日本大学水泳部監督に聞く
『インカレ男女総合優勝への道』

スポーツ
2021年05月10日

インカレ総合優勝回数37を数える、日本大学水泳部。昭和の時代には、幾度となく連覇を成し遂げ、大学水泳界の頂点に君臨してきた。その強さの秘密こそが、チーム力。一丸となり、ひとつの目標に向かって突き進む力こそ、日本大学水泳部の強さの源である。その力を取り戻すべく、上野広治監督は新しいチームの形を作り出そうとしている。

目指すのは男女インカレ総合優勝、男女主将が目標達成を誓う

コロナ対策も万全ななかで行われたオリンピック壮行会も兼ねた水泳部入部式

オリンピック壮行会も兼ねた入部式はコロナ対策も万全ななかで行われた

この夏最大の祭典、東京オリンピックの代表に、競泳では6人(OG1名含む)、アーティスティックスイミングで1人(OG)が内定を手にした。

競泳は、4月3日から10日までに開催された、第97回日本選手権水泳競技大会のみで選考される、まさに一発勝負。その狭き門をくぐり抜けた選手たちへの壮行会が、4月17日、日本大学三軒茶屋キャンパスにて行われた。同時に、令和3年度日本大学水泳部入部式が催され、35人の新入部員紹介が行われた。

選手たちへ激励の言葉を贈る藤森部長

選手たちへ激励の言葉を贈る藤森部長

藤森裕基部長より「日大水泳部は、37回のインカレ優勝、オリンピック選手は100人以上、そしてメダルは30個以上獲得している。そんな伝統ある部に入部した誇りを持って、これから4年間を過ごしてほしい」と挨拶を受けた。

また、昨年は新型コロナウイルス感染拡大のため、令和2年度の新入部員、現2年生の選手たちの入部式は残念ながら中止に。そのため、今回の入部式に合わせて、現2年生の入部式として選手の自己紹介も行った。紹介も終わり、最後に今年度の主将に任命された尾山武(文理学部4年)が今年度の目標を力強く語った。

新入部員に今年度の決意を語る尾山主将

尾山主将が新入部員に今年度の決意を語る

「先輩方のお話を伺えば伺うほど、自分たちは多くの人に支えられていると実感します。日本大学水泳部員としての自覚と責任を持って、これからも行動していきたいと思います。今年度、チームの目標は水球はインカレベスト4、飛込は全員入賞、そして競泳は男女アベック優勝。これらの目標を達成すべく、チーム一丸となって練習を頑張っていきます」(尾山)

尾山主将が話す通り、日本大学水泳部が令和3年度シーズンに掲げる目標は、競泳競技のインカレ男女アベック優勝だ。

女子チームの主将であり、オリンピック代表でもある長谷川選手

オリンピック代表でもある長谷川は泳ぎでチームを牽引する

女子チームを率いるのは、今年度女子主将に任命された、東京オリンピック代表の長谷川涼香(スポーツ科学部4年)。

「昨年のインカレを見ていても、男子のチームワークの高さを感じていました。そういう男子チームと一緒に練習することで、男女関係なく、日大水泳部が一体となってインカレに臨むことができると思います。私自身は女子主将として、結果でチームを引っ張っていけるよう頑張ります」(長谷川)

選手ひとり一人の成長こそが、インカレ総合優勝への第一歩

強い日大を作るための決意を話す上野監督

強い日大を作るための決意を話す上野監督

日大水泳部が掲げる、インカレの男女アベック優勝。その構想について、上野広治監督はこう話す。

「日本大学水泳部は、昭和の時代に31回ものインカレ総合優勝を果たしています。ただ1回勝つだけではなく、連覇できる力があったんですね。その源は、学校体育という集団で物事に取り組む先にある、チーム力だと思うんです。その強さを、もう一度令和という時代に、新しい形で作り上げていきたい」

チーム全体でひとつの目標に向けて、部員ひとり一人が自分で学び、考え、行動する。まさに日本大学教育憲章にある自主創造そのものが、伝統ある日本大学水泳部の強さを支えていた。その力をもう一度呼び起こすことが、今年度の目標である、インカレの男女総合優勝への第一歩なのだ。

「今はまだまだ指示待ち人間が多いのも事実です。まずは選手ひとり一人が自主的に自分の為すべきことを考え、行動することが、今のチームに求められている力だと思います。それらがひとつにチームとして集まったときにはじめてチーム力となり、結果に結びつく」

個の成長なくして、チームの成長なし。そのためにも、まずは自分自身が自信を持ってレースに臨むこと、その自信の裏付けとなる練習に自主的に取り組むことが大切だ。

「本当の自信は、やらされている練習では身につきません。自己ベストを出すためには自分が何をすれば良いか、どういう行動をしなければならないのかを自らで考え、自主的に取り組む練習を積み重ねて、はじめて試合に生きる自信が身につくのです」

故古橋廣之進先生の言葉が思い出される。『根底に哲学を持て』。これはスポーツで強くなるためだけのものではなく、人として、社会人として成長するために、どういう考え方が必要なのかを伝えてくれていた。この哲学を持つことが人としての強さになり、選手としての強さにもつながるのである。

そして、その強さが全員同じ目標に向かって歩みを共にするとき、チーム力となって大きな力を生み出すのである。

オリンピック選手を中心に、着実に得点を積み重ねられるチームへ

上野監督は、入部式の最後にこう話した。

上野監督

上野監督から部員全員に向かって檄が飛ぶ

「入部式に足りないものがあります。それが天皇杯と奥野杯(女子優勝杯)です。来年度は、このふたつの杯を揃えて入部式を迎えたい。この夏、ライバルたちを倒し、皆で一丸となって奪還に向けて邁進しましょう」

そのためには、決勝進出できる選手を増やすことが必要不可欠。日本のトップで活躍する選手は、ひとりで40点以上を稼ぎ出す。そういう選手に加え、確実に決勝、B決勝に進出し、着実に得点を積み重ねていくことこそが、総合優勝には欠かせない戦力になる。

ひとりが突出するだけのチームは、勝てない。誰かひとりに頼るのではなく、全員がひとつとなり、全員が責任と自覚を持って試合に臨むから、はじめて総合優勝が可能になるのである。

長谷川、関海哉(スポーツ科学部4年)、池江璃花子(同学部3年)、小堀倭加(同学部3年)、本多灯(同学部2年)ら日本代表選手たちが、オリンピックという舞台を経験して成長することは間違いない。そんな彼ら、彼女らがチームの起爆剤となれば、今年の夏、インカレで尾山主将、長谷川主将のふたりが優勝杯を掲げる姿がきっと見られることだろう。