学生の理解向上を目指して
-教員の教え方公開-

生産工学部 応用分子化学科 藤井 孝宜教授
「基礎有機化学 (S)」

学び・教育
2022年01月24日

チーム基盤型学習、受け身にならない授業で理解度が向上

近年、授業の在り方が問われている。現場では、各教員が自身の科目に合った教育方法を創意工夫し、学生の理解向上を目指して日々努めている。それぞれの科目ではどのように学生と向き合い授業を進めているのか。その手法と実践にフォーカスする新企画「教員の教えるテクニック公開」。
第1回は、生産工学部・応用分子化学科の藤井孝宜教授の授業を紹介する。

生産工学部 応用分子化学科 藤井 孝宜教授

生産工学部 応用分子化学科 藤井 孝宜教授

有機分子の特性、分子構造など最も基礎的な知識を基に論理的な思考を学ぶ「基礎有機化学」。高校までの化学は公式を暗記して当てはめていくことが多かったが、大学では知識を基に自ら答えを導き出す過程が重要になる。

藤井教授は授業を進める中で、「公式に当てはめ、すぐに答えを欲しがる」学生の傾向を感じ取っていた。

「一方的に講義するやり方ではうまくいかない」と思った時に、授業を教える方法の研究会に学部から声が掛かり初めて参加。そこで「チーム基盤型学習(以下、TBL:Team Based Learning)」に出会った。
 

チーム分けと時間管理

表1 TBLの授業構成

表1 TBLの授業構成

授業前に課す準備学習の内容を基に、選択式の理解度テストを10分間実施。テストの成績が均等になるよう5人のグループ分けを行う。

このグループで理解度テストの正答を討議して導き出す。ここで重要なのがグループ分けと時間管理だ。グループは3人では少なく、5人を超えるとまとまらないため、5人が基本。3回討議をするとグループ内で貢献度の評価をつけ、その結果を基に藤井教授が新たなグループを組む。討議の時間も難易度により配分を変え、飽きさせないよう工夫している=表1。

一方的な講義との違いは、受動的に答えを教わるのではなく、討議で同じ目線の同級生と「なぜ」「どのように」答えを導き出すのかを考えることだ。

さらに能動的な授業形式を加速させるため、授業時のプリント配布を無くし、クラウド上に資料をアップした。学生は自らクラウドにアクセスして資料を見なければ授業についていけない。他にも、膨大な紙資源の無駄遣いを抑えることにもつながる。「授業態度だけではなく、資源にも意識を持ってほしい」と、社会人としての心構えも学ぶ。

結実と学生の反応

表2 基礎有機化学(S)の試験平均点の比較

表2 基礎有機化学(S)の試験平均点の比較

平成29年度からTBLを導入し、達成度確認試験と期末試験の結果を28年度の従来型の授業時とそれぞれ比較した=表2。

すると、従来の座学形式よりも、TBL導入後の平均点が上がっており、学習効果が高められたことが結果に表れた。

学生のアンケート結果には「他の授業でもチーム基盤型学習を取り入れてほしい」という声もあり好評だ。

<プロフィール>
生産工学部
藤井 孝宜(ふじい・たかよし)教授

近畿大理工学部卒。筑波大大学院化学研究科博士課程修了。富山大工学部助手を経て、平成16年に本学生産工学部専任講師、23年から教授。
研究分野は有機元素化学。