日大のDNAインタビュー 恩田英治 氏

よこはま動物園(ズーラシア)飼育展示第二係長・医療係長(農獣医学部〈現・生物資源科学部〉獣医学科卒)

卒業生
2021年03月26日

絶滅の恐れがある希少動物をできるだけ多く繁殖させ、保全につなげることが、この動物園の使命です。

よこはま動物園(ズーラシア)は、横浜市が持つ国内最大級の動物園。絶滅危惧種を中心とした、約100種750頭の動物を飼育している。本来の生息環境を模した風景の中で、動物の生息地での姿に思いを巡らせることができる。園内の広さは、東京ドーム10個分に相当する45ヘクタール余り。観覧しやすいように、世界の地域・気候帯別に区分してある。樹木や草花など植物も豊富だ。レストランや売店、子どもの遊び場などもあり、家族連れが一日中楽しめる。バスで園内を巡ることもでき、毎年約100万人が訪れる。恩田英治氏は、園にとって不可欠な飼育員や獣医師らを束ね、動物の保全等に多大な貢献をしている。

―普段のお仕事の内容を教えてください。

恩田 絶滅の恐れがある希少動物をできるだけ多く繁殖させ、保全につなげることが、この動物園の使命です。そのためには、動物を健康に飼育管理すること、適切な飼育環境を提供することが重要となります。そうすることは動物たちの自然な行動を引き出し、来園者に喜んでもらうことにもつながります。

そのため私は、70人の飼育員や4人の獣医師らとともに、さまざまな問題の解決に当たっています。また繁殖のために、国内外の他の動物園との間で、動物を預けたり引き受けたりすることが頻繁にありますので、その調整などもします。今後、このような動物園間のネットワークがさらに重要になると考えていますので、より良い関係づくりには気を配っています。

―心掛けていることは何ですか。

恩田 動物園を存続、発展させるために、お客さんが楽しい時間を過ごし、再訪してくれるような場所になることが重要と考えています。動物たちに対しても「動物福祉」の視点を常に忘れず、現状が動物の生息に適した環境になっているかどうかを考え、改善の努力を怠らないようにしています。

例えばゾウの放飼場は、本来の生息環境を考えて、床面に土を敷いてあります。清掃のしやすさなどからコンクリート床が選ばれることが多く、当園でも獣舎の内部はコンクリート床になっています。そのため現在、ゾウの弱い足の裏を保護できるように、床に砂を敷く工夫をしています。

インタビューを受ける恩田さん

恩田英治(おんだ・えいじ)
1974年 甲府市生まれ
1993年 日本大学農獣医学部獣医学科入学
1999年 同学科卒業
2005年 横浜市入庁、同市立野毛山動物園に配属
2008年 同市繁殖センターに配属(所長)
2011年 同市環境創造局動物園課に配属
2015年 同市立金沢動物園に配属(飼育展示第二係長)
2019年 同市立よこはま動物園に配属(飼育展示係長兼医療係長)
 

―働きがいがありそうですね。

恩田 私が生まれ育った山梨県甲府市の実家近くに、国内で4番目に古い歴史的な動物園があり、子どもの頃からよく足を運んでいました。動物好きというより、そこの平和で穏やかな雰囲気が、心地よかったからです。その後、動物園で働きたいと思い始め、日大の農獣医学部(現・生物資源科学部)獣医学科で勉強して獣医師になりました。それから民間動物病院の勤務を経て横浜市職員になり、このズーラシアを含む市内3カ所の動物園で、獣医師として働いてきました。当然働きがいはありますし、このように働けること自体が、幸せなことだと思っています。

―日大での学びは、今の仕事にどう生かされていますか。

恩田 獣医師の資格を取得したことが、動物の健康管理に携わることにつながっているわけですから、日大での学びは全てが大変に貴重でした。6年制の獣医学科の後半3年間は、臨床繁殖学研究室に所属し、多くの先輩や企業、酪農家といった多くの関係者とつながりを持ち、人間関係を大事にすることも学びました。それが今でも、大いに役立っています。

―日々の学生生活はいかがでしたか。

恩田 前半の3年間は、獣医師の資格取得を意識して、真面目に勉学に励みました。自由な時間も多かったので、趣味である映画鑑賞もよく楽しんでいました。研究室での3年間は、獣医療の勉強や人間関係のほか、臨床繁殖学の研究に関連する事柄に、たっぷりと時間を割きました。例えば乳牛の乳を材料にして、細菌の検査をしたり、乳牛に多い乳房炎の改善について研究したり。研究材料である乳牛の乳を採取するために、キャンパスのある神奈川県藤沢市から茨城、千葉県の酪農家の所までよく出かけました。

また、研究室では研究用の牛、馬、犬を飼っており、4~6年生の研究室メンバー計20~30人のうち、主に4年生が中心になって、交代で世話をしていました。

―日大の魅力はどこにあると思いますか。

恩田 各学部とも他大学と比べて、設備が充実しており、勉強する環境はかなり快適だと思います。生物資源科学部だけ見ても、キャンパス内や近隣地、全国各地に多くの施設があります。特に農場や演習林、臨海施設など、自然の中での体験学習の場となる施設が整っています。私が在籍していた農獣医学部の頃は、2年生の夏休みに、北海道へ牧場実習に行く機会も与えてもらいました。研究室に入ってからは、2週間ほど海外研修に参加するなど、実に多くの勉強をさせていただきました。

社会に出て仕事をする上では、いろいろな考え方を持つ人たちときちんと議論できることが大前提。 コミュニケーション能力は必須です。

―後輩へのメッセージがあれば、お願いします。

恩田 私は2010年から現在まで、生物資源科学部の獣医学科で、非常勤講師として野生動物学の講義をさせていただいています。昨年はコロナ禍のためオンラインという形で、全く学生の顔を見ずに終わってしまいましたが、毎年、最終講義の時に学生に伝えていることがあります。それは、社会に出て仕事をする上では、いろいろな考え方を持つ人たちと、その意図を理解してきちんと議論できることが大前提になる、ということです。コミュニケーション能力が必須であるということです。恵まれた環境を十分に生かして、獣医療の勉強に限らず、さまざまなことを学び、いろいろな経験を重ね、多様な価値観を身に付けてほしいと思います。

よこはま動物園(ズーラシア)の園内地図の前で

よこはま動物園 ズーラシア

〒241-0001 横浜市旭区上白根町1175-1
TEL 045-959-1000

開園時間 9:30~16:30(入園は16:00まで)
休園日 毎週火曜日(祝日の場合は開園し、翌日休園)
アクセス 相鉄線「鶴ヶ峰」駅北口、相鉄線「三ツ境」駅北口
     JR 横浜線・横浜市営地下鉄「中山」駅南口下車
     各駅から「よこはま動物園行き」のバスで約15分
URL 
http://www.hama-midorinokyokai.or.jp/zoo/zoorasia/