アフターコロナのIT技術とその利活用を考える 「第21回 産・学・官連携フォーラム」開催

取り組み・活動
2022年03月18日

新型コロナウイルスの世界的な感染拡大により、私たちは今、社会システムやその基盤となるIT技術の在り方について多くの課題に直面している。そうした背景の下、工学部工学研究所は公益財団法人郡山地域テクノポリス推進機構との共催でこのほど、「第21回 産・学・官連携フォーラム」を開催。産学官の代表が「アフターコロナに向けたIT技術」をテーマにそれぞれの視点から講演を行った。

前年に続き、ウェビナー形式と人数制限を設けた来場型のハイブリッドで開催される中、新たな時代のIT技術とその利活用について考えを深める有意義な機会となった。

産学官を代表する3氏が講演

本フォーラムは公益財団法人郡山地域テクノポリス推進機構評議員の伊藤清郷氏による開会あいさつで始まり、続いて講演が行われた。

「産」代表の一般社団法人福島県情報産業協会代表理事の鷺弘樹氏は「アフターコロナにおける地域戦略」をテーマに講演。福島県の情報化に貢献し、ICT分野で働く人たちの活躍によって福島県の経済・社会が豊かになることを目指す立場から、福島県の課題を挙げた上で鷺氏が考える地域戦略を提示した。
アフターコロナにおいては特に、仕事・生活の場として選ばれる環境づくりと内需・外需経済の発展につながる施策が重要であり、そのためにも産学官が連携し、地元企業を支援するICT技術の構築やDX(デジタルトランスフォーメーション)の進展、ICTインフラ整備に積極的に取り組むべきだと強調した。

工学部情報工学科の林隆史教授は「学」を代表し「DXを支える情報基盤」をテーマに講演。冒頭でコロナ禍により日本のデジタル化の遅れが浮き彫りになったことを指摘し、その経緯を振り返った。
続いて、DXとはアナログではできなかったことを実現し、新しい価値を生み出す変革であるとし、そこではデータを流通し、組み合わせて新たなデータをつくることが重要であるとの認識を示した。その上で、DXとデジタル化を進めるにはどんなソフトやシステムが必要かを日常的に考え、福島県内のさまざまな組織や人が連携して検討を重ねるといった地道な作業が不可欠だと伝えた。

「官」代表の福島県企画調整部デジタル変革課課長の渡辺春吉氏は「福島県におけるデジタル変革(DX)の推進について」をテーマに講演。福島県が震災後の復興・再生、地方創生・人口減少対策、より良い行政サービスの提供、コロナ禍での新たな日常への対応などを実施すべくDXを積極的に推進していくこと、2021年4月に「デジタル変革課」を設置し、行政のデジタル変革と経済・暮らしに関わる地域のデジタル変革の二つを柱にスマートシティの実現を目指していることなど、県の取り組みを紹介した。

福島県の発展につながるDX、デジタル化の推進・活用とは? 産学官が活発に議論

講演に続いて、登壇者によるパネルディスカッションが行われた。コーディネーターを務めたのは研究委員会副委員長の中野和典教授。デジタル化の共通化・標準化が進まない要因についてさまざまな意見が出されたほか、デジタル化やIT技術、データの有効活用について、福島県の活性化につながるアイデアや意見も産学官から出された。
活発な議論の後、工学研究所次長の春木満教授の閉会あいさつでフォーラムは終了。DXの概念と問題点、その可能性を共有することができ、また、地域の課題解決にDXが有効であり、産学官連携が地域のデジタル化のカギとなることが確認された実りの多い場となった。