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天城 少年の夏

ふるさとの伊豆を愛する著者が、天城を舞台に昨年書き下ろした純愛小説「天城 恋うた」(静岡新聞社)に続く“伊豆賛歌”作品。主人公の少年のみずみずしい目を通して天城の山河の魅力、そこに織りなす人間模様をこまやかに描いている。

暑い夏の日、誰よりも少年をかわいがってくれた祖父が畑仕事で倒れ、意識が戻らない。祖父の回復を祈り森の中の石塔に手を合わせる少年の前に少年をよく知っているという男性が現れる。「誰もが死ぬ。悲しみに耐えて、おじいちゃんの死をよく学ぶんだ」と言い残し、幻のように姿を消す-。

祖父の死、遺産相続をめぐる両親と伯母たちとの確執、家を捨てた伯父と農家を継いだ父それぞれの切ない思い。少年を取り巻く人たちの哀しさと優しさの中で“大人”へと成長していく少年のけなげな姿が胸を打つ。

書籍名 天城 少年の夏
著者名 日本大学副総長・国際関係学部長 佐藤三武朗・著
月号 2002年秋季号 No.93
価格 1,500円(税別)
出版社情報 静岡市登呂3-3-1、静岡新聞社