環境が育む無限大の可能性

藤沢の小・中・高・大学一貫教育
日本大学藤沢小学校 加藤隆樹 校長

付属校
2020年11月26日

創立6年目。この春、ようやく全学年が揃った藤沢小学校は、本学生物資源科学部の敷地内に位置する。本学の130周年記念事業として、「自主性と創造性の芽を育む」の理念に基づいた初等教育と、その後の中・高・大学までの一貫教育を目的に、学校法人日本大学が初めて設置する小学校として設立された。

夏になればクワガタやトカゲ等を採ってくる児童。緑に囲まれた立地はもちろん、大学の有する施設を目一杯に使えるのが魅力だ。「子どもたちをのびのびと育てられます」、と加藤隆樹校長。藤沢高等学校・藤沢中学校、生物資源科学部、農場、バラ園、博物館と、恵まれた環境を生かした藤沢小学校の教育について聞いた。

コロナ禍の「縦割り遠足」は敷地内で

新宿駅から小田急線で1時間ほど。六会日大前駅を降り、生物資源科学部のある日大湘南キャンパスの奥まで進むこと10分、藤沢小学校に到着する。

コロナ禍で学校行事が思うように開催出来ない中、9月末に遠足を実施。従来はバスで移動する遠足を行っていたが、「何か普段の遠足とは別の目線で子どもたちの思い出になることができないか」と考え、初めて今年は大学、高等学校、中学校の敷地内で行う遠足に切り替えた。

「農場でトラクターに乗せてもらったり、学科によってはドローンを飛ばしてくれました」

外へ行かずとも敷地内で体験できることが沢山あり、十分に遠足ができることが分かった。

遠足は1~6年生が均等に複数の班に分かれる「縦割り」で実施。

高学年主導で企画を進め、休憩場所や時間、コースを自分たちで考えた。総合の時間を利用して先ずは6年生が計画したコースを下見。次に6年生が5年生へ注意すべきところを説明しながらコースを回った。

近い学年と話し合い事前に準備をすることで、低学年の児童も無理なく行動し、高学年の児童と一緒に楽しめる遠足を目指した。

低学年からは「すごく楽しかった」「お兄さんやお姉さんと話せてうれしかった」という声を聞き、思わぬ発見があったのは遠足が終わってから。高学年と低学年が一緒に登下校する姿が見られ、交流が増え学校は賑やかになった。

目指すのは自分で考えて行動できる子

藤沢小学校では「大学の理念『自主創造』の前段階で土台をつくるために自主性と創造性を掲げています」

その上で加藤校長は、
「まずは挨拶ができるように。挨拶が人と人の架け橋になる」
「相手を思いやる気持ちを持とう」

この二つを伝え、

「真っ直ぐな気持ちを持った愛される人になってもらいたい」と語る。

学校生活の場面で児童の自主性が現れるのは廊下に設置されたロッカーだ。

限られた休み時間の中で、次の授業の準備をスムーズに行うために必要なのが整理整頓。

特にロッカーを上手に使えるように、子どもによっては自分で段をつけるなど工夫し、よくできている児童には先生から「笑顔マーク」が貼られる。

「児童のモチベーションにもなり自主的に考え行動することができるようになってきています」と、効果が出ている。

恵まれた環境だからできる連携教育

藤沢小学校では、本学生物資源科学部の教授による特別授業を実施。動物や昆虫、植物を実際に「見て、触って、嗅いで、聴いて」五感の大部分を刺激する授業も行っている。

また、藤沢中学校の合唱コンクールに参加するなど積極的に交流する機会を増やしている。

ある時は、電車の遅延により迂回でしか学校へ行けず、藤沢小学校の児童が泣いていると、藤沢小学校の制服を見た藤沢中高の生徒が、声を掛け学校まで連れてきてくれたこともあった。同じnfマーク入りの制服に児童も安心して、無事に登校した。

「大学組織のスケールメリットを生かした人と接する機会や、多くの目で児童を見守ることができるところは、とてもありがたい。つながりの大事さを感じます」

小・中・高・大学までの恵まれた環境の中で学ぶ児童へ向け加藤校長は、

「無限大の可能性がある環境で、様々な経験を積んでいけるのは大事なことです。失敗することもあるかもしれません。それも生きていく上で必要なことだと伝えていきたい。新しい気づきにつながるから」

と想いを込めて話す。

来年3月には藤沢小学校初の卒業生が巣立つ。7割の児童が藤沢中へ進学予定だ。

いずれ中・高、生物資源科学部と進んだ生徒が、藤沢小学校の児童を見守り、手を引いている姿が見られそうだ。