日本大学第一中学・高校
ビルに囲まれる都会の学校。交通の便に恵まれている
日大一中・一高は付属校であるメリットにさらに地の利を加え「実りある高大連携」を実践している。
穏やかな表情で教育目標を話す青木校長
中央・総武緩行線で理工学部や歯学部がある御茶ノ水と、法学部と経済学部がある水道橋にもダイレクトにつながり、放課後を利用して実習型と受講型の連携授業に参加できる。
4月に就任した青木義男校長は前理工学部長。「社会に出て通用する人材の育成を目指しています。まずは生徒の興味・関心を引いて、それから体験や実験を通して学ぶことが大事」と語る。
やりたいことがまだ明確でない生徒への動機付けとして有効なのは、学問の第一線にいる大学教員らから直に話を聞くことだろう。
校内にある大掛かりな「フーコーの振り子」の装置
青木校長は学部長時代の横のつながりを駆使し「面白い話や実体験」を聞かせる機会をできるだけ多く作りたい意向で、7月には「ドラえもんをつくる」で知られる文理の大澤正彦准教授を招いた。
生徒の興味が膨らめば、大学の学びに触れさせるという連携が円滑に動きだす。
理工学部との実習型学習では週に1回程度、学部に通い研究に取り組む。プラズマ物理学が専門の浅井朋彦教授と小林大地助手の下で光や磁場などについて学習を深める。
「フーコーの振り子」を製作し、地球の自転を観測する研究も定番。装置は校内に設置されており、鉛の球をつるす「糸」の長さは約21mと国立科学博物館のものより長いという。
理工との連携学習は中3から高2が対象。希望者を募り、ガイダンスを行った上で参加者を決める。毎年10人程度が参加し、2年連続で手を挙げる生徒もいる。
夏休みには、プラズマ研究の班は船橋キャンパスの設備を利用して本格的な実験も行う。
8月29日の実習では「プラズマ理工学研究室」でプラズマ生成設備を見学し、大学院生の説明を受けながら実験のデータ解析に挑んだ。半径6センチ、幅40センチほどのプラズマが発生した瞬間の光もしっかりと目に焼き付けた。
プラズマ生成装置の説明を小林助手から受ける生徒
30日には別のプログラムを使って光を計測、プラズマの温度や速度を調べた。参加した6人の半分を占める高2生は「データ解析によってプラズマの大きさや形が分かるのはすごい」「院生に丁寧に教えてもらい、大学の研究に触れることができた」と感想を話した。
大学院生の手ほどきで実験のデータ解析を体験した
理工以外でも高1・高2を対象に医学部と薬学部での実習を夏休みに実施している。医では手術室に入ったり手術道具に触ったりして医学生ライフを体験。薬ではアスピリンの合成に挑戦した。
理工の連携学習を担当する平山教諭
いずれも実習成果は文化祭や発表会できちんとプレゼンするのが決まり。理工との研究成果は日本物理学会のジュニアセッションでも発表しており、担当の平山泰行教諭は「要綱やスライドなども自前で作り、大学生と同じレベルで発表しています」と胸を張る。
受講型の参加者は放課後に法、経済の学部に移動し、大学生と共に講義を聴く。前・後期交替制で、リポート審査に合格すると大学進学後の履修単位として認定される。
ウェールズ研修について話す鳩山教頭
国際理解を深める教育も進めている。中2で福島のブリティッシュヒルズ、中2・中3はオーストラリアで研修を実施。高校生はこれまで選抜制の英国ケンブリッジ大学語学研修のみだったが、今夏から独自にウェールズでの研修を始めた。
現地の語学学校で本場の英語に触れる。「語学ばかりでなく、現地の伝統や文化、日常の暮らしも体験します。オックスフォードも訪問しました」(鳩山高史教頭)。
英語の授業を見学したが、中2 Dクラスでは教科書の学習に入る前に、洋楽を紹介して英語への興味を高めていた。
英語の授業風景。洋楽で英語への興味を高める工夫が見られた
コロナ禍を経て「学校らしい学校を取り戻したい」と青木校長は強調する。本校では生徒と教員の距離が近いといい、放課後には職員室前に設けられた長机で熱心に質問する生徒が多く見られた。
SNSを介した学校の情報発信にも熱心だ。ユーチューブやインスタグラムで生徒と教員の日常のやり取りなどがほぼ毎日更新されており、学校の様子を知ることができる。