スポーツ実施率を上げるための、スポーツ用品のリユース提案で近藤ゼミが優秀賞を受賞

スポーツ科学部 近藤克之ゼミナール

学び・教育
2022年01月12日

日本のスポーツ政策やスポーツ産業を発展させるための施策についての研究を発表し、議論する場として2011年に発足したスポーツ政策学生会議。新型コロナウイルスの感染拡大の影響はありつつも、コロナに負けるものかと熱い議論が繰り広げられた。

その中で、本学スポーツ科学部の近藤克之ゼミナールの3年生がA、Bの2チームに分かれて参加。そのうち、宮川美月さん、角田茉祐さん、會田千枝さん、吉良優香梨さん、加納源太さんの5人のAチームが発表した「スポーツに特化したリユースサービス 〜グラティス実現のための実施案〜」が、その研究の有効性と将来性が認められ、優秀賞に輝いた。

「リユース」に着目してモデルを構築

一つ一つの課題を書き出し、スポーツ実施率を上げるための施策を学生たちは考え続けた

一つ一つの課題を書き出し、スポーツ実施率を上げるための施策を学生たちは考え続けた

「社会の課題をスポーツを通して解決する。そういうことを学んでいるし、それができる、という思考を持ってほしい」と指導する近藤准教授は話す。そうしたゼミナールの一貫として、スポーツ政策学生会議2021への参加を決めた。
参加するに当たり、どんな議題を持って研究を進めるかを話し合い、そこで決まったのがスポーツ実施率の向上だった。

スポーツ政策学生会議がスタートした2011年は、スポーツ基本法が施行された年だった。スポーツ基本法は、1961年に制定されたスポーツ振興法を全面改正し、スポーツに関する基本理念を含め、スポーツに関する施策の基本となる事項を定めたものだ。
その中にスポーツ実施率の向上が挙げられているのだが、10年たった今でも、あまり実施率は向上していないという。

「ではどんな仕組みがあればスポーツ実施率が上がるのかを、制度設計の面から考えてみようということで、今回のテーマが決まりました」(近藤准教授)
そうしてゼミナールの中で話し合っていくうちに、用具の話が持ち上がる。
「チームの1人がラクロスをやっていたのですが、道具が高価で始める人が少ない、という話が出たんです。それで道具をリユースしてはどうか、というところから一つの研究がスタートしました」(近藤准教授)

学生服などでは既にビジネスモデルとして確立されているリユースの世界。古本やリサイクルショップなども、リユースの一つである。
ただ、今回の研究の中でビジネスモデルとして確立できるかどうかまで考えていくと、膨大な研究量になってしまうので、ひとまずはボランティアベースで仕組みを作り上げること、そしてそもそもリユースの需要があるのかということをテーマに進めることとした。

そして完成したのが、「スポーツに特化したリユースサービス 〜グラティス実現のための実施案〜」である。ビジネスモデルして継続していくための課題は残るものの、利用したいという人がアンケートで80%を超えるなど、今後発展性があることを証明したことが評価され、今回の優秀賞受賞に至った。

学生ならではの自由な発想

Aチームとともに、別の研究を進めていた栗原里菜さん、鈴木美紗都さん、間正雄太さん、山口祐菜さん、吉岡里佳子さんのBチームは、「空き家を活用したスポーツ実施率の向上を目指して 〜世田谷区をモデルケースとした事業の提案〜」を発表。惜しくも優秀賞には届かなかったが、スポーツができる場所に目を向け、空き家を利用するという、これこそまさに学生ならではの自由な発想から生まれたアイデアを披露した。

「実施率向上について、Aチームが道具の面から考えました。それに対しBチームは、場所の課題ですね。スポーツを行うには場所の整備も必要です。そこで調べていくと、世田谷区はもう新しい施設を作る場所がないわけです。でも、実は利用されていない空き家がある程度あることが分かりました。そこで、狭い屋内でもできるようなスポーツを、空き家を利用して触れ合える機会を増やすことができないかと考えたのが、このBチームの研究でした」(近藤准教授)

実際には空き家を利用するためには、行政はもちろん、持ち主との交渉など解決しなければならない点は多数残るが、実施率を上げる一つの施策として面白い目線だといえる。

学生たちは4月からプロジェクトをスタートさせ、約半年をかけて形にした。その経験は、確実に社会に出たときに生きると近藤准教授。今回参加した学生も多くの学びを経て、社会で通用する人材として大きな一歩を踏み出した。