日本大学危機管理学部

RESEARCH研究情報

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研究所について

研究所概要

「危機管理」という言葉や概念は,1995年の阪神淡路大震災と地下鉄サリン事件という社会的危機に見舞われた中から広く認識されるようになりました。しかし,常に大規模災害や犯罪,テロ,安全保障上の脅威に迫られ,その場しのぎの対応に追われてきたことは否めず,東日本大震災(2011年)に伴う原発事故では,危機を管理し,コントロールする立場の人々から,「想定外」という言葉が発せられてしまいました。
このため,戦争や災害,犯罪やテロ,サイバー攻撃や情報流出など危機が多様化する現代社会において,想定外をなくし,自ら主体的に危機管理を考えることのできる人材の育成を目的に,2016年4月,日本大学危機管理学部が誕生し,その年の12月,多様な危機と向き合う研究機関として「危機管理学研究所」が設置されました。
研究所の事業では,新しい学問領域である危機管理学を深化させるため,研究所員の研究成果を中心に,17年3月に創刊された機関誌「危機管理学研究」に掲載するとともに,シンポジウムの開催などを通じて,幅広い層の方々に,危機管理の重要性を伝え続けることにしています。

沿革

2016年12月
日本大学危機管理学部に危機管理学研究所を付置

研究所長のご挨拶

私たちの危機管理学研究所は、あらゆる危機事態に対応することができるオールハザード・アプローチを採用した新しい「危機管理学」に基づく世界でも珍しい研究所です。
新型コロナウイルスのような感染症パンデミック。ロシア軍によるウクライナ侵攻に代表される戦争紛争に関わる国際安全保障。世界的な気候変動がもたらす環境危機。南海トラフ巨大地震や首都直下地震のようにいつ発生してもおかしくない自然災害。エネルギー安全保障にも関連する原子力発電所事故などの大規模事故。テロリズムや弾道ミサイルのような国民保護事案。毎日の生活に欠かせないネットやSNSで発生するデジタルリスクや情報セキュリティの問題。こうした多様なリスクに囲まれて、現代人の私たちは生活をしています。
こうしたリスクに対して最先端の科学技術や社会制度によって危機を管理することで、その新しい科学技術や社会制度が人類にとって新たな危機を生み出し、脅威となる過程を、ドイツのリスク社会学の祖、ウルリッヒ・ベックは「再帰的近代化」と呼びました。現代の人類は、この再帰的近代化の過程の中で、危機管理を永遠に繰り返すプロセスに入ったとみなすことができます。いかにして人類は「自由・人権」の価値を守りながら、それらとトレードオフの関係にあるといわれる「安全・安心」を高めていくことができるか、危機管理学のリベラル・アプローチが求められています。
この危機管理がもたらす課題について、法学を中心とした政治学、社会学、経済学、心理学などの社会科学的アプローチを政策科学として学際的に横断した新しい学問体系が危機管理学です。この危機管理学の理念や学際的アプローチを構築し、それを社会に実装することによって社会貢献につなげることがこの研究所の使命です。世界とつながり、地域に根を張り、産官学の連携を構築して、社会貢献のための危機管理学を実践する研究プラットフォームがこの危機管理学研究所です。さまざまな立場にある皆様と連携して、幸福な社会の実現のために邁進してまいります。

危機管理学研究所長 福田 充 教授