新年度がスタートして2カ月。4月に日大生になったばかりの新入生もキャンパスでの生活が軌道に乗ってきたのではないか。キャンパスで過ごす日々で、切り放すことのできない存在が学生食堂、いわゆる学食だ。学生にとって食事の場であるのはもちろんだが、授業の合間のひとときをくつろぐ憩いの場であり、親しい友との語らいの場である。学生生活に活力をもたらし、リフレッシュさせる学生公堂の役割そのものは変わらないが、その“中身”の装いは時の流れとともに形を変えてきた。かつては食事の量と値段の安さが“売り物”だった学食も、いまでは量より質、味覚を満足させるメニューの多彩さ、さらには清潔感、雰囲気など食事を楽しむ場としての“好感度”までが問われる時代だ。といっても親の側からすれば親元を離れたわが子がどのような食生活を送っているかは、昔も今も変わらぬ心配のタネ。キャンパスでの食生活を支える学生食堂の“いま”をレポートしよう。
ニーズに対応,カフェテリア方式導入も
最初に学生食堂に対する学生の評価を紹介しておこう。本学の学生生活委員会がまとめた平成9年度学生生活実態調査報告書のうち学生食堂の「満足度」についてのデータだ。調査は「あなたは満足していますか」という質問に対して▽とても満足している▽どちらかといえば満足している▽どちらかといえば不満である▽とても不満である――の4つの選択肢を示して回答を求めたものだが、「とても満足している」と「どちらかといえば満足している」という回答を合わせた「満足度」の高い学食の学部別ベスト5は(1)商,(2)文理,(3)生物資源科,(4)理工,(5)工――の順となっている。
このうち「とても満足」と「どちらかといえば満足」の合計が50%を超えている、つまり半数以上が「満足」と答えているのは商学部と文理学部なので、“学食代表”として別稿でその実情を紹介するが、全学部の平均も40・1%なので、学食に対する学生の評価はまずまずといえるのではないか。
それでは学食の“中身”について具体的に点検していこう。
〈メニューと値段〉学生にとって最大の関心は、どのようなメニューがあり、それがどの程度の値段で食べられるかということだろう。
学生の好みの多様化に応じて、メニューの内容もバラエティー豊かになっているのは事実だが、値段の変化はどうか――。値段については昭和57年6月30日付と63年2月1日付の「日本大学広報」父母号で学生食堂を取り上げたとき、定番メニューの値段を紹介している。
いまから16年前と10年前ということになるが、代表的な定番メニューの値段を比べてみよう。
57年は経済学部の例だ。
親子丼 170円
カツ丼 250円
カレーライス 150円
63年の法学部の場合は
親子丼 300円
カツ丼 300円
カレーライス 170円
つまり6年間で親子丼が130円、カツ丼50円、カレーライス20円の値上がりということになる。
それから10年。値段はどのように変わったか。今回のレポートでは、各学部の庶務課を通して学食のメニューと値段についてアンケート調査している。経済学部、法学部と同様に都心のキャンパスである理工学部駿河台校舎の学食の定番メニューと比較すると
親子丼 350円
カツ丼 400円
カレーライス 220円
10年前に比べると親子丼が50円、カツ丼100円、カレーライス50円の値上がりとなっている。これを高いと見るか、安いと見るかはともかく、10年の歳月を実感させる変化であることは間違いないだろう。
変化といえば、値段だけでなくメニューの変化も大きい。今回のアンケート調査で、こちらが“定番メニュー”としてあげたのは、カレーライス、カツ丼、冷やし中華の3種だが、回答では定食、ランチを中心に多彩なメニューが“定番”にあげられており、時代の推移がうかがえる。
定食、ランチを日替りにしてメニューに変化をもたせたり、好みのものを好きなだけ選べるカフェテリア方式の導入(法、文理、経済、理工・駿河台など)、さらには特製ハヤシライス(経済)、特別定食(芸術・江古田)などの“特別メニュー”、チンジャオロース丼(法)、ザージャー麺(文理)といった変わりダネをとり入れるなど、学生の好みの多様化に応じたメニューにも工夫をこらしている。
気にかかるのは“特別メニュー”の値段だが、特製ハヤシライス600円、特別定食480円というところで、特に高いということではなさそうだ。
〈サービス、環境〉学生食堂である以上、セルフサービスが原則であり、学生にしても“お客さま”としてのサービスより、メニューの「中身」や値段の面での実質的サービス歓迎というところだろう。
その点は食堂側も心得ており、メニューにしても栄養面に配慮してカロリー、塩分を表示したり(文理、商など)、旬の食材を使って季節感を盛りこむ(法・大宮、芸術・所沢など)といった気遣いをしている。
環境面では清潔感、衛生管理の徹底はもちろんだが、照明、インテリアなど快適な環境づくりにも気を配っている。特に学生食堂の新装、改装にあたっては“いま風”の装いをこらすのが時代の流れのようだ。
その1例が昨年、全面改築された経済学部本館1階のカフェテラスで、ゆったりとした空間、大理石やシャンデリアで飾られた店内はレストラン並みの雰囲気を備えている。
ここほど新しくはないが、工学部情報研究棟の8階にある食堂も抜群の展望とウエイトレスのサービスつきなのでレストラン気分を味わうことができる。ウエイトレスのサービスは理工学部船橋校舎の特別食堂でも行われており、学外からの訪問客の利用にも応じられるよう特別メニューなども用意されている。
このようなサービス、環境面の改善も学生の利用しやすい環境づくりが前定となる。その意味では設置場所、営業時間なども気にかかるところだが、同じ棟の1、2階、あるいは地下、1階というように近接しているケースが多く、独立した食堂棟をもつ学部(芸術・江古田、同・所沢、理工・船橋、生物資源科など)もある。
営業時間は法、経済のように第2部のある学部の場合、平日は午後8時まで営業というケースもあるが、他の学部では午前8時30分〜同10時30分開店、午後4時30分〜同7時閉店が平日の営業時間となっており、学部の授業時間などに応じての利用者への配慮がうかがえる。
利用に便利な4食堂,お値段にも気配り示す――文理学部
第2体育館の1階に「カフェテリア・チェリー」、地下1階に「福松食堂」と「不2食堂」。そして2号館1階に「榊食堂」と文理学部には合わせて4つの学生食堂がある。ただし榊食堂は`ホカ弁aスタイルの弁当販売なので、学生が座席で食事をとる「食堂」は3カ所ということになる。
3つの食堂を合わせた座席数は468席。ピークの昼休み(午後0時10分〜同1時)の時間帯ともなると、座席の確保が難しく、戸外や廊下、階段などに座って食べる学生も少なくない。学生側から改善を望む声もあり、座席増設が課題といえそうだ。
もっとも食堂での食事にこだわらなければ、2号館には榊食堂のほかモスバーガーの店とパン類の売店があるので、弁当なりファーストフードなりで間に合わせることもできる。
それでは3つの食堂のうち1日の利用者約1200人というカフェテリア・チェリーに足を運んでみた。
入り口を入ると左手の調理場前にカウンターがあり、ライス、みそ汁、惣菜などが並んでいる。カフェテリア方式なので学生は好みの食品を選んでプレートにのせ、レジで会計をすませてから座席に就くことになる。
正午少し前なのでピークの時間帯ではなかったが、それでもほぼ満席の状態。側面は1面のガラス張りで、外光があふれ明るい雰囲気。窓際には4人がけの席もあって、友人との会話もはずみそうだ。

▲明るい雰囲気の食堂で,友人との会話もはずむ=文理学部「カフェテリア・チェリー」
調理長の朝比奈武さんの話では、メニューは日替りで、1日約20種類のメニューをそろえているが、男子学生は肉を好むので必ず肉料理を1品加えるようにしている。野菜を好む女子学生向けにはサラダを多くするなどの工夫をしているという。ライスが大(150円)、中(110円)、小(80円)と3種類から選べるのもカフェテリア方式のメリットといえるだろう。
人気メニューはそぼろ丼(370円)、チキンねぎソース(300円)、イタリアンハンバーグなどだが、朝比奈さんの話では毎日のメニューの売れ行きから学生の好みをつかんでメニューづくりに生かしているという。
第2体育館の地下にある福松食堂と不二食堂は200席のフロアーを共同で使っており、自動券売機で食券を買って注文する方式をとっている。メニューにも目立った特色は見受けられないが、福松食堂では唐揚げセット(470円)、チキンカツ定食(430円)、焼肉定食(420円)など、不二食堂はカツカレー(350円)、スパゲッティミートソース(300円)などが人気メニューになっている。
学生食堂の管理運営を担当するのは庶務課だが、メニュー、値段については、年度初めに厚生施設委員会で委託業者から出されたリストをもとに検討して決めている。同課の高橋潤課長補佐の話では、業者側も学生の利用しやすい値段を心がけており、昨年などは米価の動きに応じて、ライスの値段を引き下げたケースもあるという。
好きなものを好きなだけ,食後は“だんらん”の場――商学部
世田谷区砧の住宅街の真ん中にある商学部校舎。同学部の学生食堂は5号館の「大食堂」と1号館の「軽食堂」の2カ所。
「大食堂」は5号館地下にあって座席は約400席。昭和39年、現在地に学部が開設されてからの伝統ある食堂である。開設以来、大学側の直営だったが、昭和62年4月から業者への委託経営となった。同年9月に大改装しテーブル、いすなどが一新された。1歩、中に入ると、テーブル、いすが整然と並び、ひと昔前のデパートの食堂のようだ。一角には時代を反映するように「喫煙室」も設けられ、ここの定員は16人。テーブル8つにいす16。昼食時間の前から、缶ジュースなどを手にグループごとに歓談する学生の姿も見られる。学生ホールなどと並んで学生たちの団らんの場になっているようだ。
営業時間は午前9時から午後6時。土曜は午前8時半から午後1時半。朝からの“客”は少なく、学生でいっぱいになるのは、正午すぎてから午後1時ごろまでの昼食時間帯。雨などの悪天候時には、すぐに満席になってしまうという。学部周辺は静かな住宅街で、レストランや喫茶店など“息抜きの場”が極めて少ない。仲間数人で食事中の学生は「食事の味、量、値段には不満はないけれど、全体に席数が足りない」「雨の日は早く駆け込まないと席がなくなります」と、ちょっぴり不満気な様子で訴えていた。
学生が「不満はない」と言った味について、よく学生食堂で食事をするという同学部の佐久間秀治・学生課長は「味や量については自分で食べてみないことには分かりませんから」と言いながら半チャーハン・ラーメンのセットを食した。味、量ともに不満はなかったようだ。
学生の好み、食事のとり方もこのところ大きく変わってきた。「以前は体育会の学生が定食ものを腹いっぱい食べることも珍しくなかったが、最近は少しずつ多くの種類を選ぶ学生が目立つようになった。そのためにメニューも数が増えました」と話すのは、学生課の瀬川一成・主任。厨房に立つ業者の担当者は「季節感や旬の物を意識し、野菜を多く使った料理を出すように心掛けています。3週間ほど前から、学生から要望があった野菜いためをメニューに加えました」と学生の身になった料理づくりに力を入れている。
同食堂の運営は学生課、管理は庶務課が受け持っている。メニューや値段は教職員が加わる学生生活委員会の食堂小委員会で検討して決める。現在の最高価格はチキンカツライス、オムライスの400円。日替わりサラダ80円、豚汁150円、ラーメン180円、肉野菜いため200円など種々雑多のメニューが並んでいる。注文カウンターは「めん類」「セット」「カフェテリア」の3つのコーナーがあり、好みに応じて食べたい物を選ぶことができる仕組みになっている。軽食堂も内容はほぼ同じ。うどん類が多いのが特徴といえそうだ。
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▲食後,喫煙コーナーで仲間と歓談する学生=商学部大食堂
学生の“席取り合戦”では、バッグや書籍、ノート類をグループの“代表格”がテーブルやいすの上に並べて十人前後分の席を確保する行為が広く行われているという。席にあぶれた学生は食事をトレイに乗せて、食堂の外へ出て食事を済ませ、そのまま姿を消すケースもある。瀬川主任は「グループごとに行動する学生が多くなった。でも自分で食事を運び、後片付けをするというマナーは守ってもらわなくては」と話している。