「+ミライプロジェクト」全国最優秀賞受賞
木密地域を人々がつくる土壁で解体・更新するアイデアで

大学院生産工学研究科

学び・教育
2022年02月25日

生産工学研究科建築工学専攻の北野研究室(北野幸樹教授)に所属する3人が、株式会社三菱地所設計の設立20周年を記念した学生向け特別企画「+ミライプロジェクト」で全国最優秀賞を受賞した。

堤昂太さん(大学院生産工学研究科建築工学専攻博士前期課程2年)、木下惇さん(同2年)、荻野汐香さん(同1年)が『街の仕掛人 ─土溶け建築と循環する道─』を提出。全国を6地域に分けて審査を行うエリアコンペにおいて、関東エリア最優秀賞を獲得した。

その後、審査員によるレクチャーやアドバイスを受けるオンライン・クリティークを経てブラッシュアップした提案が見事、ファイナルプレゼンを勝ち抜いた。

人々の手で街を更新するアイデアを提案

課題『目抜き通り─そして、そこにたつ建物』に対し、3人が選んだ舞台は東京下町の生活の場、向島橘銀座商店街(東京都墨田区)。戦前からの古い木造住宅が密集し、入り組んだ路地も残る歴史ある商店街だ。

提案したのは、今後、建て替えが予測される木造住宅群を一部減築し、地域の「仕掛け人」となった人たちがつくる土壁によって、街並み・生活を壊すことなく解体と更新を図るというもの。仕掛け人には地域住民のみならず地域を訪れる人も想定し、「循環する土」を媒介として、ゆっくりと多様な巡り合いが生まれる仕組みを考えた。

「課題に示された『目抜き通り』とは私たちの日常生活の場であると解釈しています。伝えたかったのは、暮らしにひと手間かけることによって、人と人、人と活動、人と空間、活動と空間の創発的関係が生まれ、コトが創造され、モノに息づき、持続的な生活・暮らしの場が育まれるということ。壊す・つくるという営みの『ひと手間』が街の内外の人に広く開かれ、協同・協働の志向が生まれることによって『目抜き通り』が商店街から路地へと浸透していく。その路地は生命体であり、それこそが私たちの生活・暮しの本質であることを提案しました」(木下さん)

ブラッシュアップ期間で提案が大きく成長

エリアコンペでは、審査員から「人の手でまちを更新する」点が評価される一方、「まちのビジョンや構成が使い手任せになっている」「土壁での更新の頻度が一般的な街の変化と変わらないため、時間軸のレイヤーを長期・短期で整理してみては?」などの指摘も受けた。

「約2カ月間のブラッシュアップ期間は、まちに対して建築家・設計者として行うべきことを見直す貴重な機会となりました。審査員のアドバイスを基に、自分たちの考えをどのように表現すれば成り立つのか、相手に伝わるのかなど非常に苦しみながらも、建築の楽しさを再確認する有意義な時間を過ごすことができました」(堤さん)

迎えたファイナルコンペでは、人々の手によって循環する土でまちを更新するという着眼点に加え、目抜き通りが商店街から路地へと拡張していく構成や表現が高く評価され、受賞につながった。オンライン・クリティークを経て提案が大きく成長した点も注目された。

「私たちがこれまで、北野研究室で『地域主体の持続的まちづくり活動』をテーマに研究に取り組んできた成果も生かせたと感じています。今回の貴重な体験を糧に、これからも建築に正面から向き合い、楽しみながら精進していきたいと思います」と荻野さんは受賞の感想を語った。