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や行

白秋祭

著者にとっては「経ヶ岬」に続く二作目の小説。旅先での人々との触れ合いの中で、新しい生き方を見つけていく若い女性を描いている。

東京の製薬会社の研究員として勤務する和世は、妻子ある職場の上司との関係を断ち切るため、九州への旅に出る。友人から送られてきた「北原白秋論」をふと手に取ったことが、白秋の郷里、柳川へと足を向けさせる。宮崎の青島、大分の原尻の滝、阿蘇の温泉を訪ねながら柳川へ―。白秋の命日を挟んで三日間行われる白秋祭水上パレードのどんこ舟に、宿の奥さんの計らいで乗ることができ、そこで、若い船頭の元と出会う。有明海干拓事業で打撃を受けた漁業に失望し船頭をしている元に和世は心を引かれていく。

和世の疲れた心を癒してくれる人々の温かさ、柳川の情緒、自然の美しさが、随所に織り込まれた白秋の詩とともに読者に伝わってくる。

書籍名 白秋祭
著者名 経済学部教授 横山 理吉・著
月号 2007年冬季号 No.110
価格 800円(税別)
出版社情報 東京都千代田区三崎町1-3-2、桜門書房