金融や医療,事故…危機管理の国際シンポ


医療事故をはじめ企業経営、通貨危機のマネジメントを議論した阪神大震災以降,国内では自治体はじめ,企業など営利,非営利を問わずあらゆる組織で危機管理(リスクマネジメント)に関して関心が高まっている。総長指定研究第Y期の統1テーマも「地球型社会における危機への対応」として研究がスタートした。
 このような状況のもとで,大学院グローバル・ビジネス研究科(NBS)はニューヨーク大学スターン・ビジネス・スクール,ハーバード大学病院リスクマネジメント財団と共催で,1月15日,日本大学会館で「日米国際シンポジウム―リスクマネジメント」を開催した。
 シンポジウムには瀬在幸安総長(NBS科長)はじめ,NBSと両大学関係者,企業経営者ら約180人が参加,基調講演,パネルディスカッション,質疑を通して,過去,現代の知識や技術を含む「人」「資金」「物」の移動など広範囲にわたる事象に関して,日・米のリスクマネジメント情報を交換した。
 リチャード・シイラ・ニューヨーク大学ヘンリー・カウフマン冠講座教授は基調講演「現代金融機関から何を学ぶ」で,1500年から1998年までの欧州主要5カ国,米国,日本の国民1人当たりのGDP(国民総生産)データを提示。100年ごとの世界水準を100とした場合,1500年にはイタリアの195を筆頭にドイツの120まで,オランダ,英国,フランスとも120超だったが,米国は71,日本は88と欧州各国に比較して低かった。1998年になると米国が479と突出し,日本も358と欧州五カ国(311〜354)を上回った。
 同教授は「金融制度の存在が重要な役割を持っている。豊かな国は,しっかりした金融制度・機関とリスク管理制度・手段を保持していると言えそうだ」などと述べた。
 このほかの基調講演はジョン・L・マッカシー・ハーバード大学病院リスクマネジメント財団理事長の「ハーバード大学病院のケーススタディー」,野村吉三郎・全日空取締役会長の「航空業界におけるリスクマネジメント」の2題。講演は各50分ずつ行われた。
 午後からのパネルディスカッションでは,福井博夫NBS教授,押田茂實医学部教授,シイラ氏ら6人が参加。押田教授は「日本の医療事故,医事紛争の数は届け出システムがないので不明」とした上で,各種のデータからの推定として,「100件の医事紛争のうち,消滅するのが約30%,見舞金で決着が約40%,弁護士の仲介による示談約20%,残り約10%が訴訟になっている」と述べた。
 さらに,労災事故で用いられる「ハインリッヒの法則」を引用,「事故で1人が死亡すれば,同様事故で負傷生存している人が29人,あわやその事故に遭いそうになった人は300人ということである。医療事故死亡例が一例報告された場合には300例のニアミスがあったということになる」などと発言した。

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