日本大学三島高等学校
グローバル留学コースの授業風景。ネーティブの教員が2人で進行する
日本大学三島高校は、社会のさまざまな分野でリーダーシップを発揮できる人材の育成を目標にしている。キャッチフレーズは『NEXT!つながる、世界へ。』。隣接する国際関係学部の教育にじかに触れられる利点があり、国際交流も盛んなため、広く世界や文化を学ぶ機会に恵まれている。
キャッチフレーズについて語る竹中校長。自らも三島高出身で4月に就任した
竹中朝崇校長は「キャリア教育と高大連携、そしてグローバル教育を柱に据えています。語学力と同時に多様な価値観を身に付け、自ら考え行動してほしいと願っています」と語る。
学習指導要領の改訂を機に、目指す進路に合わせてクラスを総合進学、アスリート、アカデミック、グローバル留学(GL)の4コースに改編。高校生活の3分の1を海外で過ごすGLコース以外でも多彩な国際交流プログラムを展開している。
GLコースは改編前の「国際クラス」の延長線上にあり、語学を生かし、世界を舞台に活躍できる力を養う。今年、3学年(各16人が在籍)がそろった。
4週間のフィリピン語学研修と1年間のオーストラリア留学が課程に組み込まれている。渡航先で必要な単位も取れ、3年間で卒業できる。
オーストラリア・アデレードでの研修や生活についてまとめたポスターが掲示してある
1年の夏休みにフィリピン・イロイロ市の語学学校で、マンツーマンや少人数クラスのレッスンを通し「英語漬け」の生活を経験する。1日の学習時間は7時間に及ぶという。
長期留学の準備と位置付けられ、帰国して5カ月後の翌年1月には南オーストラリアのアデレードに出発。
集中研修を受けた後、5~6校の公立高校に分かれ、ホームステイしながら通う。ホストファミリーと触れ合い、現地のアクティビティーに参加して異文化を体験する。
オーストラリアでの研修、生活の様子はインスタグラムで適宜、発信している。長い間生徒を預ける家族もどのように過ごしているか知ることができて安心だ。
1年生授業では食物を当てるゲームも。目隠しして恐る恐る口に運ぶ
GLコースの授業を見学した。1年15組では英国とカナダ出身のネーティブ教員2人が全て英語で授業を進めていた。
taste(味)とtexture(舌触り、触感)を表す単語を出し合い、まとめとして教員が用意した食物を目隠ししてスプーンで味わい、当てるクイズを行った。楽しく学習が進んでいた。
早坂教諭がグローバル留学コース長を務める
隣の3年16組の授業は「英語コミュニケーション」。早坂知也教諭もネーティブ教員に加わり、将来のパートナー像について英語で話し合った。
「この科目は週6回で、うち2回はネーティブの教員との会話が中心です。3年時にも生きた英語に触れられます」(早坂教諭)。
1年生と3年生ではネーティブ教員の話すスピードも語彙もおのずと違ってくる。3年生はより自然に会話しており、研修の成果が確実に表れている。
将来は国際協力関係の仕事に就きたいと話す酒井さん
米国の大学への進学も視野に入れている鈴木さん
留学経験を振り返り3年の酒井瑚子さんは「語学が上達したばかりでなく、多民族文化に触れて世界観が広がりました。大学ではスペイン語を勉強し、将来は国際協力関係の仕事に就きたいです」と目を輝かせた。
同じく3年の鈴木幸聖さんは「海外の友達が増え、ポルトガル語に新たに興味を持ちました。米国の大学への進学を検討しています」と話した。
ともにGLコースに魅力を感じ、三島高への進学を決めた。
富士山の裾野に広がる敷地に建つ三島高。国際関係学部が隣接する
他コースの生徒にも米国オースティンのテキサス大学併設語学学校で学ぶ「テキサスプログラム」(3週間、45人)や、カリフォルニア州立マーセッドカレッジと提携した研修などが用意されている。
テキサスは20年続く伝統のプログラム。研修が終わるとアメリカ文化体験としてメジャーリーグ観戦やディズニーランド見学なども組まれている。今年は7月20日から8月7日の日程で行われ、ドジャーズ大谷翔平選手のツーベースヒットが見られたという。
マーセッドのプログラムは、来年3月からの予定を前倒しして今夏に開始した。じっくり1年間かけて勉強でき、高校卒業後はマーセッドカレッジに留学できたり、カリフォルニア大学など現地の大学へ編入できたりする仕組みが整った。
文科省の事業「トビタテ!留学JAPAN」に採択され、今年度は女子生徒2人がロンドンとハワイの語学学校で学んだ。
奨学金や留学準備金が支給され、「日本代表」として海外で経験を積むことができるため、人気は高い。一人は「ルッキズムをぶっ壊す」をテーマにロンドン留学を、もう一人は「フラダンスを究める」ではハワイ留学を、それぞれ厳しい選考をクリアし実現させた。
新型コロナ感染症の流行で海外留学が困難になって希望者も減り、高校生や大学生らが「海外に目を向けなくなった」との声が多く聞かれた。
大川教頭はかつて英語教員としてオーストラリア留学を引率した
しかし大川幸祐教頭は「本校の生徒は内向きになることなく、海外研修希望に手を挙げていました」という。殻に閉じこもらない積極的な気質は三島高の伝統だろう。
最近は物価高、円安の影響で研修・留学の費用が急上昇。ハードルは高くなった。
竹中校長は「保護者の負担軽減を図るため、提携先にパブリックの学校を選んでいます。また渡航先や研修内容の見直しなども適宜検討します」と明かす。生徒のチャレンジを後押しする姿勢に揺らぎはない。