「水俣」の言説と表象
メディア、マスコミ、ジャーナリズムの研究を専門領域とする九氏が「水俣病事件がなぜあのような報道のされ方をしたのか」という問いを出発点にして執筆した。九州の新聞社が水俣病の「公式確認」を最初に報道した後も患者の発生と死亡者が増加したのに、三年以上も有力新聞社が全国展開しなかった。だが、地元では膨大な報道がされたのに顧みられず、未曾有の事件に発展した。
小林義寛准教授は第四章で、「『水俣漁民』をめぐるメディア表象」について現地調査を踏まえ書いている。忘れられていた「漁民」、「豊かな」海―「水俣」および周辺「漁民」素描などについて地元新聞の記事などから読み解く。「漁民」=「病の統」―他者化する隠喩では、水俣の奇病は「毒物説」や偏食によるビタミン不足、血族結婚などの報道もあった。「初期報道の不正確さや遅れが被害を広げたといえる」
書籍名 | 「水俣」の言説と表象 |
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著者名 | 小林直毅・編法学部准教授 小林義寛・共著 |
月号 | 2007年秋季号 No.113 |
価格 | 4,600円(税別) |
出版社情報 | 東京都新宿区早稲田鶴巻町523、藤原書店 |