向選手は常々「恩返し」という言葉を口にする。それは、紆余曲折があった柔道人生を支えてくれた家族、恩師、チームメイトなどへ、感謝の気持ちを最高の結果で伝えたいから。初めての五輪に臨むにあたり思うことはただ1つだけ、「金メダルを獲って恩返しをしたい」。

2020年に東京五輪代表に決まった時は、「これでやっとスタートラインに立てたな」というのが実感でした。多くの方々にお世話になってここまで来れたことに感謝の気持ちが溢れ、一人一人の顔が浮かんできました。
五輪の延期が決まった時は、むしろ準備期間が増えたことで、自分の改善点を立て直すいい機会にしようと気持ちを切り替えました。ただ、2020年はコロナ禍で練習制限や試合がなかったこともあって、試合ができるようになっても実践感覚を取り戻すのに時間が掛かりました。その分は練習量の多さでカバーしようと思いやってきましたが、久しぶりの試合となった今年のワールドマスターズでは正直、体が思うように動きませんでした。自分の柔道の感覚が戻らないまま終わってしまった感じです。それでも試合ができたことで自分の現在地を確認できたことは大きかったと思います。
2021年4月のGSアンタルヤも思うように戦えませんでしたが、続くアジア・オセアニア選手権は2試合を投げ技で勝って、決勝に進むことができました。
決勝の相手のボボノフ選手(ウズベキスタン)は五輪でも優勝候補の1人ですし、相手として苦手なタイプだったので、結果は負けてしまいましたが本番前に戦うことができたのは収穫だったと思います。いつもそうですが、自分は負けた試合での感覚が次戦で活きるタイプなので、今回の敗戦で得たものを糧に、しっかり修正していきます。
五輪が近づいてきましたが、本番までまだ2ヵ月ほど時間があるという感覚でいます。その間に改善点を修正していくと同時に、自分の良いところに磨きをかけて本戦を迎えたいと思っています。
東京五輪では、ただ「金メダル」だけを見据えています。支えてもらった方々へ恩返しできるように、母校日大の誇りを持って戦うつもりです。

プロフィール

Shoichiro MUKAI ​[むかい・しょういちろう]

1996年生まれ。富山県出身。高岡第一高卒。2018年法学部卒。綜合警備保障(ALSOK)所属。'14年と'15年に全日本ジュニア体重別選手権を連覇。'17年全日本体重別選手権90kg級で初優勝し、その後も講道館杯優勝など活躍。'18年2月のグランドスラム(GS)パリで国際舞台初優勝を飾ると、11月のGS大阪でも優勝。'19年は体重別選手権で優勝、GSブダペスト準優勝、世界選手権準優勝。'20年2月のGSデュッセルドルフでは銅メダル。その後、実績が評価されて東京五輪代表に選出された。 得意技は内股。