芸術学部 創設100周年
芸術の各ジャンルで綺きら羅星ぼしのような逸材を数多く輩出し、独自の存在感を示してきた本学芸術学部。平成31年4月、100周年を見据え「日藝」発展の舞台となった江古田の地に再びキャンパスを統合、伝統を継承しつつさらなる飛躍を目指している。
①西棟の前で映画撮影の実習授業が行われている ②各棟に囲まれた中庭 ③新校舎・A棟。多人数の収容が可能な講義室やPC教室、ラーニングコモンズを設け、屋外にはテラスも
芸術学部の前身、美学科が法文学部(当時)に設置されたのは1921(大正10)年3月。誕生間もない同科の舵かじ取りを託されたのが「日藝の祖」といわれる松原寛だった。
京都帝大哲学科に学びながら、「象牙の塔」にこもることなく実社会での生きた思想の実践を模索していた松原は、芸術教育の基盤づくりに情熱をもって取り組んだ。その結果、個性を重んじ、自由でユニークな発想を育み才能を開花させるという、今に受け継がれる「日藝」の基礎が築かれることとなった。
「総合芸術の殿堂」を目指した松原の尽力により、「日藝」は紆余曲折を経ながらも発展を続け、1949(昭和24)年には学制改革の下、新制「芸術学部」となり、今日に至るまで多くの逸材を世に送り出してきた。
④~⑨各学科の授業のようす
⑩⑪各学科の授業のようす ⑫美術学科絵画コース版画専攻の作品展示 ⑬「松原寛先生は『日藝』を日本のすべての芸術を統合する存在にしたいと いう壮大な構想を抱いていた」と語るソコロワ山下聖美・文芸学科教授
その教育・研究の拠点としての役割を果たし、いわば芸術教育のパワースポットとして親しまれてきたのが江古田キャンパスだ。
1989(平成元)年に所沢校舎が開設され2キャンパス体制となったが、その後、再び江古田の地に教育・研究の場を集約しようとの機運が高まり、2019年2月に江古田キャンパス内に新校舎「A棟」が完成、大学1年から大学院博士課程までのすべての学年が江古田で修学できる環境が整えられた。
こうして始動した新生・芸術学部は本年、創設100周年を迎え、新たな時代へと一歩を踏み出した。
⑭A棟完成の際、芸術学部校友会から贈られた年表 ⑮ギャラリー棟越しに西棟を望む ⑯彫刻家・柳原義達による松原寛像。西棟1階に設置されている ⑰ギャラリー棟。学生たちの作品展示や教職員の研究成果を発信 ⑱100周年を記念した学生インスタレーション第1弾「結–musubi–」
100周年記念事業として注目されているのが「日藝ならではの産官学連携プロジェクト」だ。全国の自治体や企業とのコラボにより多種多様な取り組みが進行中で、斬新な発想によるユニークな試みも多く各所で話題となっている。
一方、長引くコロナ禍で日藝でも学ぶ意欲を取り戻せない学生たちが見受けられる。文芸学科のソコロワ山下聖美教授は、今こそ日藝の源流ともいえる松原寛の精神に立ち返るべきだとアドバイスする。
「さまざまな試練に立ち向かい、常に挑戦しつづけた松原先生の姿勢に学んでもらいたいと思います。自らの個性を掘り抜き、失敗を恐れずチャレンジを重ねることで道が開ける。これこそ日藝が他校に誇れる独自の価値だからです」