社会貢献を通じて自身を高め、卒業してすぐに活躍できる人材に

文武両道を突き進む準硬式野球部【後編】

スポーツ
2021年12月21日

自主性を重んじるとともに、自分の役割を自分で理解し、自ら行動する力を持つこと。それが人としての成長につながり、結果的にプレーの向上にもつながると言う米崎寛監督。そして、文武両道を掲げると同時に、SDGsをはじめとするさまざまな社会貢献活動を行う東都大学準硬式野球連盟の取り組みにも、本学準硬式野球部は参加している。そういった活動に参加した選手たちは、社会貢献を通して何を感じ、何を得たのだろうか。

野球を通した社会貢献活動を行えるのも
準硬式野球の魅力

準硬式野球というスポーツは、学業をおろそかにせず、文武両道をモットーに取り組むことを第一に掲げている。それと同時に、さまざまな社会貢献活動、そしてSDGs活動にも力を入れている。

例えば、グローブの再生活動。使い込めば使い込むほど、革が古くなって使えなくなっていく。それを野球グローブの修理事業を手掛けるRe-Birthと関東地区大学準硬式野球連盟が提携し、野球を通してSDGsに貢献していく活動を始めた。

コロナ禍に負けず『WCBF Baseball Experience Event』でアオバジャパン・インターナショナルスクールの子どもたちとの交流の様子

コロナ禍に負けず『WCBF Baseball Experience Event』でアオバジャパン・インターナショナルスクールの子どもたちと交流

社会貢献で言えば、2016年からインドネシア共和国との友好親善試合がスタート。その後は野球発展、向上のための継続的活動の契約を結び、翌年にはフィリピン共和国やスリランカ民主社会主義共和国にまでその活動の幅を広げることとなった。2019年にはさらにその幅が広がり、ベトナム社会主義共和国、ブルネイ・ダルサラーム国が参加し、野球教室や指導者養成講座などを実施することとなった。

本学準硬式野球部も、2016年から毎年このASEAN国際野球プログラムに参加し、社会貢献活動に従事した。

2020年からは新型コロナウイルス感染拡大の影響もあってこの活動は休止。だが、社会貢献活動は続けたい、というのが準硬式野球に携わる人たちの総意でもあった。そこでスタートしたのが、国内にあるインターナショナルスクールの子どもたちへの野球教室「WCBF Baseball Experience Event」だ。これには大会運営や日本代表チームの合宿サポートを行っている(一社)全日本女子野球連盟も加わって共に活動しているという。

準備も全て学生たちで行う。これが選手たちにとっても良い経験となる

準備も全て学生たちで行う。これが選手たちにとっても良い経験となる

10月25日にも『WCBF Baseball Experience Event』が行われ、本学準硬式野球部員も参加。子どもたちとの交流を通して、野球だけではない経験を積み重ねている。この活動に携わる杉山智広ヘッドコーチも「環境が人を育てますから、学生もどんどん外に出て社会貢献に携わってもらいたい」と話す。

「ASEAN国際野球プログラムは3週間ほど海外に行くのですが、行く前と帰ってきた後では選手の顔がガラッと変わります。大人になって帰ってくるんです。野球だけやっていれば良いというわけじゃなくて、多様性、多角的に物事を考えて行かないと、実社会で苦労する。だから、こういった野球教室をはじめとする対外活動はどんどんやっていこう、と米﨑監督とも話しています」(杉山ヘッドコーチ)

準硬式野球が行う社会貢献はこれだけではない。今年開催された東京オリンピック・パラリンピックでは東京2020ショーケースエリアにおいて、ベースボール5という、5人制の新しいアーバンスポーツとしての野球の体験、普及の活動にも参画。本学からは総務を務める3年生の伊藤俊太さん(文理)をはじめとする部員も参加し、活動に貢献した。

オリンピック・パラリンピックにボランティアで参加したことで野球の面白さを思い出した伊藤さん

オリンピック・パラリンピックにボランティアで参加したことで野球の面白さを思い出した伊藤さん

「オリンピック・パラリンピックということもあって、幼い子どもから高齢者の方まで、さまざまな方々がブースに来てくれて、野球という競技を知ったり楽しんだりしてくれました。今まで野球を知っている人たちと接する機会しかありませんでしたが、野球を知らない人たちにどうやったら野球の魅力を伝えられるのかだったり、ルールやプレーのポイントなどを分かりやすく伝えるにはどうしたら良いかだったり、そういう部分が難しかったです」

そう話す伊藤さんだが、この経験が野球に対して初心に帰る良い経験となったと話す。

「いつもと違う価値観を持つ方々に野球の楽しさや面白さがどうすれば伝わるかを考える過程で、自分の中でも野球を楽しむ、という初心に帰ることができました。楽しむ、という野球の本質をあらためて実感できた良い機会でした」

裏方の仕事をこなすことで
社会人としての素養を学ぶ

杉山ヘッドコーチに裏方としての才能を見い出されたという井上さん

杉山ヘッドコーチに裏方としての才能を見い出されたという井上さん

昨年度の学生委員長を務め、伊藤さんの前に主務を担当していた4年生の井上絢一朗さん(スポーツ科4年)は、女子野球の運営にも携わっていた。

「女子野球には、試合運営に長く携わらせていただきました。ほかにはインターナショナルスクールで、日本に住む海外の子どもたちに野球を教えることもやっていました。準硬式野球の運営ももちろんですが、ほぼ全てを学生が行っています。試合の朝は球場を開けて、ラインを引く。これも学生が行っています。そういう裏方の仕事を務めることで、プレーをしていたとき以上の経験を積ませてもらいました」

準硬式野球はほぼ全て学生によって運営されている

準硬式野球はほぼ全て学生によって運営されている

そういった経験をしたことで、企画力や調整力といった社会人としての素養を自然と身に付けていたと言う。あらためて、準硬式野球の魅力について話を聞くと、興味深い答えが返ってきた。

「試合運営だけではなく、準硬式野球がどうやったら普及するか、どうやったら多くの人に知って見てもらえるかも考えてきました。HP作りに取り組んだり、掲示板やSNSを活用したり。そうやって、自分たちで試行錯誤しながら新しい取り組みにどんどんチャレンジできるのが、準硬式野球の魅力です。自分たちでレールを作って、自分たちで走っていく。そんなオリジナリティの強い競技こそが、準硬式野球なのではないかと思っています」

卒業後すぐに社会人として活躍できる
人材が育つスポーツこそが準硬式野球

井上さんは「将来は人の役に立つ、人のためになる仕事に携わりたい」と言う。そういう思いが芽生えたのも、準硬式野球部の主務を務め、大会運営をはじめとする裏方の仕事を知ったからこそだ。

伊藤さんは、小さい頃からの夢である「電車の運転士」になるために、今は文理学部地理学科で勉学にも力を注ぐ。キャプテンの関口淳基選手は、警察官である親の背中を見て、自分も警視庁を目指している。主将として競技に力を注ぎながらも、法学部公共政策学科で学業に励む。選手・スタッフそれぞれが目指す、さまざまな夢をかなえる土台を作れるのも、文武両道をうたう準硬式野球ならではである。

野球に学業に忙しいが、充実した日々を送っていると関口主将

野球に学業に忙しいが、充実した日々を送っていると関口主将

関口主将は、本学準硬式野球部の魅力をこう話す。

「本気で野球に取り組みたいと思っていましたが、それと同じように、大学では野球だけではないさまざまな経験も積みたいと考えていました。それを実現してくれるのが、準硬式野球でした。本気で共に日本一を目指す仲間とも出会えましたし、力を合わせて目標に向かう過程でも、たくさん学ぶことがありました。それが楽しいですし、とても充実しています」

チームを率いる米﨑監督も、準硬式野球の意味について「運動能力だけではなく、社会に出てから役立つ経験や知識を得られる」と言う。

「プレーするだけではなく、運営に携わったり、社会貢献をしたり、SDGs活動に関わったりして、卒業後にどんな道に進んでいっても活躍できるような人になってほしい。そういう指導を心掛けていますし、準硬式野球というのは、将来を見据えた経験を積めるスポーツなのではないかと思っています」