【研究者紹介】
水需要拡大で三島のまちおこしを支援

国際関係学部 蓼沼 智行 教授

研究
2021年12月10日

マーケティングに精通、フィールドワークを重視。「ネットの情報では駄目。自分の主張を」と指導。

現実に起きている現象や問題を解決する学問としての「マーケティング*」に精通し、 主な研究テーマは「高度ネットワーク社会における新たな流通展開と課題」 。国際関係学部のある静岡県三島市の活性化に関して、エキスパートとして意見を求められることが多い。

目下取り組んでいるのが風呂に関する情報をウェブ上で発信する「おふろ部」。神戸女子大学などと進める産学官連携のプロジェクトで、学生はブログ記事の執筆などに携わる。富士山の伏流水で水資源が豊富な三島。人口減少や省エネなどで減退した水需要を拡大させたい狙いが背景にある。

*マーケティング
ターゲットとする消費者に照準を絞ってアプローチすること。消費者ニーズの多様化や市場の成熟化、少子高齢化による人口減少、規制緩和やインターネットの普及によってマーケティング活動は近年大きく変化した。

学習支援の取り組みも

国際関係学部 蓼沼 智行 教授

国際関係学部 蓼沼 智行 教授

2018年に「三島の水の商品化」で学生らの研究成果を市長に報告した縁で再びまちおこしに加担することになった。

20年度からNPO法人「伊豆地域振興研究所」の理事兼事務局も務めている。これもまちおこしの一環だ。

コロナ禍で思うように進まないジレンマはあるが、手始めに10月下旬にも小学生の学習支援に着手する予定という。

家庭の事情などから塾に通えないと、通う子供と学力の格差が広がる恐れがある。才能がありながら支援の必要な児童を、教育関係者と連携してピックアップし、定年退職した先生などに指導してもらう計画。

仲間と協調の機会も提供

大学では流通経済学や食品流通論などの授業を担当する。身近な事例を取り上げ、その変化を資料等から分析し、検証するスタイル。フィールドワークを重視しており、ゼミ生には「ネットから拾ってきた情報では駄目。自分の足で情報を集め、自分の頭で考えた主張を持つように」と指導している。

自らの実践ではセブン―イレブン・ジャパンが本家のセブン―イレブン(サウスランド社)を飲み込んだ事例が印象深い。米国のニューヨーク州に長期留学中、つぶさに調べ「真似して熟成させる日本の手法」に納得した。半面、米国の経営者はリスク管理に優れ、こうした違いは価格設定などに如実に反映されるという。

コロナ収束が見通せない現状では、学生を連れて国内外で研修することはかなわない。教室で与えられた資料のみでゼミ運営を余儀なくされることも多い。

まちおこしに関わることで、学生は積極的に活動して自ら発信できる。成果を積み上げる過程で仲間との協調を実感できる機会も得られ、メリットはかなり大きいようだ。

国際関係学部
蓼沼 智行(たでぬま・ともゆき​) 教授 

本学商学部卒。米ペンシルベニア州立大への留学を経て本学大学院国際関係研究科博士後期課程修了。博士(国際関係)。2008年 本学国際関係学部助教、12年同学部准教授、20年4月から同学部教授。日本消費経済学会(理事)など に所属。栃木県出身。