プロペラ機で43日間世界一周を達成

Aero Zypangu Project代表 前田伸二氏(2002年理工学部航空宇宙工学科卒)

卒業生
2021年08月02日

本学理工学部航空宇宙工学科卒業生の前田伸二氏(2002年卒)が、プロペラ機による単独世界一周飛行に挑戦し、見事達成した。
5月1日にアメリカ・ワシントン州にある空港・ペインフィールドを出発。6月上旬には日本上空に到達し、韓国、ロシアを経て、6月11日(現地時間)に出発地に帰還。43日間、18カ国の旅を終えた。
自身のSNSで「安全に、そして無事に帰還できたのも皆様のお陰です。本当に応援いただきましてありがとうございました。今後も、夢を抱く大切さ、そしてその難しさを講演活動を通じて皆様にお伝えできればと思っております。この度は本当に応援いただきましてありがとうございました」(Facebookの投稿より引用)と、今回の挑戦を報告し感謝を綴った。

渡米して師と出会い、見えた光明

ここまでの道のりは平坦なものではなかった。パイロットを目指し本学理工学部航空宇宙工学科に入学してから2カ月経ったある日、交通事故に遭い片目の視力を失った。それでも退院後、毎日3時間の睡眠で必死に勉強し大学を卒業。せめて航空に携わりたいと、単身渡米した。

そこで一生の師となるエンブリー・リドル航空大学大学院の教授と出会い、前田氏と同じ身体的条件でフライトしている人がいること、アメリカでは一定条件を満たせばパイロットになれることを知った。

そして、事故から18年目の2016年6月、念願の事業用操縦士免許を取得。夢を叶えた。

コロナ禍の壁を乗り越えて

行く先々で講演を希望し、日本でも複数地点で停泊予定だったが新型コロナウイルス感染防止のため、中止せざるを得ない状況になった。それでも日本上空を飛んでいる際、前田さんの母校・日本航空高等学校の系列校である日本航空高等学校石川を上空から撮った写真が自身のSNS上がり「一人や二人の子どもたちの心に僕の想いが刺さるはずだと信じて飛びました」と綴った。

さらに、故郷である北海道の新千歳空港に給油のため一時停泊。フェンス越しではあったが駆け付けた家族と会うことができた。

現在、仕事を続けながら、自身の経験を伝えたいという思いで2018年に設立した非営利団体Aero Zypangu Projectの代表を務める。「夢を持つことや人を愛することの大切さを伝える」ために、自身の経験をもとに講演活動を行い、2008年から始めた活動は2019年の春には100回を超えた。

今回のフライトで目的にあげた「夢と希望の拡散」。その思いを翼に込め、家族や仲間など多くの支えが風となり、成功をつかんだ。

単独飛行で世界一周を達成した139人目のパイロットになった前田氏。Aero Zypangu ProjectのHPには「Impossible is now "I'm possible"」とメッセージが記されている。

<プロフィール>

前田伸二(まえだ・しんじ)

1979年7月31日生まれ。2002年理工学部航空宇宙工学科卒。北海道十勝出身。本学卒業後、渡米。アリゾナ州のエンブリー・リドル航空大学で航空安全危機管理を学ぶ。在学中の2004年にパイロットとしての訓練を始め、2005年に単発・双発計器飛行付自家用操縦士免許を取得。2016年には念願の事業用操縦士免許(コマーシャル・パイロット・ライセンス)を取得。非営利団体 Aero Zypangu Project代表。ボーイング社で生産管理などの業務を兼務。