日本大学130周年
自主創造の歩み(2)

創立100年から130周年へ、本学が取り組んできたこと

取り組み・活動
2019年11月05日

学部間連携の試み

「自主創造」の理念を、実際の教育の現場にどのように落とし込んでいくか――。
それを具体化したのが3年目を迎える授業「日本大学ワールド・カフェ」と、開始7年目の「日本大学 学生FD CHAmmiT(ちゃみっと)」だ。両方に共通するは、総合大学としての強みを生かし、学部の枠を超えた学び・交流を満喫できる点にある。今春からは「日大生のやってみたいを実現するプロジェクト」もスタート。学部をまたいだ全学共通の動きは、授業そのものから課外活動へ、実践の場をさらに広げようとしている。

1万超の学生が出席する大規模カフェ

「日本大学ワールド・カフェ」は全16学部の1年生、総勢約1万6000人の大半が出席する授業で、開催は年に1回。そのたびに〝大移動〞が繰り広げられる一大イベントである。

ワールドカフェ

一昨年のワールドカフェで学生と語り合う大塚𠮷兵衛学長

昨年10月14日に開催された際は、会場に都内の4学部、千葉県習志野市の生産工学部に加え、工学部と国際関係学部の、合計7学部のキャンパスがあてられた。

受講先のキャンパスは自身が通う学部でなく、基本的に居住地に近いキャンパスが割り当てられる。このため、キャンパスに他学部の学生が大挙して押しかける大移動となる。

実は同カフェ、全学部を網羅した初の統一授業である全学共通初年次教育科目の「自主創造の基礎」から生まれた。本学の強みは文系に理系、医歯薬系の16学部87学科を擁していることだが、そんな利点を生かして、学部・学科の枠を超える多様な価値観に触れ、視野を広げるのが目的である。2年前にスタートする際「全学共通」と冠したところに、当時の意気込みが感じられる。

他花受粉のように発想を広げるスタイル

授業の進め方自体もユニークだ。持ち寄った菓子をつまみつつ、カフェのように開放的な空間で自由な会話を進めるスタイルだが、そうした雰囲気づくりにも狙いが込められている。生き生きとした意見の交換や新たな着想を得るための刺激を期待しているのだ。

ワールドカフェの様子

会場で参加者に提示されたのは、「マナビ」「いいオトナ」といった漠然としたテーマで、まずは学部の異なる6人がチームを組み、机の上の大きな模造紙を囲んで、思いつくままに言葉を連ねるところから授業はスタートした。普段とは異なる形で論議を重ね、話し合いが煮詰まってくると、次はメンバーを変えて再論議へ。まるでミツバチが花から花へ移って他花受粉するように、新たな発想を生み出していこうとする仕掛けの一つである。

十分に内容を深めたところで、再び元のチームに戻り「日本大学でどのような学生生活を送るか」という視点に沿ってチームの結論をまとめていった。その間に費やされた時間は約3時間。

もちろん初対面の学生同士であり、初めての体験でもあるため、最初は緊張してうまく話せず、不安を募らせる参加者も目立った。それも「コミュニケーション能力は生きていく上で磨かなければならないスキル」であるという視点に立った、同カフェの狙いの一つでもある。

参加者からは「普段は他学部との交流がないので、とても新鮮な体験だった。総合大学で学んでいるのだと改めて実感できた」(医学部1年)といった感想が寄せられるなど反応は上々。終了する頃には話が盛り上がり、会場全体に笑顔が広がった。

議論を深めていく過程で目標にするコミュニケーション力やリーダーシップ、協調性も、日本大学教育憲章が指標に掲げる能力の一つ。「学部間交流という課題は、地理的な制約などからずっと手を付けかねてきたが、ようやく打開の糸口が見えてきた」と、事務局も手応えを感じている。

三位一体の「学生FD CHAmmiT」

学生FD CHAmmiT

FD CHAmmiTの様子

一方の「学生FD CHAmmiT」は、全学部の学生と教員、職員が顔を突き合わせて本音を語り合う学部横断型イベントである。総合大学としての一体感を高める取り組みとして平成25年度から開催されている。

FDとは組織的な教育・研究の改善活動を意味するファカルティー・ディべロップメント(Faculty Development)の略で、こちらも開催は年に1度。気楽なミーティング形式の肩の凝らない演出で、シラバスの改良や新入生向けガイドブックのプラン作成などに取り組んできた。

参加するのは昨年末の開催で300人弱と、ワールド・カフェの規模とは比べるべくもないが、日頃は自身の研究室に閉じこもりがちな教員の間から、とくに強い学部間交流のつながりが生まれているという。

企画から当日の運営まで、学生が主体となって進めていることを考慮すると、ワールド・カフェの誕生も「CHAmmiT」で培った経験が後押ししたのだろう。同じ学部同士の議論から始まって、異なる学部の学生との論議を組み合わせるなど、他花受粉の効用に目をつけたスタイルも似通っている。

さらに「学生FD CHAmmiT」に参加した学生と教職員たちが、キャンパスに立ち戻った後もそれぞれに活動しており、今では学部のFD活動の中核にまで成長している学部も出てきた。こうした一連の動きが、ワールド・カフェの実現に結び付いたといえる。

「やってみたい!」の実現を応援

「日大生のやってみたいを実現するプロジェクト」参加募集ポスター

「日大生のやってみたいを実現するプロジェクト」参加募集ポスター

今年度の新たな目玉は、創立130周年記念事業として進められている、学部が異なる日大生グループの課外活動の応援だ。学部の枠を超え、二つ以上の学部、5人以上のグループを応募条件とする「日本大学自主創造プロジェクト」で、学生目線という観点から、「日大生のやってみたいを実現するプロジェクト」とも銘打った新企画である。

5月初旬に締め切った応募60件を審査した結果、採用されたのは33件。今後1年間の活動に1件あたり10万円から30万円程度(最大100万円)の補助金が支給されるが、合格の決め手となったのは学生同士の自由な発想とやる気だったという。

「自ら学ぶ」「自ら考える」「自ら道をひらく」というのは、日本大学教育憲章が理想とする人間像である。「自主創造」の理念は、授業で得た学びを課外活動という実践の場に生かす、新たな段階を迎えたと言えそうだ。