全力で楽しむから結果がついてくる

水泳部・競泳 本多 灯 選手(スポーツ科学部2年)

スポーツ
2021年09月11日

東京五輪の男子200mバタフライにおいて、1分53秒73の自己ベストで銀メダルに輝いた本多灯(スポーツ科学部2年)。メダリストとして臨むことになる10月の日本学生選手権(インカレ)に対する思いを話してくれた。

東京五輪での活躍の源は、レースを楽しむこと

本多灯(スポーツ科学部2年)選手

誰よりも楽しもうとしたことが結果に結びついた

10月7〜10日、東京辰巳国際水泳場で行われる日本学生選手権水泳競技大会、通称インカレ。男子は、はじめて総合優勝を果たした1936年の第15回大会以来、37回もの優勝回数を数える。だが、女子はまだ総合優勝を果たしたことはない。戦力も充実し、上野広治監督のもと、新体制で迎える今年のインカレでは、男女共に総合優勝を目指している。

その中心人物となるのが、本多灯(スポーツ科学部2年)である。先の東京五輪において、男子200mバタフライで銀メダルを獲得。トレードマークと言って良い“笑顔”を振りまきながら入場し、メダル獲得後も笑顔でスタンドに向けてガッツポーズを繰り返す姿に、本学チームメイトのみならず、日本中にパワーを贈った。

「決勝は、もう楽しむしかない。入場から、誰よりもレースを楽しそうにしよう」と決めていた。準決勝までは緊張から思うような泳ぎができなかったが、決勝に残ったからには、全力を尽くすしかない。良い意味で開き直った本多らしさ溢れる、まさに会心のレースだった。

「悪い流れを払拭してきました。得意のラスト50mで勝負をかけるつもりでした。それが成功して、思い通りのレースができました。すごくうれしいです」

メダリストになっても変わらない、エースとして臨むインカレ

インカレでは200mバタフライだけではなく400m個人メドレーでも優勝を目指す

インカレでは200mバタフライだけではなく400m個人メドレーでも優勝を目指す

昨年のインカレで1年生ながら本多は200mバタフライと400m個人メドレーで優勝を飾って2冠を達成。特に400m個人メドレーでは五輪にも出場していたライバルを倒しての優勝だった。それについて本多は「運が良かった」と言う。

「でも、今年は運ではなく、400m個人メドレーでも実力で勝ちたいと思っています。そのライバルとは自己記録は2秒くらいの差はありますが、昨年も大ベストを出して優勝できましたから、今年もベストを出して優勝することが目標のひとつです」

200mバタフライは、メダリストとして臨む。オリンピアン、そしてメダリストだから“勝って当然”というプレッシャーが本多にはのしかかってしまうことだろう。だが、本人はどこ吹く風。

「メダリストだからといって、やることは変わりませんから。僕は昨年から、日本大学のエースとして活躍するというつもりで頑張ってきました。その思いは今も変わりません。僕がチームを引っ張って、優勝に導きたい。そのために、やるべきことをやるだけです」

メダルは関係ないとハッキリ口にする。総合優勝に向けてやるべきことをやるだけだ

メダルは関係ないとハッキリ口にする。総合優勝に向けてやるべきことをやるだけだ

ただ、インカレまではすでに残り1カ月を切った。東京五輪が終わったあと、8月は休養を取るためにほとんど練習はしていないと話す。それでも、本多は自分ならやれると胸を張る。

「インカレまでの1カ月はしっかりと強化できる期間だと捉えて、五輪のときの身体に戻すというよりは、それを超えるような自分というか、もっと進化できるように取り組んでいきたい」

本多がこうして、常に前を向けるのには理由がある。『3年後のパリ五輪で金メダルを獲得する』という明確な目標があるからだ。

「1カ月という期間は、確かに短いんですけど、ここでどこまでできるかを考えて取り組んで進化していくくらいでないと、3年後のパリ五輪では金メダルを獲れないと思いますから」

本多をそうさせるのは、今の世界チャンピオンである、ハンガリーのクリストフ・ミラークの存在だ。ミラークは200mバタフライで、1分50秒73というずば抜けた世界記録を保持しており、東京五輪の金メダリストで、世代も変わらない。彼にできて、自分にできないことはない。そう信じる本多は、ミラークを超えるための準備をすでに始めているのである。

「ミラーク選手に勝つためには、僕が日本の水泳界のトップに立って日本チームを引っ張っていかないといけない。そのためにも、インカレで勝つことはもちろん、日本大学というチームをエースとして引っ張っていかなければいけないと思っているんです」

チームの柱のエースとして
そしてムードメーカーとして総合優勝を目指す

「僕は言葉がうまくないので、泳ぎや結果でチームを引っ張っていきたい。昨年はインカレ2日目の200mバタフライで優勝して、チームに良い流れを作れたと思います。僕自身もその流れに乗って、400m個人メドレーでも優勝できました。今年は去年よりももっと良い波を2日目に作りたい」

そう決意を新たにする本多は、あくまで自然体。五輪のメダリストになったからといって、本多自身は何も変わることはない。それは、チームメイトたちも同じだったという。

「良い意味で、やっぱり灯は灯だね、って言われます。それがすごく僕はうれしいんです。今まで通り、いつもの自分を見てくれているというか。そんなチームメイトたちのためにも、僕は頑張らないといけないんです」

最後に、本多からチームメイトたちへのメッセージをお願いすると、少しはにかんだ様子で、でもしっかりとこう答えてくれた。

「僕の場合、レースを楽しんだ結果が自己ベストにつながることが多いので、水泳を楽しむことをモットーにしています。東京五輪もそうでした。そして、ただベストが出る楽しさだけじゃなくて、高いレベルで勝負をすることの楽しさも僕は知っています。だから、チームメイトたちにもレースを思いっきり楽しんでもらいたい。楽しんでレースをするから、結果がついてくる。僕も、インカレはチームメイトたちと一緒に思いっきり楽しんで、良いレースをしたいと思います」

本学が目指すのは、男女アベック優勝。男子は2年ぶりの優勝を目指す。その鍵は、2年生ながらムードメーカーとしてチームを盛り上げつつ、エースとしての役割を果たす覚悟を持った本多になることは間違いない。

<プロフィール>

本多 灯(スポーツ科学部2年)
2001年12月31日、神奈川県生まれ。日本大学藤沢高校から本学スポーツ科学部に進学。水泳を始めたのは3歳のとき。全国大会に初出場したのは小学4年生のころ。中学に入ってから頭角を現し始め、中学3年生で全国大会初優勝を飾ると、高校進学後はジュニアの日本代表として活躍。
本学進学後、1年生ながら2020年のインカレでは200mバタフライと400m個人メドレーの2冠を達成。日本選手権も2連覇して東京五輪代表に。東京五輪本番では200mバタフライで銀メダルを獲得した。