ニュースレター

循環器病センター

2020年10月号

診療教授・健診センター長 谷 樹昌
診療教授・健診センター長 谷 樹昌

新型コロナウイルスへの感染を恐れ、重篤な心疾患であるにもかかわらず、医療機関受診を控えている患者さんがいる可能性はありませんか? 


新型コロナウイルス感染症の合併症の1つとして「血栓症」が知られていますが、冠動脈に血栓が生じて起こる急性冠症候群(急性心筋梗塞・不安定狭心症)は増加していません。これは「患者さんがコロナウイルス感染を恐れて医療機関の受診を控えている」のかもしれません。英国ではパンデミック時には急性冠症候群患者さんの病院受診率が減少したことが報告されております(ランセット誌August 2020:396:381)。

日本大学病院ではコロナ感染症の防止対策は外来・入院診療ともに充分にとられているので、専門的な診療が必要な「患者生命に大きく影響する虚血性心疾患や心不全などが疑われる」患者さんのご紹介は従来と同様に行っていただけると幸いです。患者さんに対しても日本大学病院のコロナ感染予防対策は万全であるとお伝え下さい。

ところで「循環器疾患のなかで待てない治療」の代表例として急性冠症候群に対するPCI(経皮的冠動脈インターベンション)や急性心不全や慢性心不全の急性増悪の治療があげられます。急性冠症候群には、PCIが極めて有用です。心不全に対しても集学的な治療が患者さんの予後に大きく影響します。

コロナウイルス感染症が蔓延していた頃は個人防護具が不足し、「感染リスクの高いPCIの実施が困難になるのではないか。あるいは『経静脈的な血栓溶解剤治療』をしていた頃の治療に戻らざるを得ないのではないか」の懸念もありましたが、PCIは目立った制限なく施行されております。ただし、コロナ感染の有無を鑑別するためにPCIを行うまでに若干の時間を要する例はあります。

本稿を書いている段階では新たな感染者数は全国的には緩やかな減少傾向が続いているものの、この冬、新型コロナ感染症の大流行が予測されており、とくにインフルエンザの流行期と重なることで、重大な事態になることが危惧されており、11月以降の第2波・第3波への備えが重要なことに変わりはありません。今後しばらくはコロナ感染症の予防に最大限留意しながら、治療が待てない急性冠症候群や心不全以外の循環器疾患の治療も滞りなく行う医療体制を構築することが肝要であると思います。医療の世界でもブレーキとアクセルを使いこなすことから、徐々にアクセルを優位にしていくことになるでしょう。開業の先生方もコロナ渦で医療経営に相当の痛手を受けたと思います。今後はコロナ感染症と共存していく医療体制を構築していくべきと思います。

当科では循環器疾患が疑われる兆候(胸痛、背部痛、動悸、息切れ、浮腫など)を認め、診断がつかない症例も積極的にご紹介を承っております。治療抵抗性高血圧、家族性高コレステロール血症の治療、および全身の心血管疾患のスクリーニングも行っております。このような患者さんがいらしたら遠慮なくご紹介いただけると幸いです。患者さんの治療の方向性を見出し先生方のもとへお戻しし、必要に応じて定期的に経過観察をさせていただきます。


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