【研究者紹介】
AIを駆使しコロナ収束の道を探る

生産工学部 大前 佑斗 助教

研究
2021年08月23日

コンピューター上に仮想社会を構築。
有用性をシミュレーションして人工知能の可能性広げる。

今年1月、特に顕著な研究成果を上げたとして、令和2年度のリサーチャー・アワード「特別部門」の受賞が決定した。人工知能(AI*)を用いて新型コロナウイルス接触確認アプリ(COCOA)のシミュレーションを行い、同アプリの有用性を検証したことが評価された。

*AI(artificial integence)
認識や推論、問題解決や創造など、人間にしかできなかった知的な行為をコンピューターに行わせる技術。知的な情報処理システムの設計や実現に関する計算機科学の一分野でもある。

取材件数は30に

生産工学部 大前 佑斗 助教

生産工学部 大前 佑斗 助教

西村康稔経済再生相が昨年8月19日の記者会見で引用したのを機に一気にメディアの注目を浴び、取材件数は約30件に上った。用いた手法はコンピューター上に仮想社会を構築し、人々に自由に生活を行わせるという分析方法だ。

「会社員、学生など1000人を人工的に生成し、うち10人が感染者。出勤、通学、スーパーへの買い物など1カ月間生活させてみました」

「アプリの利用率」と「感染者と接触した人が外出を抑える度合い」の変化率から有用性を検証。人口の40%がアプリを利用し、感染者と接触した人が外出を40%控えれば累計感染者数は3分の2に減少する、などの結果を導いた。

「1カ月間、1日8時間くらい分析していました。集中するとほかのことが頭に入らなくなるようで、周りによく突っ込まれます(笑)」

医学部とも連携

コロナ禍に関しては、緊急事態宣言の解除タイミングと「経済活動」「感染者数」の相関関係を検証し、電子情報通信学会の研究奨励賞を受賞した。「早く解除しても次の感染拡大が早まるので、総合的にみれば、宣言は感染者が落ち切ってから解除する戦略が望ましいと言えます」

2017年からは本学医学部と連携。検査のために心臓や肺などに危険な手術を強いられる患者に対し、エックス線画像からAIで病状を判定するシステムを構築中だ。患者の負担は大きく軽減されることになる。

現在の研究成果が認められれば、他大学とも連携し、ビッグデータで次のステップに移行する考えだ。

尽きない興味

「興味に従って仕事をしているので、一般的に『人』がするような遊びに興味はありません。人間って死ぬじゃないですか。その瞬間にその人の経験や判断基準が消失するのはもったいないですよね。優れた医者とかスポーツコーチの判断基準をAIに保存できたら面白いと思いませんか」

生産工学部
大前 佑斗(おおまえ・ゆうと)助教

2016年長岡技術科学大工学研究科博士後期課程修了。博士(工学)。
東京工業高等専門学校助教を経て、19年4月から本学生産工学部マネジメント工学科助教。電子情報通信学会研究奨励賞など受賞。人工知能学会所属。北海道出身。