学内の活動状況

報告の画像 第15回意識改革講演会 日本大学男女研究者共同参画国際シンポジウムのご報告

開催趣旨
本年は、国の科学技術振興調整費による女性研究者支援「女性研究者養成システム改革加速プログラム」が新たにスタートした年であるが、女性研究リーダーの育成には、諸外国とも共通する課題が多い。本シンポジウムでは、これまで女性研究リーダー育成・登用に成果を上げて来たアメリカ、コロラド大学のLEAP プログラム, 及び、昨年、大学における女性教員枠を大幅に引き上げたドイツの例を学ぶ。さらに、企業におけるリーダー育成の優れた点を学び、今後の本学および日本の大学における女性研究リーダー育成の指針としたい。パネル討論においては、本学および新たにシステム改革加速プログラムをスタートさせた大学、企業等の取組みと課題を紹介、グローバル化の時代に望まれる女性の研究リーダー像について議論を深める。さらに、これを契機として女性研究リーダー育成を目的とした、国内外のグローバル・ネットワークの構築をめざす。

ポスターはこちらから
報告書冊子はこちらから (9MB)



日 時: 平成21 年10 月08 日(木)14:00 ? 17:40
場 所: 日本大学会館2 階大講堂 地図
定 員: 100名


プログラム
総合司会 熊谷日登美 (日本大学生物資源科学部准教授)
挨拶 (14:00−14:10)
歓迎の辞 酒井 健夫(日本大学総長)
開催趣旨 大坪 久子(日本大学女性研究者支援推進ユニット長・ 総合科学研究所教授)

基調講演 (14:10−15:30)

猪口邦子 ( 元少子化男女共同参画大臣, 日本学術会議会員[政治学] )
國井秀子 ( リコーITソリューションズ株式会社 取締役 会長執行役員 )
Iris Wieczorek (Director, German Research Foundation (DFG), Japan Office)
Patricia Rankin (Associate Vice Chancellor, Faculty Diversity and Development, Office of Diversity,
Equity and Community Engagement, University of Colorado at Boulder, USA)休憩 (15:30-15:40)

課題提起 (15:40−16:20)

野呂 知加子 (日本大学女性研究者支援推進ユニット推進コア長・生産工学部准教授)
上瀧 恵里子 (九州大学高等研究機構研究戦略企画室・准教授)
有賀 早苗 (北海道大学副理事・女性研究者支援室長・農学研究院/生命科学院教授)
広崎 膨太郎 (第7期男女共同参画学協会委員長, NEC 代表取締役・執行役員副社長)

休憩 (16:20-16:35)

パネル討論 (16:35-17:35) 司会 大坪 久子 (日本大学女性研究者支援推進ユニット長・総合科学研究所教授)
基調講演者、課題提起者

挨拶 (17:35−17:40)
閉会の辞 河野 典子 (日本大学理工学部教授)

懇親会 (18:00-19:30)
歓迎の辞 滝戸 俊夫 (日本大学理工学部長・教授)

挨拶 歓迎の辞
酒井健夫(日本大学総長


日本大学は、文部科学省科学技術振興調整費の支援により、平成20年度から男女共同参画を推進する「女性研究者支援モデル育成」事業に取り組んでいます。男女共同参画とは、男女が社会で対等な構成員となり、社会のあらゆる分野の活動に参画し、それにより均等に利益を受けると共に責任を担うことです。しかし、現実には男女共同参画という言葉が日常的に用いられていても、それがどの程度実行されているのか不明な点もあります。そこで、男女共同参画という概念を普及し、社会のシステムや人々の意識を変え、男女共に活躍できる環境を確保することが目下の懸案であります。少子高齢化の進んだ我が国では、男女が能力を十分発揮し、それを社会が活用する必要があり、男女共同参画なくして我が国の持続的発展はないといっても過言ではありません。このことは国勢調査の労働力率に関するデータでも明確に示されています。すなわち、女性の年齢別労働力率は男性に比べて低く、しかも30歳台では著しく減少しています。この原因は言うまでもなく妊娠、出産、育児の影響であり、我が国の社会的サポート体制が不十分なために、女性が一時的に働くことを休止するためです。女性の労働力率は、我が国や韓国では年齢に従ってM字型の中弛みに推移していますが、アメリカ合衆国、フランス、ドイツ、スウェーデンでは出産や育児による労働力率の減少が見られません。すなわち、我が国の女性の就労環境が国際的に遅れていて、支援体制を社会全体で考えなければなりません。我が国の女性研究者も、女性労働者と同様な状況下にあり、同様な問題を抱えています。そこで、男女共同参画を推進する「女性研究者支援モデル育成」事業では、女性研究者がその能力を最大限に発揮できるように、研究環境の整備や意識改革の実現を支援するシステムを開発するものです。このモデルを開発することによって、本学の女性研究者の教育・研究環境が改善されることは勿論のこと、開発したモデルが我が国全体の女性研究者の環境整備に寄与することを期待します。さらに、本事業が全学的に理解されながら、一歩ずつ確実に進展することを願っています。

開催趣旨
大坪久子(日本大学 総合科学研究所 教授 女性研究者支援推進ユニット長)


今年は、科学技術振興調整費による女性研究者支援「女性研究者養成システム改革加速プログラム」が新たにスタートした年ですが、女性研究リーダーの育成には、諸外国とも共通する課題が多いと考えられます。本国際シンポジウムでは、いかにして女性研究者の活力を活かし、女性のリーダーを育ててゆくのか、について議論をしたいと考えています。嬉しいことに、今年は理系の女性のノーベル賞受賞者が3名出ました。医学・生理学賞が二人、化学賞が一人でした。この例は、女性研究者の活力が十二分に活かされた好例といえるでしょう。シンポジウムでは、これまで女性研究リーダー育成・登用に成果を上げて来たアメリカ、コロラド大学のLEAP プログラム, 及び、昨年(2008年)、大学における女性教員枠を大幅に引き上げたドイツの例を学びたいと考えています。さらに、企業におけるリーダー育成の優れた点を学び、今後の本学および日本の大学における女性研究リーダー育成の指針としたいと考えています。課題提供では、本学および新たにシステム改革加速プログラムをスタートさせた大学、企業等の取組みと課題を紹介していただきます。最後に、パネル討論では、グローバル化の時代に望まれる理想の研究リーダー像について議論を深めたいと考えます。そして、これを契機として、女性研究リーダー育成を目的とした国内外のグローバル・ネットワークが構築されることを期待しています。

パネル討論より


大坪 氏
ヴィーツオレック
ランキン 氏
上瀧 氏
國井 氏
野呂 氏
朝長 氏
有賀 氏


大坪
まず、基調講演をお願いした方々にコメントをいただきたいと思います。
ヴィーツオレック
日本で現在進んでいる施策には、大変感銘を受けました。同時に、それぞれの国でそれぞれの施策が採られており、お互いに学ぶことがあるとも思います。ドイツでは、サイエンスの分野に女性を増やすことについて、メルケル首相が大変意欲的です。また、シャバン大臣(教育担当大臣)は、特に私たち女性をしっかりサポートしてくれています。ご紹介のあった、九州大学や北海道大学の施策、あるいは企業の事例等も、もちろん重要かつ必要な施策であり、今後とも継続されるべきだと思います。
ランキン
まず本日伺った日本の取り組みについて、非常に前進的で感心しています。私自身、NECの社員として加わりたいと思ったほどです。私がとくに注目したいのは、事業のスタートに対して、国家的な基金があることで、これは大変重要です。そして、これらのプログラムについて、国が資金を拠出する体制から、大学・研究機関自身が将来にわたって資金を拠出できる体制へと移行することが重要だと思います。
さらに重要な課題として、なるべく早い時期に、女性を意図的に上位職につける、例えば、グラントの審査員に加え、判断を下す責任のある役回りにつけるべきだと思います。とくに若い女性をそのような立場に取り込んでいく、少なくともそういう候補者のプールを担保することが重要だと思います。
このようなリーダー育成を、どこかで始めなければならない。たとえば、アメリカの場合、全米科学財団 (NSF) がイニシアテイブをとることにより、女性の地位は高まったと思います。日本においても、そのようなプログラムを設けて、女性が決定を下す役割に早い段階で入ること、またそれを促すことが重要です。そのことが、草の根レベルの発展を進めます。
大坪
ランキンさんがおっしゃったことは、女性に責任を与えることで、彼女たちを鍛えることができた。そういう状況を、早い時期に日本でも作るべきであるということですが、九州大学のご意見はいかがですか?
上瀧
「女性枠を作って、男性から文句を言われませんか」とよく言われますが、「研究助成」に関する女性枠については、女性を鍛えることは必要ということで、クレームはありませんでした。しかし、「採用」に関する女性枠については、合意を得るのは楽ではなかったです。ただ、女性にアシスタントということではなく、できるだけ早い時期にいろいろな経験をさせて、一人前の責任を持つ仕事をさせるということは、本人のスキルアップのためにも、また全体のためにも非常に重要なことだと思います。
國井
今日お話を聞いていて、キックオフのときからすごく進んだと思いました。九大の話も、北大の話もそうですし、この文科省さんのプログラムは非常に効果があったと感銘を受けました。こういうプログラムがもっと早くから日本で進んでいなければいけなかったというのが実感です。
3年でこのプログラムが終わってしまうのは問題というのは、あちこちで聞いています。私は文科省の審議会にも出ていますが、若手プログラムについては委員の方々の発言が多いのですが、女性の話はあまり出てこない。女性研究者支援プログラムを推進することが必要だともっと言うべきだと思っています。今日のお話にも、数値目標20%などすばらしいお話が出ていて、企業も負けてはいられないと思いました。また、猪口先生もおっしゃいましたが、企業が社会のイノベーションの先端にいるという点で、皆さんがこの事業を本当に実効あるものにしていただくことがきわめて重要で、企業にとっても、それが非常に有益なことだということを感じました。
大坪
ありがとうございました。政府の委員会でもぜひとも頑張ってください。
國井
はい。もう一言だけ。政府の補正予算の中で、2700億円の先端研究支援プログラムがありました。ワーキンググループで約500件以上もの提案の中から 60件選び、一番上の委員会が、60件から30件に絞り込むというミッションを持っておりました。私は60件の提案を読んだのですが、残念なことに女性のテーマが全く上がってきていませんでした。全体の中には少しはあったのですが、それでも数が大変少ないです。最終的に女性がゼロというのは問題だと思います。
大坪
いま振興調整費のモデル事業の期間が3年間という話が出ましたが、NSFのADVANCEのプロジェクトは何年間、続きますか。
ランキン
我々のプログラムですが、NSFからの財源をもとに、まず5年間行いました。いま8年が経過しようとしています。プログラムはこれから先も継続される予定です。プログラムに関してはコロラド大学の全教職員、全学部が対象です。しかし、組織を改変することは非常に時間がかかる作業でありまして、最初の数年間は、どのようなプログラムを運用するべきかについて、方向を決める必要がありました。また、どうやって評価を行うのか、大学という組織の中にどうやって波及させていくのかというところから始まりました。ですから、着手するにあたっては、今後10数年のプログラムを明確にしておく必要があります。
大坪
アメリカのADVANCE programの場合は、途中で1回見直して、これはいい、これはよくなかったと振り返るチャンスがあったと思います。日本の場合、どうしても3年間を全力疾走で駆け抜けるということになりますが、日本大学ではいかがですか?
野呂
全力疾走の途中なのでよくわかりませんが、先ほど総長にお話しいただいたように、日本大学も積極的に推進はしているのですが、何しろ巨体の大学ですので、チェンジには時間がかかります。たとえば、3年たって、うまくいっている機関には、新しい加速プログラムに移行するのではなくて、プログラムの更新もしくは延長があれば、より定着させやすいと思います。
大坪
やはり3年というのはすぐにたってしまうと思います。そういう意味では、途中で、中間審査があって評価されれば延長という制度があるとよいと思います。
企業の場合、現在は、たとえば、内永ゆか子さん(元日本IBM取締役専務執行役員、現ベネッセホールデイングス取締役副社長)が育ててこられた方々が、だんだん次の世代のリーダーとして育ってきていられます。若手の女性にチャンスを与えるべきだという指摘があったと思いますが、社内での取り組みについてご説明下さい。
朝長
男女の別にかかわらず、会社のコアとなるビジネスリーダーの育成が重要であると考えています。したがって、若い世代から選抜するかたちで、将来のリーダー養成を早い段階から行っています。技術職あるいは研究職に関しては、社内で資格認定制度を設けて、専門職としての人材育成ということも心がけながらやっています。
特に研究分野の女性は、思考に関するバランス感覚が非常にすぐれているという傾向があると思います。つまり、着眼点やアイデア、あるいは技術を見る目利き、といったところが非常にすぐれている。そういう意味で、会社にとって女性を活用することは不可欠だと思っていますので、「管理職に登用してチャンスを与える」という過程を通して、動機付けや育成をしっかり行っていくことを心がけています。
同時に、女性社員、研究員の皆さんにも自分のキャリア形成を自律的に考え、志をもって自らにも厳しくやっていただきたいと思っています。男性の上位役職者に関しても、女性の部下を甘やかすのではなく、しっかりと育てていく、そしてちゃんとフォローしていくということを徹底させています。社内にいいロールモデルがいれば、社外も含めて積極的にPRし、こんなに活躍している女性がたくさんいるということを認識することで、自らの意識を高めてもらえればいいのではないかと考えています。
大坪
北大の有賀先生、最初の3年間はしっかりと基盤整備をやられたと思います。今後どのようなサイエンティストを育てていきたいとお考えでしょうか。
有賀
私たちは当初から3年間で何か大きな変化をもたらすということは非常に厳しいだろうと考えていました。ただ、大きな変化につながるような基盤作りの3年間としたいと考えていましたので、数値目標を2020年と少し遠くに設定しました。あれは少し戦略的な意味もありました。それは「3年間でお金がなくなったら、もう終わり」と言われては困るので、2020年という目標を内外にお約束をすることで、大学は2020年まではこの事業にお金を出さざるを得ないという戦略になっています。
プログラムが終わっても事業を継続することについては、総長も理事もあっさり了解してくれましたので、戦略的には成功したと思います。
ただ、年間5000万円もの科学技術振興調整費という、本来は科学技術の研究に使うべき資金を女性研究者支援に使うわけですから、これでサイエンスがよくならなかったらどうなるのか、本当にやっていいのかと常に自問しつつ、説明責任があると意識してお金を使わせていただいてきました。
人材育成の中の一つのモデル事業として、色々な負荷がかかっている女性を対象として支援を試みることで、見えてくるものがあるのではないかという位置付けでやってきました。キャリアパス多様化促進事業やテニュアトラック制度、そして、GCOEやCOE等と並行して、学内でいろいろ連携を取り合いながら、そのなかで女性をどういうふうに育てていけるかと考えてやってきたつもりです。
これからも加速プログラムをいただいて、女性を実質的に増やすことは勿論やりますが、独自に女性だけのプログラムに走るのではなく「人材育成本部」という恒久化された戦略組織のなかの1ユニットとして、いろいろな育成プログラムと連携して女性研究者の育成をやっていきたいと思います。
大坪
非常に大事なポイントが出てきたと思います。北大総長が「2020年まではやるのだ」とお考えになるように持っていかれた、その戦略には、おそらく LEAP Programについて、ランキン先生がおっしゃったように、どのように周りをインテグレートしていくか、トップの理解をどう得るかということと共通するものがあると思われます。
そのあたりについて、コロラド大で努力をなさったところ、その結果うまくいった事例を聞かせていただけますか。
ランキン
とくに理解の必要があるのは上位職、管理に当たっている人々です。中心はやはり各学部の学部長です。つまり、女性研究者の日々の研究生活のあり方というのは、学部の運営方針に委ねられるところがあります。だれがどの講義を持ち、どれだけの研究資金を与えられるのかということは、学部の上層部の方針によるからです。
初期の段階で我々が議論したことは、すべての学部長に対して、LEAPトレーニングを受けることを義務化するかどうかということでした。私は顧問委員会から、「義務化するのは意味がない」と言われました。「いったん義務化すると、どうしても受講を強制することになる。その場合、そこにとりあえずは座るが、決して納得しているわけではない。そして、本当に参加したい人間が参加できない状況が生まれる」と助言されました。
したがって、最初のワークショップでは、すべての学部横断的に参加してもらいました。そのなかで、それぞれの学部の好ましい点、不満な点をシェアしてもらいました。そうした議論を通して、どの学部にどのような方針が有効であるのかを議論しました。
そうすると、コロラド大学の中でもっとも権威のある物理学部が、学部運営についても最もうまく行っており、良い研究環境をもつことがわかって来ました。確かに、物理学部は3名のノーベル物理学賞受賞者を輩出していますし、学部教育の面でもかなりの時間をかけて、物理学の教授法について実績を上げています。
私は、LEAPの取り組みにかなりの時間をかけましたが、その間、この部門はこういう理由で非常にすぐれているというところを伝えてきました。物理学部におきましては、教員が、過去20年にわたり昇進していません。にもかかわらず、教員は我々の学部に在職していることに非常に充実感を覚えているというのが事実です。我々の学部がすぐれている点は、非常に協力的であるということです。女性をうまく採用する学部は、将来にわたって競争力を上げていく学部であると言っています。
現在、優れた人材を雇用することは、世界的にもますます難しくなっています。優れた部門は、ワークライフバランスをきちんと理解して、優れた人材を引き込むことができ、トップの業績をおさめています。コロラド大学におきましては、それほどいい実績を収めている者ばかりではありません。私は、理事を通じて学部長に対して、実績を評価に反映させなければいけないと言っております。アメとムチの仕組みですが、どの部門がうまくその点を実践しているのかということを情報として伝えます。情報を伝えるということは公表するということではなく、お互いに情報をシェアすることです。重要なことは、どの方針がうまくいっているかを伝える、プラスのところを強調することがポイントです。
大坪
ドイツのポジティブアクションは非常に研究志向型になっていますね。ワークライフバランスとは拮抗すると思われますが、そのあたりはいかがですか?
ヴィーツオレック そのとおりです。ドイツのポジティブアクションは研究志向型です。皆さんが言っているのと同じく、無理やり、強制的にはやらない。男女共同参画を押し付けてはいけないということです。うまくいったと思えば、押し付けなくても、大学自体が推進しようとするでしょう。
女性の肩にかかる負担はまだ増えていますし、ワークライフバランスという点では、前よりもむしろ厳しくなってきているといえます。今は男性も頑張らないと女性にポジションを取られてしまう。競争になってくるわけです。ですから、単に子育てができるようなインフラを整備するだけではなく、コミュニケーション対策も必要でしょう。男性の頭を切り替え、女性を平等なパートナーとして、研究の場で見てもらう方向に持っていくことが必要です。
そうしなければ、女性の頭脳の流出になってしまいます。グローバルな社会の中で女性に研究職に就いてもらえる方向にもっていかなければなりません。日本も、ドイツも、いまそういう危険にさらされていると思います。ノルウェーは教員、あるいは研究者に対して、とくに女性枠を設けたわけではなく、レビューをする審査委員会、検討会のところで、女性枠を設けたそうです。そうすることで、変革をもたすような方向にもっていったということです。
私の協会(DFG)ですが、ここでもこのような取り組みはまだ新しいものです。ドイツでも、それほど早くは進んでいるわけではなく、男女共同参画に関しては試行錯誤を繰り返している状況です。日本より若干進んでいるのは、男性でも育児休暇を取ることができるという点でしょう。現在は子育てをしている夫婦のうち、父親、母親のどちらかが、最大3年間の育児休暇をとることができます。しかし、まだ十分とは言えません。
200名の女性教授職には1億5000万ユーロの予算が確保されています。これは女性の教授職への就任を支援するための資金で、若干役には立っていますが、まだまだ目標には達していません。
大坪
では、会場からの質問を受けたいと思います。
福田(首都大学東京)
ランキン先生のお話には非常に共感いたします。私も、重要なのは、政府から組織への予算の移行だと思います。それに加えて、もう一つ、ご褒美が必要だということにも賛成いたします。そのご褒美が何かという点が私の最大の関心事です。例えば、そのプログラムを進めることで、より多くの女性が組織に入ることで,いままでより優秀な研究ができたとか、あるいは、より多くのすぐれた学生を集めることができたというデータはないのでしょうか?この活動の後にこのようなデータがあるということがわかれば,大学側にも活動を進める動機になると思いますが,そのようなデータがあれば、ぜひ教えていただきたいと思います。
ランキン
そのようなデータは、近々出てくると思います。
いまチームワークが注目の的となっています。つまりチームワークのよい方がよい結果を出す。また、教員の転出や交代が、大学の運営面では非常にコスト高になるというデータも出ています。アメリカでは研究者を採用すると、スタートパッケージと呼ばれる研究資金が、最初の数年間与えられます。教員がその部門にとどまらなければ、それが無駄になり損失となります。したがって、一旦採用した教員を維持するということには、コストの面でも意味があります。
さらにワークライフバランスがうまくいっており、全員参加型かつ協調的で平等感のある環境がいったん出来上がると、大学や研究機関の場合、研究者が自らの仕事に非常に集中できると言う調査結果がでています。自分の子育てや昇進について、常に心配しているということであれば、本来の仕事に十分な力は注がれません。これは説得力がある主張だと思います。
コロラド大学は、第一志望の教員を採用できる大学です。これは教員の採用が学部にとってうまくいっている証拠です。理由は過去の実績があるからです。我々の大学では、女性がよい実績をあげているので、多くの女性研究者にとって魅力ある大学、就職したい大学となっているわけです。物理学に限っても、外部機関からcareer awardなどの賞を受賞している、またフェローシップも得るといった具合に、研究者としての実績があがっています。男性と比べても女性のほうがよりすぐれた実績を出している割合が高いという結果が出ています。
久保(国立女性教育会館)
振興調整費のプログラムの設立にかかわった者として、実際、成果が上がっているということを大変うれしく思います。やはりお金というのは非常に大きなパワーで、いま日本の大学で男女共同参画が、どんどん広がっております。ただ、実際にはこの事業にかかわっている部署等、ごく限られた中では高い関心があるのですが、それをもっと広げていく必要があります。その拠点をつくるために、いろいろなセンターやCOEのグラントの審査に際して「女性がどのくらいインテグレートされているか」、「ワークライフバランスが取れているか」といった審査基準を設けてもよいのではないかと考えます。アメリカやドイツでこのような考え方がありましたら、教えていただきたいですし、そういう考え方についてのご意見をお伺いしたいと思います。
ヴィーツオレック 非常に重要なポイントだと思います。ドイツでは、先ほど紹介したように、なんらかの数字を出そうとしております。私どもの協会(DFG)でも、COE関係の活動におきまして、男女共同参画を重視しています。大学がCOEということで申請をしてきた場合、男女共同参画という点で特に進展がないと見られると、申請を受け付けないということになります。もちろんそれだけが一つの要素ではありませんけれども、女性の登用も含めた申請内容になっていることが望ましいということです。十分な予算があるために、そういうかたちでプレッシャーをかけています。
ランキン
アメリカの場合、例えばNSFでは、二つの基準があります。まず研究がどれだけすぐれているかという点と、研究そのものがどれだけインパクトを及ぼすか、という二つの側面から審査を行います。審査委員会も、このような基準にかなり重みを置いております。
審査委員会にもよりますが、委員に女性が加わると、女性の採用にかなり重点が置かれるが、そうでない場合には軽視されがちというような傾向があります。しかし、一般的に言うと、我々は未だに、十分な数の女性研究者を受け入れてはいない(採用していない)のです。今後、次世代の科学者、エンジニアの採用にあたっては、十分なワークライフバランス等々に重点を置かなければ、我々の競争における優位性は失われると思います。
小山(日本大学薬学部)
今日はとてもすばらしい講演をありがとうございました。
男女共同参画というと、やはり最終的な目標は女性を認めるということではないかと思います。優秀な女性リーダーを意思決定の場にどんどん採用するということが、男女共同参画の成功につながるとは思いますが、トップに立つ女性だけを目標にするのではなく、女性全体の能力を伸ばすような方向性、女性のよさを認める社会が必要だと思います。その点について、具体的な話をお聞かせ下さい。
大坪
女性研究者支援事業には二つの要素があります。一つは女性研究者の数を増やすこと、もう一つは女性の研究リーダーを増やすこと、今日のテーマは後者にしぼったのです。前者についてはまた機会を改めて持ちたいと思います。
有賀
ロールモデルを示すときにも、私はリーダーだけが大事とは思っていません。支援の仕方もよく考えて、出産・育児等の負荷で、あと一歩というところで活躍できなかった人たちを引き上げたいと考えています。したがって、どのように支援対象を選ぶか、そこにどうやってうまく支援を届けるか、がもっとも重要だと思います
朝長
我々、企業としてもいろいろな形でメンター制度を導入しています。単純に活躍する女性社員を紹介する形だけでなく、新入社員のコーチとしてつけてOJDを徹底する形、専任のアドバイザーを設定して随時キャリア相談を受ける形など、やり方はいろいろあると思います。大事だと思っているのは、自らのキャリア選択に応じて自分にあったメンターを自由に選べる仕組みを用意すること。従ってメンターになる人をいろいろなタイプで用意できればいいのではないかと思っています。
野呂
本日、配布した資料の中に、科学技術振興機構(JST)が作った「理系女性のきらめく未来」というロールモデル集があります。スーパーウーマンばかりではなくて、身近ないろいろな職業や生き方を紹介しています。両輪で頑張っていきたいと思います。 
大坪
このセッションを企画したときからやりたいと思っていたことが一つあります。それは、「リーダーとはなんぞや」ということです。それを一言ずつお願いします。
野呂
リーダーとは、人の能力と性格と希望をよく見抜く力があって、人と一緒にやらなければ何もできませんから、一緒にやっていくんですが、でも自分の目的とストラテジー、やり方をちゃんと人に説明できる必要があると思います。しかし、最終的には自分で決断して、その責任を取る人が私の理想のリーダーで、そうなりたいと思っております。
朝長
企業としては、事業の方向性をしっかり示すことができる人、そのために多様な人材を適材適所にアサイン・マネージして、リーダーシップを発揮できる人、そういう人を求めています。そのような素養が基本としてあった上で、私が個人的にずっとこうあるべきだと考えてやってきたことに、「明るく楽しく生き生きとした職場を作る」ということがあります。明るくというのは、要は公明正大にやるということ。楽しくというのは、要するに最後まで楽しく仕事をやり抜くということ。生き生きとしてやるというのは、目標に向かってチームが突き進むということで、そういう職場を作ることのできる人をたくさん作りたいと思っています。それがリーダーだと思います。
國井
IT業界でプロジェクトマネージャーとして成功している人の要件としていくつかあるのですが、上から二つを挙げますと、まずビジョンがあること、二つ目が「笑力」、つまり、「笑う力」、これがきわめて重要だということです。明るい職場を作って、皆さんのモチベーションを上げていける、そういうことを凝縮してわかりやすく、「笑力」と言っているのだと思いますが、ビジョンがあって、明るく引っ張っていける人、笑力のある人になりたいと思います。
有賀
フェアで、チャーミングである人と思います。きちんとフェアにいろいろなことを見ていく。パーソナリティとしては、厳しくても意地悪でないとか、育てる気持ちがある、楽しくやろうという、やっぱりチャーミングな人というのが、結局リーダーになると、人がついていくんじゃないかと思うので、フェアでチャーミングな人と思います。
ヴィーツオレック やはりオープンにいろいろな人材を見ていかなければならないということに尽きるでしょう。そして、才能を育てて引き出していくということではないでしょうか。
早い段階で、その才能を伸ばしていかなければならない。新参者を恐れてはいけない。新しい人の言うことに耳を傾ける。そして、そういう人を自分のコミュニティに取り込んでいく。それを可能にする人間性が重要でしょうリーダーはどこか雲の上ということがありがちですが、そうではなく、ちゃんと2本の足を大地に着けた人が必要です。
ランキン
誠意と柔軟性、順応能力、透明性、やはり真のリーダーというのは、その部下にとって、常に最善を尽くそうという
ように動機を与えられるものだと思います。
上瀧
あくまで個人的な意見ですが、リーダーとは、目先のことではなくて、長期的なビジョンを持って行動し、ときには構成員、部下を厳しく叱りつけることがあっても、いざというときは矢面に立って部下を守る。そして常日ごろ部下の仕事ぶりを正しく評価して、部下を信頼し、責任は私が取りますから、あなたの好きにやっていいですよと、そう言って仕事を任せる人だと思います。ただし、この場合は、任されるほうも相当な覚悟が必要かなと思います。
大坪
私が好きなリーダーというのは、支配(dominate)するのではなく、ある意味でネゴシエーションができる人、それから部下のために責任が取れる人、あまりうるさいことは言わなくて、全体がうまくいくように、いろいろなことに気をつけてじっと見ている、そういう人が人材を育てるのではないかと思います。
では、これでそろそろ終わりにしたいと思います。皆さん、今日は、どうもありがとうございました。(拍手)



アンケートより

* 基調講演について
o 海外の例を見聞できた。
o ドイツの情報は実際のところあまり多くないので、特によかった。
o 整理され情報が多く、勉強になった。
o 企業、海外の情報を得られた。
o 国外の取組み状況が分かった。
o 外国の事例、現状を聞く機会を持てた。
o ドイツの現状の話は初めてうかがったので、特に興味を持ちました。
o 著名な先生のお話を同時通訳でわかりやすく聞くことができた。
o 海外でも推進の困難な状況が把握できました。

* 課題提起について

o 3大学と企業の話題提供がありよかった。
o 各大学、企業での取組みについて知見が得られ、とても有意義でした。
o 色々な活動をまとめて知ることができた。
o 他大、社会にあっても男女共同ということが進んでいることを感じた。
o NEC等、企業の取組みを知るのは有益でした。これは医者(特に外科医)に女性が少ない現状に対する対策を考える上で有効ではないかと考えます。
o 加速プログラムの話を2機関聞くことができた。

* パネルディスカッションについて

o "リーダーとは"皆さんの思い描くリーダー像を知ることができた。興味深かった。
o リーダーとはというメッセージが印象的だったです。
o 女性研究者支援,育成を実行するにあたって、具体的な素直な問題,取組みが知り得て、またこれを実行するにあったての考え方,姿勢が理解できた。
o フロアからの意見も聞けてよかった。

* 感想・意見など
o ご盛会何よりでお疲れ様でした。充実した講師の人選で内容も有益であったと思います。
o 育児休暇を取るのが良いという風潮は多いですが、実際自分が子育てをするにあたっては、産休後すぐに安心してあずけることのできる施設がある方がはるかにありがたかったです。そのように考える人に向けての対策もNECなどでは取られているという情報は良かったです。
o 男女の差なく、定年後でも活躍している方の考えも重要。(アドバイザー役は出来るはず)
o キャリアUP支援のためには、女性をピックアップさせ、責任を持たせるべきである。
o 研究に興味があっても、研究者を目指すことは割に合わないと思って、研究を続けること(ドクターコースへ行くこと)をあきらめる学生が多い。ポスドクがたまっていることが最大の問題で、安定した研究職ポストを増やしていかなければ、優秀な学生に研究を続けさせ、優れた研究者を育てることはできないと思う。
o フロアとの意見交換の時間もあって有意義だった。
o 女性の活用についてはよくわかったが、その研究者活用のための支援の具体策を知りたい。
o 女性比率の向上のためには、北大、九大のプランはいずれも効果的と感じたが、大学や学部のアクティビティを維持/向上させながら女性を増やすためには、通常の採用枠で採用される人(おそらく男性)よりも優れた女性をリクルートしてこなければならず、母数が少ない故に絶対数も少ない。そのような優れた少数の研究者(PIレベル)の大学間での取り合いでおわるのではないかという心配を抱きました。
o 全体の中身、立場等もバランスがとれていて、とても良かったと思います。
o 素晴らしい企画でした。DVDで販売するなど、今回参加できなかった方々にも聞いて欲しいと思います。
o 男女共同参画について沢山の学びと考える機会を与えて下さりありがとうございました。


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