量子コンピューターにつながる研究提案が、2021年度「さきがけ」事業に採択

文理学部物理学科 山本大輔 准教授

研究
2021年10月22日

文理学部物理学科の山本大輔准教授が、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)の2021年度「さきがけ」事業に採択された。JSTは科学技術の振興を図るべく、研究資金の配分などを行う文部科学省の所轄機関。「さきがけ」は、国の戦略目標に基づき、科学技術イノベーションにつながる先駆的な個人研究を助成・推進するプログラムで、採択率は11.6%だった。

物理法則をコンピューター処理に応用

山本准教授の研究分野は、原子や電子など、物質を構成するミクロな世界の物理法則を探求する「量子力学」。最先端の研究としては、従来のコンピューターより高度な処理能力を持つ量子コンピューターへの応用が期待される分野だ。

パソコンなど従来のコンピューターは「0」または「1」のどちらかを表す「ビット」を使って計算を行う。これに対し、量子コンピューターは「0」と「1」のどちらでもある「量子ビット」を使用することで、多数の計算を同時に行うことが可能になる。この「0と1どちらでもある」という不思議な状態は通常の物理法則に反するように思えるが、量子力学が対象とする極小の世界では成り立つ現象である。コンピューターへの完全な応用は、まだ実現していない。

情報理論の知見も組み合わせて

キャンパスにて、文理学部物理学科 山本大輔 准教授

採択された研究課題名は、「人工量子系における量子状態同定および量子もつれの定量化法の開発」。レーザー光を利用して量子の世界を再現し、その仕組みを解き明かしてコンピューターに応用できるようにしようというのがその趣旨だ。「普通の物理実験では、伝導体の導電率や磁性体の磁化といったマクロな物理量を測定します。しかし量子状態を情報処理に使うためには、マクロな物理量だけでなく、それらの量がどれくらいになるのかを裏で決めている『量子状態そのもの』を同定・操作する必要があります。これは伝統的な固体物理学の研究方法とまったく異なるため、量子物理学だけでなく情報理論の知見も組み合わせた『量子情報理論』的な観点から新たな方法を生み出すことが課題となります」

研究課題名「人工量子系における量子状態同定および量子もつれの定量化法の開発」。

今回の採択を受け山本准教授は、「この課題解決の重要性と、本研究がそれに資することが期待されるという点が評価されたのだと思います。研究提案が採択されたことはありがたいですが、研究は始まったばかりです。提案時に設定した目標を達成し、次は研究の成果を報告できるよう頑張ります」と抱負を述べた。