専門職大学院の意義考え本学でも一層の充実を
医学部講師〈専任扱〉 原野 悟(はらの・さとる)氏
| 大学設置基準の改正に伴い専門職大学院という新たな課程が追加され,本学においてもグローバル・ビジネス研究科に引き続き,話題の法科大学院開設に向けて準備が進められている。自らアメリカで専門職大学院のひとつであるスクール・オブ・パブリックヘルス(公衆衛生大学院)に学んだ経験を基に,専門職大学院がどうあるべきか論じてみたい。 そもそも同じ専門教育でも専門学校におけるそれは手順にしたがって処理する能力としての専門技術である。いわば技師(テクニシャン,メカニック)の養成である。 一方,大学におけるそれは新たな問題を処理するような開発研究にまで及ぶ能力の知識技術であり,これは技術者(エンジニア)の養成だと考えるとわかりやすい。 この両者を隔てるキーワードは,リーダーシップである。そのようなリーダーシップを身につけた人材を養成することが大学における専門教育の本質である。しかし,現在の学部課程では時間的にも,カリキュラムの構成上でも不十分である。 それは,本来学部教育の目的は,スペシャリスト養成を目的とした一部の特殊な学部を除き,教養教育を基盤としたジェネラリストの養成にあるからである。そこでさらにスペシャリストとしての専門教育を行う場として専門職大学院が必要となる。 この違いは法学を例にとるとわかりやすい。法学部法律学科で終わる者は法律の知識を身につけて実社会のあらゆる分野で活躍することが期待されるのに対して,プロとして法職を目指す者はさらに,16年度から設置される法科大学院に進むことになろう。 専門職大学院のもうひとつの大事な役割はマネジメント能力を学ぶことである。従来はジェネラリストが経営管理に携わってきたが,社会が複雑になり,管理者にはマネジメントのスペシャリストとして能力が必要となってきた。この教育を行う典型はMBAを授与するビジネス・スクールであるが,他の専門職大学院でもマネージメント教育は重視される。 公衆衛生大学院のMPHでは保健医療機関・組織の管理運営を,行政管理大学院のMPAでは行政組織の,教育大学院のMEDでは学校の管理運営を行う能力を身につける。このために,管理者となろうとする者は休職してでもこれらの学位を取るので,専門職大学院では社会人入学の比率が高くなる。 このことは,18歳人口減少後には社会人が高等教育の大きな市場となることを意味している。つまり,早急な専門職大学院の整備が大学生き残りに不可欠となるのだ。 21世紀では多岐にわたる分野でマネジメント能力が必要とされる。すでに企業内研修教育は飽和状態にあるといえよう。今ほど大学教育と実社会の連携が必要な時はない。本学においてもぜひこの波に乗り遅れないように,新たな専門職大学院として,グローバル・ヘルス研究科や教育管理研究科などの設立も検討されるよう提案する次第である。 (投稿=医学部講師〈専任扱〉) |