日本大学豊山女子高等学校
生徒たちを見守るシンボルツリー。切られることなく大きく成長した
日大豊山女子高は1966年の創立。5年後には早くも理系のスペシャリストを育てる理数科が設置された。理数科教育で50年以上の歴史を持ち、実験・研究に基づいた「探究」の精神を培ってきた。
教科と探究は「両輪」と話す黛校長。自ら探究のゼミも受け持つ
4月に就任した黛俊行校長は「教科学習と探究学習を両輪として、生徒一人ひとりの進路を考えます」と語る。
探究学習に力を入れるのは、大学進学の主流になりつつある総合型選抜への対応ばかりでなく、起業家精神を持った「世界に貢献できる人材」の育成を教育目標の一つに掲げているためだ。
探究学習に英語教育を組み合わせて一つのプログラムにしている点が大きな特徴と言える。
7年前にリニューアルされた「理数S」コースでは「理数探究」が必修。物理、化学、生物、数学から1分野を選び、少人数のグループでテーマを設定して研究する。年2回の発表会で成果を披露し、大学教員など専門家のアドバイスも受ける。
地震に強い構造をテーマに研究する生徒
3年生のクラスの授業を見学した。生物班のある生徒は「食品を使った接着剤」を研究しており、おもちゃなどへの活用を提案する予定だ。
物理班の生徒は「地震に強い構造」をテーマに竹串やストロー、ワイヤー等で実験を重ねた研究内容をタブレットで説明してくれた。
別の物理班の生徒は竹トンボについて研究、どうしたら長い時間飛ぶのか考察していた。
3年時には研究成果をまず日本語で論文にまとめ、さらに英訳して英語の論文に仕上げる。土曜1限に「学術英語」の授業があり、論文のスタイルや書き方を基礎から学び、分野別の基礎事項を英語で学ぶ。
研究成果をまとめた英語の論文。印刷した論文集も保存されている
学術英語を担当する杉田教諭
授業はネイティブの先生と2人で、基本的にすべて英語で進める。担当の杉田竜之介教諭は「自分が文系なので準備が大変ですが、化学の結晶化の実験で実際にキャンディーを作る授業は生徒に好評でした」と話す。
今後は天文学をテーマに取り上げ、星の名前や光の速さなどについて学習する予定だ。
国立大や他大を目指す「A特進」コースは、高2の秋に米国のボストンに修学旅行し、ハーバード大とマサチューセッツ工科大、ウェルズリー大の3大学と交流する。
世界で活躍する女性リーダーの育成を支援する現地の「LADYプログラム」に参加。英語中心の生活を4日間過ごし、最後にハーバード大生に英語でプレゼンテーションする。旅行前からプレゼンなどの準備に取り組むことが探究だ。
来年に向け高1の生徒が現在、バービー人形とリカちゃん人形を題材した異文化理解とジェンダー問題などを学習している。
日大への進学に対応した「N進学」コースの探究は「探究プラットフォーム」というプログラムで進められる。
研究スタイルはゼミに所属するか、独自でテーマを設定するかの二択。ゼミは10ほど開講しており「起業」「金融」は商学部との高大連携で実現した。企業の協力でドローンを活用した社会貢献を考えるゼミもある。
豊山女子の教員によるゼミで黛校長自ら「(豊山女子がある)板橋区の問題解決を探る」を担当している。
AI(人工知能)に詳しい文理学部の大澤正彦准教授が世話する「ゼミに入らない人のゼミ」も。共通テーマを設けず、一人ひとりの研究をサポートし、生徒は大学の授業にも参加するという。高大連携が具体的に進んでいる好例だろう。
「将来はゼミに他の付属校の生徒も参加したり、文芸コンクールや英語スピーチコンテストの『探究版』を催したりできればいいと考えています」(黛校長)
屋上スペースにハーブガーデンが作られている
昼食用のパンを求めて生徒たちが静かに並ぶ
校訓は「知性と敬愛~咲き誇れ 笑顔の花~」。校内を見学すると、屋上のスペースを利用して卒業記念のハーブガーデンが作られていた。茶道や華道の授業もあるという。
昼休み前にパンやお弁当を求めて生徒たちが穏やかに並んでいた。
生徒は皆「のびのびとやっています」と語る我妻教諭
女子校らしいところが随所に感じられるが、広報部主任の我妻等教諭は「学習でも部活動でも皆、のびのびとやっています」と語る。
「リケジョ」と呼ばれる理系女子の活躍への期待が高まる中、女子に別枠を設ける理系学部が増えてきた。
異性の目を気にすることなくのびのび活動できる環境でスペシャリストを育ててきた強みが注目されている。