【研究者紹介】
自動運航船を動かすためのルールを考える

法学部 南 健悟 教授

研究
2021年09月03日

複雑化する社会の中で、隙間を埋める法律、より望ましい法律を考えることが必要。 乗り物好きが、法学者として船の自動運航に取り組む。

いわゆる六法のうち南健悟教授の専門分野は商法。その中でも近年主要なテーマとしているのが海法で、現在、東京海洋大と共同で研究しているのが、自動運航船のルールだ。AIにより無人で動かす船の研究が進んでおり、日本では2025年の実用化を目指している。

現在の法律で自動運航船を動かすことができるのか、事故が起きた場合誰が責任を負うのかなどの法的課題について研究している。

知人の弁護士が扱った船舶事故について意見交換したことをきっかけに海上交通法規などの研究に着手。2016年に万国海法会という国際会議に出席、自動運航船というものがあり、そのための世界的なルール作りが議論されていること、日本にはまだその分野の法学研究者が少ないことを知り、先駆者としてホットな研究に取り組んでいる。

船と鉄道を愛でる

法学部 南 健悟 教授

法学部 南 健悟 教授

港町に住んでいた学生時代に船を見るのが好きだったのが現在の研究の出発点かもしれない、という南教授。乗り物好きは鉄道にも及び、特にアナウンスや出発音を愛でる「音鉄」だという。学生時代は検察官志望だったが法律の勉強は好きで、担当教授から研究者の道を勧められた。

当時から研究を続けてきたのは会社法で、会社の不祥事やブラック企業といった問題に取り組んできた。例えば過労死が起こったときに会社だけでなく会社役員個人にも責任を負わせられるのかといった問題。
労働法と会社法の交錯領域にあるため、あまり研究が進んでいなかった。「社会が複雑化していけば法律も複雑化していきますし、いろいろな法律がバッティングするため調整も必要になってきます。逆にそれぞれの法律の専門性が強くなってどこかに隙間ができてしまうこともあるので、そこを埋めていく研究も必要になります」
自動運行船に関する法の「隙間」への研究にも、これまでの経験が生きている。

そのルールで幸せ?

学生に学んでほしいのは、ただ今ある法律を知り、守ることではない、と話す。法律家は、目の前のルールの解釈を研究することがメインだが、最近はそもそもどういう立法が望ましいのかを研究することも増えている。「法学部の授業でも、現行の法律を知ることに加えて、その法律が必要なのか、本当は違うルールの方がみんなが幸せになるのではないか、と考えるきっかけを与えられたらいいなと思っています」

法学部
南 健悟(みなみ・けんご)教授

2005年静岡大人文学部卒。10年北海道大大学院博士課程修了(法学博士)。旭川大特任助教、小樽商科大准教授を経て、17年本学法学部准教授。20年教授。海上保安庁の「自動運航船の運航に関わる勉強会」委員を務める。北海道出身。