循環器病センター
2020年8月号
ミュージシャンの大滝栄一氏をはじめ著明な舞台俳優さんや声優さんたちが急性大動脈解離という疾患で突然死されたのは記憶に新しいところです。かつては、加藤 茶さんや石原裕次郎さんなど芸能界の著名人も大動脈解離、大動脈瘤という疾患で大手術を受けておられます。
近年、日本ではこのような突然死する大動脈疾患は高齢者を中心に年々増加傾向にあるのみならず、現役世代(50歳代を中心)の生活習慣病や睡眠時無呼吸症候群に合併する2次性高血圧のため、若くして緊急手術が必要になる患者も急増しています。特に急性大動脈解離は、診断が遅れれば24時間以内に50%が死亡し、1週間で90%が死亡する極めて重篤な疾患です。さらに、大動脈疾患を持ちながら手術をためらって外来通院のみを行い、動脈瘤破裂の危機がせまっていることに気が付いてない患者様も多数存在することが知られています。
2014年、当院開設以来、東京消防庁の急性大動脈疾患スーパーネットワークの重点病院として大動脈疾患専門外来を行っております。最近では長野県や静岡県の心臓センターから緊急手術の依頼をうけ、多数の大動脈解離の患者様が搬送され救命されております。
大動脈疾患は高い確率で遺伝をすることも知られています。患者様のご家族の中に大動脈解離や大動脈瘤の患者様がおられる場合、大動脈疾患の原因として最も高い高血圧をお持ちの患者様、さらにはすでに大動脈疾患をお持ちでご自分の大動脈の状態に不安をお持ちの患者様、是非一度、秦光賢の大動脈疾患専門外来にご相談ください。
当院で行っている2つのオリジナル低侵襲大動脈手術LIQR(リカー)法とLIQS(リックス)法は、手術時間を従来の約6-7時間より大幅(1/3)に短縮し(約2時間20分)、術後の入院期間を短くし、また死亡率も低い優れた手術術式として認められ、読売新聞にこの手術法が紹介され、全国から見学者が来るようになり、また出張技術指導も行うようになりました。当院での手術最高齢は95歳の女性でしたが、元気に退院されました。さらに腹部大動脈瘤、胸部大動脈瘤に対する低浸襲手術として大動脈ステントグラフト挿入術も積極的に行っています。この術式は鼠径部の数センチの傷で手術が可能で、従来の手術方法より体への負担が大幅に軽減、手術時間も短縮される優れた術式です。手術のみならず退院までの患者さんの心のケアにも重点を置き、毎朝6時からの早朝回診もかかさず、真心こもった診療を心がけております。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。