8つのハートが1つに
初の8学科学生合同展示

芸術学部 芸術資料館「未来の巨匠展~モノ心色~」

取り組み・活動
2021年07月26日

芸術資料館は芸術学部創設以来収集してきた資料の保管、展⽰、調査・研究を⾏う付属機関だ。江古⽥校舎にあり、教職員や学⽣の研究・教育に活⽤されるほか、年間を通じて企画展を開催するなど広く⼀般にも開放され、東京都から博物館相当施設に指定されている。

コロナ禍で多くの展示企画が中止となる中、芸術活動をすることが難しくなっているからこそ、Zoomなどの仮想空間ではなく、生の芸術学部を感じてほしいと「未来の巨匠展Project」が誕生した。

領域の違いの壁

日芸には「8つのアート、一つのハート」というキャッチコピーがある。

8学科の学生・大学院生が主体となり立ち上げたプロジェクト。
意外にも8学科合同での学内展示は初めて。過去にも企画はあったが、芸術領域の違いの大きさから実現に至らなかった。
コロナ禍で何もできないことを嘆き立ち止まるのではなく、進み続けることで何かが生まれることを信じ集まった8つのアートは、すぐには一つにならなかった。
写真や絵画は展示ができるが、演劇や音楽は何をどうやって展示するのか――。「領域の違い」の壁は想像以上に高かった。

学生代表の佐原咲来さん(演劇学科企画制作コース3年)は「本来はコミュケーションが必要な芸術創造活動ですが、コロナ禍で会うことができません。オンラインではコミュニケーションを図ることが困難で、各領域から出た建設的な意見や、それに伴い計画した多くのことを全て実現させることはとても難しく、悔しい思いを何度もしました」と当時の苦労を語る。

未来の巨匠は――

カンバスに映る影

カンバスに映る影

「音が邪魔にならないようにヘッドフォンを使うよ」
「明るすぎないようにスポットライトを調整します」
「こんな展示の方法があるよ」

何度も話し合い、歩み寄って過去一度も成しえなかった8学科合同での展示を完成させ、それぞれの領域の「色」も表現した。

8領域の展示を順にめぐり、たどり着いた最後の作品は、白いカンバス。
そこには自分のシルエットが映し出され、気付かされる「未来の巨匠は――」。

小林直弥教授

小林直弥教授

「この企画は成功しないのではと心配していました。時間も活動にも制限がある中で、見事に8つのハートが一つのアートを完成させた。学生たちの思いや創造者としての力、日芸の素晴らしさを感じてほしいです」と同資料館副館長の小林直弥教授は話す。

河嶋未羽さん

河嶋未羽さん

鑑賞に訪れていた河嶋未羽さん(演劇学科1年)は「今の社会情勢や自分の置かれた環境など、ずっと考えため込んできました。この展示を見て、同じように感じている人がたくさんいるんだなって――。とても安心したんです。コロナ禍でも、このような作品が作れることに感動しました」と声を震わせた。

学生代表の佐原咲来さん

学生代表の佐原咲来さん

同展示は、新型コロナウィルス感染症拡大防止のため、一般公開はかなわず、学内者限定での公開となったが、問い合わせも多く「外部の方々にも見ていただきたいと、再展示も含め、方法を模索中です」と小林副館長。

「8つのアートが存在している未来の巨匠展に、一つのハートを持った未来の巨匠である日芸生が来場し、8つのアートに触れることによって、本当の意味での『一つのハート』になったのではないかと思います」(佐原咲来さん)

100周年を迎えた芸術学部。8つのアートは、決してバラバラではない。