本日この栄えある日を迎えられた日本大学危機管理学部第一期生の皆さん、ご卒業おめでとうございます。はやいもので、危機管理学部がこの三軒茶屋の地に呱々の声をあげた20164月から4年が経過し、皆さんを送り出す時がやって参りました。エントランスを彩る桜の樹々も、皆さんと同じように一回り大きく成長し、満開はまだこれからとはいうものの、日本大学の校章の花であり、日本国の花である桜も、皆さんの旅立ちに花を添えています。

日本大学が創立130周年を記念して創設したこの学部は、日本で初めての法学をベースとした文系の危機管理学部であり、皆さんはこの新しい学問領域に積極果敢にチャレンジしようとして進学してこられました。研究者教員と実務家教員という先駆的な教員構成でスタートしたこの学部での学びは、皆さんの知的好奇心を十分に刺激することができたでしょうか。

この4年間、大学、日本そして世界にとっても危機管理の重要さが問われる事象が続発しました。皆さんが入学した20164月には熊本地震が発生し、甚大な被害をもたらしたのは記憶に新しいところです。入学早々の大地震発生は、中南海トラフ地震や首都直下型地震のリスクを考えるきっかけともなったことと思います。そう、スポーツフェスティバルは中止になりました。しかし、それにもかかわらず、その翌年、後輩たちのスポーツフェスティバルを一生懸命に支えてくれた姿は忘れません。

2018年には大阪北部地震と北海道胆振東部地震と大地震が続きました。集中豪雨や台風は連続して毎年発生しており、全国各地で甚大な被害が発生し、鉄道などの大規模な計画運休が全国的に実施されました。いまやこの計画運休は危機管理の一般的手法の一つとなっているといえます。

振り返ると危機管理の教訓に満ち溢れた4年間であったと思います。そして新しい経験との出会いの毎日であったことと思います。すべてが新しいこのキャンパスで、皆さんの前に道はなく、皆さんが中心となって道を切り開いてきました。このような、フロンティア精神に満ちた第一期生を送り出すための式典や祝賀会の準備を進めていたさなか、新型のコロナウイルスの問題が発生し、すべてが中止のやむなきに至りました。

日本大学の田中理事長、大塚学長そして日本を代表する危機管理の専門家の皆さんをご来賓としてお招きし、華々しいスタートを切った皆さんの学生生活は、今日で終わりを告げます。皆さんの4年間の締めくくりを、このように簡素化された学位記伝達式で迎えることは残念であり、無念でなりません。

皆さんも同じ思いだと思います。

しかし、皆さんが4年間学んできた「危機管理学」の立場からは、やむを得ない結論であることもまた皆さんは理解していると思います。

いま世界は新型のコロナウイルスと戦っています。危機管理学の目標でもある「未知なるもの」との遭遇とそれへの対応が現実に世界中で展開されています。現在各国が採用している危機管理・対応の手法は、国の体制などによっても大きく異なります。どのような対応が正解であったのかは、この問題が収まってからの国際的な分析・検討に委ねられることになります。

世界中はコロナウイルスのために騒然としており、経済の先行きは不透明で、皆さんには順風満帆の航路は約束されておらず、怒涛逆巻く大海が待ち受けています。

日本大学危機管理学部の栄えある一期生であることを誇りに、その荒海に向かって、慎重かつ大胆に漕ぎ出していってください。

自主創造の精神を体得し、フロンティア精神に満ち溢れた皆さんであれば、いかなる苦難も乗り越えることができると信じます。そして、元気な姿をホームカミングディで見せてください。楽しみにしています。

一期生の皆さん、皆さんは私たちの予想をはるかに超える大きな宝を後輩たちに残してくれました。その貢献に心から敬意を表します。

本当にありがとう。

輝かしき一期生の行く手に光あれ!

Bon Voyage! 諸君のこれからの人生航海に幸多かれと祈ります。


                                      令和2年3月25日

                                         危機管理学部長

                                             福田 弥夫