新年を迎え，通院及び入院中の皆様や患者さんをご紹介くださる先生方にご挨拶を申し上げます。また昨年末に発生した新型コロナ感染症の収束をご報告いたします。

初めに新型コロナウイルス感染症に関してご報告いたします。当院は昨年５月までは感染防止に注力し，その後は皆様のご協力を得て日常診療を中心に据え，コロナ禍にあっても例年以上の治療成績を収めました。しかし，９か月間維持した感染防止の壁が全国的な第３波によって崩され，３つの病棟でクラスターが発生してしまいました。感染者４７名，ご逝去された方は１１名です。不幸な転機に至った患者様やそのご家族には哀悼の意を表します。加えて，感染確認の検査を何度も受けられた方々にも，そのご協力に感謝するとともに深謝いたします。

国内を見渡しますと，クラスター発生を経験し，その反省の上に感染防止を強化した病院であっても，複数回のクラスターが発生しています。当院でも市中感染の患者さんを含めて闘病中の方がおられ，東京都は緊急事態宣言下にあるため予断を許しませんが，当院は本日，クラスターの収束をご報告します。約１か月半の間，ご心配とご不便をおかけしました。救急医療と人工透析はまだ完全には復旧していませんが，私どもはこの度の経過を厳しく検討し，可能な限りの改善策を実行することで日常診療の充実に努めます。

ここに当院の今年の目標を申し上げます。当院の理念は“病院は病者のためにある”であり，私はこれを“患者さんが納得のいく治療を行うこと”と定義しました。本年はこれに“安全な環境で”という枕詞を付けるべく，教職員一同，努めます。新型コロナは狡猾で素早く動き，人々を執拗に悩ませます。今回の感染症の経験より，私は新型コロナウイルス感染症に対して“安心”はないと痛感しました。それでも“安全”な環境を提供することは医療に携わる私どもの務めです。そこで“安全な環境で納得のいく治療を行うこと”を当院の今年の目標といたします。どうか本年も日本大学病院を宜しくお願い申し上げます。

令和３年１月１５日　　　　　　　　日本大学病院病院長　　天　野　康　雄