【研究者紹介】
燃料電池で切り開く脱炭素社会

理工学部 吉川 将洋 教授

研究
2021年12月15日

エネルギーの地産地消を目指し、燃料電池の高性能化・低コスト化を研究。研究者・技術者育成で裾野広げる。

世界各国で脱炭素社会の構築に向けた動きが加速する中、日本政府は2050年にカーボンニュートラルを実現することを宣言している。温室効果ガスの排出量から吸収量と除去量を差し引いた合計をゼロにすべく、燃料電池*の分野から課題解決に向け、学会、業界をけん引している。

*燃料電池
水の電気分解の原理を利用し、水素と酸素を化学反応させて電気を発生させる電気化学装置。反応後は水が排出されるのみ。従来の化石燃料のように有害物質を排出せず、エネルギー効率にも優れている。

国家プロジェクト

理工学部 吉川 将洋 教授

理工学部 吉川 将洋 教授

燃料電池といっても動く温度に差異があるなど、さまざまな種類があるが、より高効率な発電が期待できる固体酸化物形燃料電池(SOFC)を対象に研究を行っている。

「SOFCの代表的なものに近年市場投入されているエネファームがあります。さらなる普及のためには高性能化や低コスト化が必要で、燃料電池の性能を『見える化』する技術を開発しています」

三菱重工業、京セラなど日本の主要燃料電池開発メーカー7社のSOFCに対し、種々の性能、劣化評価手法の提案を進め、仕様や形状が異なっても電圧低下要因など耐久性を統一的に評価する技術を確立。SOFC開発の加速化に貢献し、海外からも高い評価を受けた。

現在は燃料電池の第一人者として新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が推進する国家プロジェクトに参画し、次世代型SOFCの開発に取り組む。商用化をにらんだ企業などとの共同研究も手掛ける。

将来は地産地消

「理想のエネルギー社会はエネルギーの地産地消だと思います。地方で作ったエネルギーをロスしながら都市に送るのではなく、例えば各家庭で太陽光によって作った電気を燃料電池で電気分解、水素に変換して貯めておけば、必要なときに水素を燃料電池に送って電気を作ることもできます」

昼は太陽電池、夜は燃料電池で生活ができるわけだ。

「燃料電池を一層普及させていくためにはもっともっと裾野を広げていかないといけない。研究者・技術者を育てていくことが私の仕事だと思っています」

持続エネルギー

大学4年の授業で燃料電池に出合い、「これって、すごい」と思って以来30年、一貫してこの道一筋。息抜きは20代から続けているテニスだったが、「最近は妻が始めたバドミントンに付き合っています」。夫婦円満のエネルギー補てんも切れることがない。

理工学部
吉川 将洋(よしかわ・まさひろ)教授

1992年本学大学院理工学研究科博士前期課程修了。同年電力中央研究所入所。2002年博士(工学)。スウェーデン王立工科大客員研究員などを経て、09年本学理工学部非常勤講師。18年教授。電気化学会所属。NEDO技術委員。神奈川県出身。