【研究者紹介】
行政法と経済法織り交ぜ新たに体系化

法学部 友岡 史仁 教授

研究
2020年02月05日

個人・行政情報に関する新制度作り、電力システム改革や原発安全規制も

行政法や経済法といったすでに確立された法分野がある中で、双方の分野を織り交ぜた新たな法律学を体系化した。

個人情報や行政情報に関する新しい制度作りの実務にも携わっている。さらに、大手電力会社が所有している送配電網を第三者に開放する電力システム改革、原子力発電所の安全規制や高レベル放射性廃棄物の処理に関わる法制度なども研究対象にしている。

唯一のテキスト

友岡 史仁 教授

法学部 友岡 史仁 教授

経済行政法は、国家が積極的に国民の経済活動への介入(行政介入)を図ることに伴う、法的問題を包括的に扱う。学問としては、第二次世界大戦前から日本にあった。

友岡教授は、行政法体系の中で埋もれていた行政介入に関わる諸事例を掘り起こし、スタンダードな行政法・経済法(独占禁止法)のテキストが簡単に済ませてきた諸論点の隙間を埋め、それらの集約作業を独自に試みた。

その集大成である「要説 経済行政法」(2015年、弘文堂刊)は、これまでになかった日本で唯一のテキスト。政府などによって規制緩和の対象と認識されてきた公的規制を主な素材とした。4部構成で、第1部はスタンダードな行政法総論の論点整理法に準じた。第2部は参入・料金を中心とした諸規制とその関連規制、第3部は古くて新しい問題を含む産業保護・育成に関わる法制度、第4部は公的規制の存在意義として語られる産業特性がある分野(エネルギー、交通、通信)を取り上げた。

データ利活用検討

個人情報や行政情報に関する新制度作りでは、第三者が情報を利活用することに関わる検討会に長期間参加し、総務省産官合同委員会、学会などに対して積極的な発言や報告を続けてきた。

友岡教授によると、行政情報や個人情報などのデータを、ビジネスや国民の利便性にどうつなげるかについて、法的な枠組みは整っておらず、まだまだ検討の余地が残っている。データを自由に使おうとするGAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾンの総称。ガーファ)を法規制する動きがある一方で、利活用には問題がないとの議論もある。どういう法制度を作るのがベストであるのかについては、今が端境期であるという。

ライフワーク

電力システム改革は、大手電力の送配電網を第三者に開放して市場参入を促し、料金引き下げなどにより国民が利益を享受できるようにする狙い。

電力の完全自由化に向けて、政府主導で進められており、送配電網開放は改革の第三段階に当たる。友岡教授は改革実現の方向で研究を進めているが、「法的にはかなり難しい。ライフワークの一つとして取り組んでいる」と話している。

原発の安全規制は、東日本大震災以降、非常に厳しくなっているという。友岡教授は、安全審査の手続きや法的構造がどのように変化してきたかを、海外の事例との比較などを交え、学会で報告している。

高レベル放射性廃棄物の処理については、深い地層に埋設して最終処分する方法が、法制度として組み立てられているものの、実行に移されないでいる。このため、古くから原発を稼働させている英国のケースを参考に、処分施設の選定方法や手続きなどを法的に詳しく研究している。

剣道とバロック

剣道の稽古中

剣道の稽古は貴重な時間だ

研究や教育の合間には週1回の割で、法学部と経済学部の剣道の合同サークルに参加し、竹刀を振る。自宅がある横浜市の道場で稽古することも。

幼児洗礼を受けたカトリックでもあるため、家族が寝静まった後、時にバロック音楽などの教会音楽に身を委ねる。父親の仕事の関係で中学生の頃を英国で過ごしたせいか、「イギリス英語を極めたい」という、語学好きの側面も持ち合わせている。

法学部
友岡 史仁(ともおか・ふみと)教授

平成9年慶応大法学部法律学科卒。11年同大学院法学研究科修士課程修了。15年同法学研究科後期博士課程単位取得退学後、同年4月から本学法学部専任講師。18年同助教授。25年から同教授。
日本公法学会、日本経済法学会、日米法学会、公益事業学会などに所属。和歌山市出身。45歳。