日本大学130周年
自主創造の歩み(1)

創立100年から130周年へ、本学が取り組んできたこと

取り組み・活動
2019年11月05日

今年、創立130周年を迎える日本大学が「自主創造」を教育理念に掲げたのは、12年前の平成19(2007)年だった。新しい教育を示す教学改革の一環だが、自ら考え、自ら学び、自ら道をひらくというその精神は、はるか昔の創立当初の記憶に結びつく。それが教育の指針として、再び着目されてきたわけだ。そんな「自主創造」の理念が歩んできた軌跡を、令和元年に入った現在、改めてたどってみることにした。

日本法律学校の主意書が原点

ちょうど30年前の平成元(1989)年10月4日、日本大学の創立100周年記念式典は、即位されたばかりの天皇・皇后両陛下(現・上皇・上皇后両陛下)を迎えて、盛大に執り行われた。

当時の日本大学新聞には、1面トップに「新世紀へ厳かに記念式典」の活字が躍り、「お手を振り にこやかに」と両陛下の表情を報じている。

第7代総長

第7代総長 高梨公之

式典で両陛下に接した大学トップは、第7代の高梨公之総長。〝学祖〞山田顕義伯の伝記を書き、学祖の顕彰事業にも熱心に取り組み、創立100周年の記念事業として終焉地碑や墓所の整備を進めたほか、改葬で出土した遺骨をもとに、学祖の顔と声を復元する試みにも携わった。

その高梨総長も関わったのが、「日本大学は日本精神にもとづき……」に始まる昭和34(1959)年の「目的及び使命」の改訂。その中に初めて「自主創造の気風をやしない……」の文言が出てくるのである。

その原点をたどると本学の前身である日本法律学校が創立された明22(1889)年の設立趣意書に行き着くが、〝日本精神〞について高梨総長は「山田先生のすえられた建学精神は、日本人としての主体性を持ちながら、広く世界に目を向けること」と敷衍(ふえん)した講演の記録が残っている。

求心力としての役割に期待

平成の30年間で、本学は学生数が計16学部6万8千人を超える総合大学に拡大する一方、卒業生も約30万人増えて約118万人と日本一の規模を誇るなど躍進を続けている。

その過程で「自主創造」に再びスポットライトが当てられたのは、北は福島県郡山市の工学部から、南は静岡県三島市の国際関係学部まで、各学部のキャンパスが広く点在する中で総合大学の求心力としての役割が期待されたからにほかならない。

各学部の自主性を重んじた分権型・分散型キャンパスで、高度成長期まで十分な機能を果たしてきた本学も、時代環境の変化から見直しが迫られることになった。教学面を含めたさまざまな改革や組織整備の必要性に迫られたのである。

教育憲章

平成23年に就任した大塚𠮷兵衛総長(現・学長)の指示で、教学施策の検討に乗り出すこと5年、改革の方向性は日本大学教育憲章という形でまとまった。そこでは「自主創造」を育成していくべき人間像として捉え、倫理観や思考力など備えるべき要素と能力を、11の指標で具体的に示した。

今後は、これまで各学部で独立していたカリキュラムを全学的な視点から見直し、その上で各学部独自の教育と組み合わせる仕組みになる。その結果、異なる学部の学生も共通の基盤で学べ、その達成度を測ることで一定水準の学力を確保できるようになる。

近年は欧米や国際機関、そして文部科学省からも、大学教育への質の保証が求められるようになってきた。本学の改革はこうした時代の要請に応えたものだが、改革はスピードアップされて、さらに進化しようとしている。その動きは今後も注目を集めるものと思われる。