【付属校の教育実践】
自主性と創造性の芽を育む

藤沢小学校

付属校
2023年05月24日

藤沢小学校は、広大な湘南キャンパスで中学生や高校生、大学生と一緒に過ごせる恵まれた環境にある。本学の教育理念「自主創造」を体現できるように「自主性」と「創造性」の芽を育むための種々の取り組みを進めてきた。

個性を大切にしながら、チャレンジする姿勢とあきらめない心を持たせる━。そのために基本的な知識を身に付けさせるだけでなく、心と体の健康や豊かな体験の提供を重視している。

自分で考えさせる

加藤隆樹校長

加藤隆樹校長

加藤隆樹校長は「6年間で少しずつ、自主性と創造性が備わっていけたらいいと考えています」と語る。どちらもすぐに身に付くものではない。「最初の一歩を歩ませることが大切です」

取り組みの基盤となるのが「縦割り活動」だ。各学年を赤と白に分け、その中で1年生から6年生までの児童が混在する十数人の班を構成する。

一つの班に3、4人いる最上級の6年生がリーダーシップを執る仕組み。遠足や運動会、文化祭、1年生を迎える会、6年生を送る会、宿泊体験などさまざまな場面で班単位の活動となる。

千田浩子教頭

千田浩子教頭

先生はあえて「こうしたら」といった提案は避け、児童が自分で考えることを促す。

「感覚的に動く低学年の子に、上の子がこれまでの経験をもとにやさしい言葉で気づかせてくれます。6年生になると成長が見て取れますし、下級生は頼もしい上級生にあこがれます。校内で素敵な関係が築けています」(千田浩子教頭)。

安藤麻優美教諭

安藤麻優美教諭

児童会主任の安藤麻優美教諭は縦割りを「自然と皆が仲良くできるシステム」と評価する。運営委員会などの様子から「周囲を見て譲ることができるやさしい子が多いです」という。

運営委員会は二十数人で構成され、6年生が委員長を務める。登下校中の電車のマナーや廊下の歩き方などについて話し合い、標語を作ってマナーを啓発する。

あるテーマで「ちくちく言葉」と「ふわふわ言葉」の議論になった。言われて傷つくのが前者で、傷つきにくいのが後者。「なるべくふわふわ言葉で啓発しよう」ということになったという。子どもの視線からの提案だった。

「わざわざ遠くから通ってくる私学なので、周りを見渡すアンテナが高い。こうした意識が早めに養われていると思います」

知的好奇心を刺激

教育目標の一つである「豊かな体験を通して学ぶ」にも藤沢ならではの利点が生かされている。

生物資源科学部の先生らが自身の研究を分かりやすく教える特別授業では、海の生物や森林、草花、昆虫、ヘビなどの話に児童の目が輝くという。学校案内の言葉を借りれば、「本物を知る」学びで知的好奇心が刺激されるわけだ。

特別授業の一環として4月下旬に行われた野外実習では、富士山をバックにした農場で、6年生がエダマメとトウモロコシの苗を植えていた。6月終わりから7月初めごろに収穫し、料理して実際に食べるという。

参加した山科天輝さんは「昨年は大根を育て、食べました。とてもおいしかったです。今年も収穫と料理が楽しみ。すぐ近くの農場でこうした体験ができるのは私立の良さだと思います」と話した。

鈴木大喜君は「葉っぱの様子などを観察したり、先生から話を聞いたりしました。とても分かりやすくて役に立ちました」。

耳が柔軟なうちに

読み書きと計算の基礎知識のほか、心と体の健康を増進させる観点から、国語と算数、体育の授業時間が多い。

英語教育にも力を入れる。公立では3年生から学習するが、藤沢小は1年生から体を動かしながら英語の「音」に触れる授業を設けている。

英語の授業は1、2年生が週に3コマ、3~5年生も3コマ、6年生は2コマだ。

井上聡太教諭

井上聡太教諭

井上聡太教諭は「耳が柔軟なうちから慣れ親しむことが大切です。本校では、スペルと発音の法則であるフォニックスを1年生から学びます」と私学の魅力を解説する。

ライティングの教えも独特だ。ABC順ではなく、形の似たものをグループとしてとらえ、文字をしっかりと書けることを目指す。

ネイティブの先生による全て英語でやり取りする授業は毎日。クラスの半数が英語教室に移動し、ゲームやクイズを通して楽しく学習している。

8月に3日間の語学研修を、12月には保護者を招いて英語の劇や歌、スピーチなどの発表活動も行う。

和やかな雰囲気に

卒業生の約半数が隣の藤沢中学校に進む。取材の日も複数の中学生が「お邪魔します」と言いながら後輩を訪ねてきていたが、英語に関しては他校出身者と比べ、抜きん出ているそうだ。

中高生と大学生が身近にいることで、小学生は将来のイメージがわきやすい。小学生がいることでキャンパス全体に和やかな雰囲気が生まれる。

小学校設立から9年目。まだ大学への進学者はいないが、生粋の藤沢育ちの日大生はどんな大学生になるのだろうか。今から待ち遠しい。