食品ロスを減らすためにできること

生物資源科学部 食品ビジネス学科 清水みゆき 教授

研究
2021年10月27日

今、 日本でどのくらいの食品が無駄に捨てられているのでしょうか。 食品ロスを減らすために、家庭でできることはありますか。 製造、供給する事業者にとっての課題は何でしょうか。

Q 食品ロスは減っていますか? 課題は何ですか?

生物資源科学部 食品ビジネス学科 清水みゆき 教授

生物資源科学部 食品ビジネス学科 清水みゆき 教授

食品ロスは大きく家庭系と事業系に分けられ、家庭系が約4割を占めています。1990年代をピークとして日本の食品廃棄物の量は減ってきていますが、人口1人当たりにすると微々たる減少です。2001年に食品リサイクル法が施行されましたが、家電などと同じように食品も廃棄物として扱いリサイクルに回すという考え方で、対象は事業者だけ、家庭での廃棄は対象とされていないことが問題でした。

2012年にFAO(国際連合食糧農業機関)が、食料廃棄と食品ロスに関するレポートを発表し、それを受けて2019年になってようやく食品ロス削減推進法ができて、家庭でのロスをなくそうという方向が色濃く打ち出されました。そもそも日本の食料自給率は37%しかありません。多くを海外からエネル ギーを使って運び、さらに大量に捨てて焼却のためにまたエネルギーを使うという矛盾を解決する必要があります。

Q 家庭での食品ロスは、どうしたら減らせますか?

家庭系の食品ロスは事業系と違ってほとんど減っていません。家庭でのロスには三つのシーンがあります。調理する前に賞味期限が切れて捨てる、調理中に厚く皮を剥きすぎるなどの過剰除去、そして食べ残しです。対策としてフードドライブやフードバンク、すなわち余っている食品を福祉施設等に寄付する活動が盛んになっています。今後の課題としては、人々が食品表示をもっと理解する必要があると思います。賞味期限は短めに設定されており、それを過ぎてもメーカーが期待するおいしさはちょっと落ちるけれど、まだ十分食べられます。例えば賞味期限の1カ月前に開栓したらいつまで食べられるか、というような表示も必要でしょう。こういう点に気を付ければロスが減るという情報が、皆さんに行き渡ることがとても大事だと思います。そのための全世代型の食育が大切になります。

Q 製造業者や外食産業の課題は?

事業系では、肥料化、飼料化するなどのリサイクルが進んで製造業でのロスはかなり減ってきています。課題としては3分の1ルールという商習慣があります。賞味期限が6カ月の場合、3分の1の2カ月は出荷ができて、次の2カ月は店頭で販売でき る。それを過ぎると返品されてロスになる。この商習慣をなくそうという動きがありますが、なかなかうまくいきません。ただ、 賞味期限は「何月何日」までだったのが、「何月」までとすることで、少しでも長く食べてもらおうという動きが最近になって見られるようになりました。

食品を供給する側と消費者とをつなぐものが食品表示です。 少しでも食品ロスが減るようなアイデアを表示に託して、そのことで消費者の意識も変えるようなシステムづくりが求められていると感じます。また、外食産業に関してはもっと持ち帰りがしやすいような法整備が必要かもしれません。

食品ロスとは?
日本の食品廃棄物の量は年間約2500万トンに上る。そのうち売れ残りや食べ残し、賞味期限切れなどにより、本来は食べることができる分が食品ロスと呼ばれ、約600万トンとなっている(2018年度 推計値)。世界全体では食料生産量の3分の1に当たる約13億トンの食品ロスが生じている。

生物資源科学部 食品ビジネス学科
清水みゆき(しみず みゆき)教授

本学農獣医学部(現・生物資源科学部)卒。千葉大大学院自然科学研究科博士課程修了。博士(農学)。一橋大経済研究所助手などを経て、2003年本学生物資源科学部食品経済学科専任講師に就任。11年から現職。専攻は農業史、公害史、食料・農業経済学。農林水産省の各種委員を歴任。