究
2020年03月25日

27年間の銀行員生活で培った知識と経験、近未来を見据え新たに挑む研究の道

通信制大学院である総合社会情報研究科で、経営・経済コースの指導にあたる加藤教授は、本研究科の出身者でもある。今年56歳になる教授は、京都大学を卒業後、銀行に入行。いわゆるバブル入社の銀行員だった。支店、本店で幅広く経験を積み、銀行の中でもっとも忙しいポジションと言われる次長職に就いていたとき、大学院への挑戦を決めた。42歳の時だった。

自らつかんだ第二の人生

大学院総合社会情報研究科 加藤 孝治 教授

大学院総合社会情報研究科 加藤 孝治 教授

「銀行にいればセカンドキャリアは会社が用意してくれますが、このまま敷かれたレールを進むのは嫌だなと思ったのです」

1990年代の金融再編以降、銀行を取り巻く環境は大きく変わり、銀行員として思い描くビジョンは入行当時のそれとは違ったものになっていた。そこで踏み出したのが、自分の手で切り開くセカンドキャリアへの道だった。

「一銀行員の市場価値を高めるには、何か武器を持たなければならない」と考えた加藤教授は、学位を取得する道を選ぶ。今でこそ「人生100年時代」とうたわれ、リカレント教育やセカンドキャリアがライフステージの一つとして語られるようになったが、当時はまだこうした考え方は浸透していなかった。

「仕事を犠牲にしないと決めていたので、5年後に博士号を取得するまで、職場の人たちには一切知らせずに勉強しました。通常の社会人大学院の場合、仕事をセーブしなければ学び切れませんが、本研究科は完全に仕事と両立できるので、非常にありがたい環境でした」

総合社会情報研究科では、20年以上前から電子会議システムを導入するなどして、学生一人一人の生活スタイルやニーズに応じた個別指導を行っている。帰宅後のわずかな時間や週末を使ってコツコツと学んだ加藤教授は、博士号取得後、教授職を得て、昨年4月に同研究科の教授に着任した。

多様な指導と研究活動

院生時代の指導教授でもある階戸照雄教授と共にゼミの指導にあたる

院生時代の指導教授でもある階戸照雄教授と共にゼミの指導にあたる

院生は働きながら学ぶ社会人が大多数を占めるため、当然、おのおのが持つバックグラウンドもさまざまだ。

「食品業界で働く人、医療産業の経営に興味がある人、地方在住で地元の企業を盛り上げたい人など、あらゆる分野の知識を深めたい人が集まってきます」

経営というキーワードを介して広がる世界は実に幅広い。そのため、教授自身も研究領域を限定することなく、あらゆるニーズに対応できるように努めているという。
「銀行員時代、産業調査部や本店営業部などで小売産業に長く関わっていたため、当初は小売業界を主な研究領域としていましたが、研究過程において、小売企業に多いファミリービジネスとの関連性、さらにファミリービジネスが多い地方企業との関連などにも興味を持ち始めました」

現在は、小売企業研究とファミリービジネス研究、さらに地域活性化や地方再生を組み合わせた領域を主な研究テーマとして取り組んでいる。また、食品消費生活に関する官民協働の研究にも参画中だ。

「日本の消費社会が今後どのように変わるかを、10年、20年のタームで考えるという研究会です。たとえば技術的には、タブレット1粒でビールを1杯飲んだのと同じように酔うことが可能な時代になっています。しかし一方で、人間にとって食事は作業なのか? 楽しみなのか?といった疑問も生じます。このように、さまざまな観点から食品消費生活研究を掘り下げています」

他にも、食品輸出産業の活性化に関わる研究や、物流に関する研究、日本酒の酒蔵研究など、加藤教授の興味と研究領域は果てしなく広い。「専門は何か?と聞かれると困るんです」と苦笑するが、どんな問題提起にも対応してくれる指導教授ほど頼りになる存在はない。さらに、キャリアアップを目指す社会人学生にとって、その道を体現する加藤教授は人生の指南役でもある。「学びたいと思ったら恐れず挑戦して」と語る言葉は、力強く説得力にあふれている。

大学院 総合社会情報研究科
加藤 孝治(かとう・こうじ)教授

昭和63年京都大経済学部経済学科卒。同年日本興業銀行(現・みずほフィナンシャルグループ)入行、小売業界を中心に大企業営業、産業調査を担当。
平成24年本学大学院総合社会情報研究科総合社会情報専攻博士後期課程修了。博士(総合社会文化)。27年目白大経営学部教授。31年本学大学院総合社会情報研究科教授。
主著に『日本のファミリービジネス』(中央経済社、共著)など。