柔道女子78キログラム超級 素根輝 選手(スポーツ科学部競技スポーツ学科1年)
柔道女子78キログラム超級・素根輝選手
東京五輪、柔道女子78キログラム超級で悲願の金メダルを獲得した素根輝選手。勝利が決まった瞬間に号泣し、歓喜する彼女の姿を目撃した読者も多いことだろう。
そんな彼女とともにオリンピックの激闘を振り返り、今後の目標について語ってもらった。
素根選手が獲得した金メダル。傷がつかないよう、飾らずに大切に保管している
寝ることが一番のリフレッシュ法だと語る素根選手
―東京五輪での個人金メダル、団体銀メダル、おめでとうございます。念願の金メダリストになったお気持ちはいかがでしょうか?
ずっとオリンピックの金メダルを目標に頑張ってきました。達成することができて、うれしさとほっとした気持ちがあります。
―メダリストになると、やはり忙しいですか?
忙しいですが、ありがたいことですね。みなさんが喜んでくださる姿を見て、金メダルを獲得できて本当によかったなと感じています。
―先日は地元の福岡県久留米市に凱旋し、市民栄誉特別賞を受賞されました。
市民栄誉特別賞については全く想像していなかったのでうれしかったですし、このような賞をいただいたのは初めてのことなので、とても光栄です。
―母校の市立南筑高にも行かれたということですが、恩師である松尾浩一先生や後輩たちの反応はいかがでしたか?
喜んでくれました。松尾先生に金メダルを見せることができて、本当によかったです。後輩たちはメダルを持つと「重いー!」と言っていましたね(笑)。
―改めて東京五輪での戦いを振り返っていただきたいのですが、素根選手の試合までに柔道日本代表はメダルラッシュが続いていました。その点でプレッシャーを感じていましたか?
私も続かなきゃいけないと考えていて、多少のプレッシャーはありましたが、それがいい緊張感につながったと思います。しっかりと集中して初戦に臨めたことが、金メダルにつながりました。
―対戦相手も素根選手をかなり研究していたと思いますが、身長の高い相手に対して、初戦から準決勝までオール一本勝ちは圧巻でした。
日ごろから大きい相手をイメージして、組手、間合い、技を練習してきたので、想定通りでした。それぞれの対戦相手の特徴を頭に入れて試合をしていたので、落ちついて対応できましたし、練習の成果をオリンピックでは出すことができました。
本学女子柔道部監督の北田典子教授とともに
―決勝の相手は世界ランク1位のイダリス・オルティス選手(キューバ)でした。
手の内をよく知っているので、お互い慎重になっていたと思います。私もオルティス選手もなかなか自分の得意な形に持っていけず、探り合いが続く試合展開で、4分間があっという間に過ぎましたね。
―ゴールデンスコアに入ってからは何かを変えたのでしょうか?
延長戦で両者に指導が入り、そこから攻めのスピードを上げようと思いました。オルティス選手は試合運びがすごくうまいので、このままでは自分がまた指導をもらってしまうと感じたのです。
―先に仕掛けるということですか?
はい。どこか一つでも手にかかったら足技や担ぎ技に入っていこうということですね。
―そしてオルティス選手に2度目の指導が入ります。3度目の指導は素根選手の勝利を意味します。やはりそこを意識したのでしょうか?
はい。投げるのは難しいと考えていたので、流れを読んで指導での勝ちを意識しました。
―狙い通りオルティス選手への3度目の指導で勝利が決まりました。涙を流して喜ばれていましたが、どんなお気持ちでしたか?
オリンピックが1年延期になり、すごく苦しい思いをしました。それが報われて、頑張ってきてよかったと考えていました。それと同時に肩の荷が下りて、すごくほっとした気持ちでしたね。
―翌日の団体戦は銀メダルに終わりましたが、素根選手は負けなし。個人戦と団体戦で7戦全勝でした。
団体戦でも優勝を目指していたので、悔しかったですが、東京2020オリンピックという舞台で、すばらしいチームの一員として試合ができたことは幸せでした。自分自身が成長できた7戦でした。
―金メダル獲得を公言し、周囲からも確実と言われた中で、見事に有言実行をされました。金メダル獲得の一番の要因はどこにあったのでしょう?
日々の積み重ねですね。全ての面でレベルアップできるように毎日課題を決め、コツコツと練習に取り組みました。あとは初戦の相手をしっかりと意識して大会に臨めたことが、金メダルの要因だと考えています。
座右の銘は「三倍努力」
―今年の4月にスポーツ科学部に入学しました。オリンピック、コロナウイルスの影響でリモート授業が多かったと思いますが、今後はどんな大学生活を送りたいとお考えですか?
スポーツについていろいろと学べるので、競技力向上に役立てたいです。競技スポーツ習得実習、トレーニング原論などは競技に反映されると思います。
―素根選手は柔道家としてはパーク24の柔道部所属ですね。
周囲の方々が柔道に専念できるようにサポートしてくださって、本当にありがたいです。その中で自分のできることを頑張っていきたいと考えています。
―大学で同じクラスの学生は素根選手に会えることを楽しみにしていると聞いています。
私も新しい友だちに会えることが楽しみです。スポーツ科学部に在籍している選手、卒業された選手が東京五輪にもたくさん出場していましたし、他競技の選手と交流することで自分の柔道にもいい影響があると思います。
―今後についですが、やはり目標はパリ五輪でしょうか?
はい。今後は相手に研究されて勝つことが難しくなると思いますが、次の目標であるパリ五輪に向けて、目の前の試合を一つ一つ大事にしていきたいです。
―東京五輪で得た教訓、今後に活かされる学びはありましたか?
東京五輪が延期になり、先が見えない状況での練習は本当に苦しかったですが、どんな状況でも努力する大切さを学び、成長することができたと考えています。
―これまで、私たちが想像もできないような苦難を経験されてきたと思います。パリ五輪でも険しい道のりが待っているのではないでしょうか?
そうですね。でも強い気持ちを持って新たな目標に向かって一つ一つ頑張っていきたいと思います。覚悟を決めてまた柔道と向き合い、代表権も勝ち取りたいです。
―3年後はさらに強くなった素根選手が見られますね?
はい。技、組手の技術、パワー、スタミナ、全ての面でレベルアップし、今よりさらに強くなった姿をパリ五輪で見せたいです。もっともっと強くなれるように日々努力をしていきたいと思います。
<プロフィール>
柔道女子78キログラム超級
素根輝(そね・あきら)選手
2000年7月9日生まれ。福岡県出身。久留米市立南筑高卒。スポーツ科学部競技スポーツ学科1年。パーク24所属。
18年アジア大会優勝
18年ワールドマスターズ優勝
19年世界選手権初出場初優勝
21年東京五輪金メダル