学生の理解向上を目指して
-教員の教え方公開-

商学部・商業学科 金 雲鎬教授
「商学入門1・2」「マーケティング論」

学び・教育
2022年02月09日

近年、授業の在り方が問われている。現場では、各教員が自身の科目に合った教育方法を創意工夫し、学生の理解向上を目指して日々努めている。それぞれの科目ではどのように学生と向き合い授業を進めているのか。その手法と実践にフォーカスする「教員の教えるテクニック公開」。
第3回は、商学部・商業学科の金雲鎬教授の授業を紹介する。

授業の初めと終わりに「考えてみよう」の時間、自発的な学習を促す

商学部・商業学科金雲鎬教授

商学部・商業学科 金 雲鎬教授

金雲鎬教授が担当する「商学入門(1・2)」「マーケティング論」は多い年度は200~300人が受講する。大人数の授業でも一人一人に寄り添えるように工夫している。

授業の最初にその日のテーマを提示し、「考えてみよう」と問う。例えば「信頼はどのように形成されるものでしょうか?」「生産者と消費者の間に商業者が存在する理由がどこにあると思いますか?」といった内容だ。最初の3~5分で、学生は資料の該当欄にその答えを書く。その後の5~10分で、何人かに書いたものを発表させ、ディスカッションを行う。

授業の最後に再び「考えてみよう」に戻るのが大きなポイントだ。1時間ほど金教授が講義をした後で、学生は最初に書いた答えの下に再び「考えてみよう」の答えを書くのである。

「こうすると、自分の知識がどれくらい伸びたかが目に見えて分かります。最初は感覚的に何となく書いた答えが多いですが、最後の答えは、まず文章が長くなっているし、理解が深まり論理的になっています」

リモートのメリットも

右が講義の最初、左が最後に書いた学生の答え

右が講義の最初、左が最後に書いた学生の答え

昨年度からはこれらの授業もリモートで行っているが、Googleフォームというツールを使って「考えてみよう」を実施している。リモートになったことで逆にメリットもあるそうだ。

授業の最初に書くことが、出席チェックの代わりになる。また、対面授業では教室を回って目についた意見を発表してもらったが、全員の意見に目を通せるのは授業が終わってからだった。それがリモートならリアルタイムで分かり、画面上で全員の意見を(名前は出さず)共有しながら、ディスカッションができるのだ。

それに加えてチャット機能を利用して意見や質問を書いてもらうことで、皆の前で話すよりもハードルが下がるのか、意見や質問が増えた。
 

学生の充実感を求めて

金雲鎬教授

「考えてみよう」を取り入れたのは、金教授が本学に着任して2、3年後のことだった。いい授業をして、授業を終えた時に充実感に満ちた学生の顔が見たかったからだ。それまでは充実感も感じられず、授業中に私語を交わす学生もいた。

「どうしたら解決できるだろうと悩んだ末、考える時間が授業の中にあればいいのではないかと思いました。考えている間はしゃべることはできませんし、考えることで理解が深まるだろうと」

最初は講義の中ほどで休憩も兼ねて意見を書かせていたが、1、2年たって現在のように最初と最後に書かせることにした。それによって、最初から静かになり、授業の雰囲気がよくなるという効果もあった。

授業アンケートでは「考える時間がある」ことが役に立っているという答えが多く見られ、「他の学生の考えが分かるのがいい」といった意見もあるという。

このやり方も、本学全体で力を入れているアクティブラーニングの一つだと考えている。アクティブラーニングで一番大切なのは学生が考えることであり、考えなければ発言ができないからだ。少人数の授業でも「考えてみよう」の導入を検討中だという。

<プロフィール>
商学部
金 雲鎬(きむ・うんほ
)教授
韓国仁荷大経営学科卒。神戸大大学院経営学研究科博士課程修了。山梨学院大准教授を経て、2010年に本学商学部商業学科准教授、2019年から教授。研究分野はマーケティング。