【付属校の教育実践】
日大合格者が倍増
「三つの学校、一つの思い」

大垣日本大学高等学校

付属校
2024年08月30日

令和5年度の日本大学合格者数が163人と、前年度(76人)の2倍以上に伸びた。学部の重複などを除き、実際に進学したのは80人。卒業生約400人の5分の1が桜門をくぐった。

飛躍の背景には「日大愛」にあふれた教員の細かな指導がある。入学後まもなくの学部見学研修でモチベーションを高め、基礎学力到達度テストの準備を周到に進めながら、母体である「日大」へ目を向けてもらう努力を続けてきた。

古田健二校長も「日本大学への導きを使命としています」と明快だ。

日大を最初に見せる

進路指導主事の中筋教諭。「東の方を向いてもらう」ために努力を重ねた

進路指導主事の中筋教諭。「東の方を向いてもらう」ために努力を重ねた

進路指導について担当の中筋祐太教諭は「まずは東の方を向いてもらうことが大切」と力説する。

名古屋がすぐ近く、関西もそう遠くない地理的条件の下、付属校でありながら東京には「わざわざ」の感がぬぐえなかった。新型コロナの大流行も地元志向に拍車をかけた。

担任らと共に学部選択の幅広さや就職の有利さ、生涯賃金などについて地道な説明を続け、生徒にも保護者にも納得してもらっている。

生徒向けの目玉が学部見学研修会だ。「最初に見る大学が日大」とのコンセプトで1年の6月上旬に全員参加で実施している。

今回もA団、B団に分かれて、2泊3日で法、経、商、文理、危機管理、スポーツ科学、芸術、生産工の7学部と、国公立の代表として東京大の本郷キャンパスを訪問した

学部見学研修の一コマ。生産工学部で説明を受けた

学部見学研修の一コマ。生産工学部で説明を受けた

本学の全学部に見学を打診しているが、受け入れ態勢や旅程の関係などで絞らざるを得ないという。芸術や文理では授業に参加し、文理の学生はボランティアで構内を案内してくれた。

学部見学研修には必携の「しおり」がある。研修の目的や日程が詳しく記してあるほか、研修の内容などを綴れるメモ欄も。ある生徒は見学した感想を丁寧に書いていた。

最終日は恒例で東京ディズニーランドに寄る。「学びだけでなく、楽しさも加えようと企画しています」(中筋教諭)。

宿泊先もディズニーランドの近くに設定。費用を抑えるため、ランド玄関口の商業施設で夕食を自由に取る形式にした。将来はグループごとに電車を使ってキャンパスを訪ねることも検討している。

文・理選択容易に

研修のフォローアップ授業を見学した。1年各クラスで、見学した学部の概要や特色を振り返る。月末の文化祭(青垣祭)での発表に向け、模造紙に研修成果をまとめていた。

1年10組の教室では教育実習中の卒業生が文理学部について「文系と理系が併存する珍しいキャンパス」などと説明していた。

実際に自身が通う学部について「生の声」を聞くことができた。

1学年主任の竹中城史教諭は「直接自分の目で大学と学部を見て、進路を考える機会を与えるのが研修の趣旨。皆、刺激を受けて帰ってきます」と話す。

受験に向けて文系と理系に分かれる際も、学部を具体的にイメージできるため、比較スムースに選択が進む。

研修の効果について話す竹中教諭。1学年主任として率いた

研修の効果について話す竹中教諭。1学年主任として率いた

「日大フェスティバル」と名付けた学部説明会も年2回行っており、7月には理工の関係者が来校して、法と国際関係がオンラインで行う予定。理工と国際関係は研修で行けなかった学部だ。

全学統一や共通テスト併用、総合型選抜など複雑な受験形態については、保護者に対する説明会も実施している。

進学実績について古田校長は「付属校の中ではまだまだ。早く追いつきたいと考えています」と慎重だが、中筋教諭は「いい流れができてきています。日大合格者数を200人、250人と伸ばしていきたい」と意気込んでいる。

大垣日大高は部活動も盛ん。運動系では硬式野球部やバレーボール部、柔道部、レスリング部、相撲部など全国的に活躍する部は多い。付属校のスポーツ大会参加等を通じて「日大に進学して高いレベルで競技を続けたいと思う生徒も多くいます」(男子バレーボール部監督も務める竹中教諭)という。

3年後も7年後も

総合進学コースは本館、特別進学コースは南館、アカデミーコースは西館と生徒は3年間、コース別に異なった校舎で過ごす。人工芝のグラウンドを囲んでまるで三つの学校があるようだが、古田校長は「思いは一つ。3年後、7年後を見据えた教育を実践しています」と語る。

「大学を出るまで見てますよ」プロジェクトでは、大垣市を中心とした西濃地区の有力企業関係者が、大学卒業後を視野に入れて生徒との相談に乗る。

3年後、7年後を見据えた教育活動を行っていると語る古田校長

3年後、7年後を見据えた教育活動を行っていると語る古田校長

日大への導きを重視するのも、地元志向に配慮した将来設計を支援するのも、生徒と保護者の満足度を高めてもらうためだ。

古田校長は常々「教職員の寄り添いを大切に、人間力をつけ、生徒の自主的な学習習慣につなげ、ここを選んでよかったと言ってもらえる学校にしたい」と考えている。

「教員に高い教育理念を説くより、ともにチームとして楽しくやっていきたい」という古田校長の思いに、3分の1が大垣日大高の卒業生、半分が日大卒という教員が応えている。