松戸歯学部 泉福 英信 教授
大学時代は柔道3段で主将を務めた泉福英信教授も、子供時代は身体が弱く、学校を休んで寝ていることが多かった。
つまらないので、自発的に調べ物をしたり、そのメカニズムを追求することが生来の癖に。歯科の開業医だった父の跡を継いで本学の口腔外科へ進んだ後も、その癖は残ることになる。
大学院では歯周病の免疫抑制物質を研究。その頃は遺伝子が介する病気のメカニズムを、かなり細かく解析する技術の発達した時期でもあった。それを知ることでワクワクし、追試してみたり、研究のモチベーションが上がったのも懐かしい思い出だ。
松戸歯学部・泉福英信教授
国立予防衛生研究所で命じられたのが、化合物であるペプチドを用いたう蝕(虫歯)ワクチンの開発。う蝕をワクチンで予防するという夢のある話に、数々のデータを得ることができ、論文も数多く発表できた。
当時は歯周病と糖尿病の関係も取り沙汰されたが、口腔と身体との論議はあまり深くなかった。「双方のメカニズムはどうなっている?」
タイミングの良い出会いと、それを可能にする立ち位置を確保することで、さらに研究が進展するという好循環である。さらにもう一段、留学という夢が広がった。
どうせ行くならと、最高峰の研究機関であるハーバード大医学部のジョスリン糖尿病センターの免疫遺伝学部門の研究員になったのは、同研究所に入職して4年目。幸い同研究所では出張扱いにしてくれた。
新しい研究技術や知識ばかりだが、糖尿病にかける医師たちの情熱を知ることで、歯科医としての自分の覚悟と、歯科臨床に還元できる研究に没頭しようと考えた。そこでは歯科医院の跡を継ぐことは消え失せていたという。
松戸歯学部では令和3年度から、微生物学と免疫学を結び付けて研究体制を一新した。
「自分の原点である本学部に戻ることができ、とても感謝している。一人でも多くの歯科医を育てていきたい」と教授は語る。満を持しての登場と言ってもよい。
SARS-CoV-2の感染拡大が起こっている現状で感染対策の研究を歯科口腔を介して進めていくそうだ。研究の意欲に終わりはない。
*口腔バイオフィルム
口の中にできる微生物の集合体。数種類の細菌が増殖した膜状のもので、口腔内にできる歯垢もその一つ。歯周病の原因にもなる。口腔細菌は、菌と生体分子が相互作用して、より複雑なメカニズムで口腔疾患に関わっている。その解明が課題だ。
松戸歯学部
泉福 英信(せんぷく・ひでのぶ)教授
1988年本学松戸歯学部卒。92年同大学院松戸歯学研究科博士課程修了。博士(歯学)。国立予防衛生研究所( 現・国立感染症研究所)研究員、国立感染症研究所細菌第一部室長などを経て、2021年から本学松戸歯学部教授。長崎県出身。